ショートショート 放課後ランプ
授業が終わった後の学校は真っ暗闇だ。僕みたいな陰気な人間にとっては。
帰りの会が終わると同時に鞄の中に教科書をしまう。目立たないようにするのが肝心だ。教室には恐ろしい生き物がうじゃうじゃしている。
シアイニムケテレンシューシヨーゼ。汗臭い野獣ども。カラオケバイトゲームナニスル。ピイピイうるさい鳥たち。ナヤミガアッタラショクインシツニオイデーナ。担任。一番厄介な妖怪。
鞄を抱えて席を立った。机と机の間を身を細めて抜ける。授業が終わった教室は無法地帯だ。安全な場所などない。
「浜田!」
声がした。本屋の息子の細井だ。漫画週刊誌をこっちに掲げた。
「新刊出たぞ。一緒に読もう!」
「あ、ああ。うん」
週刊誌がランプみたいに光って見える。吸い寄せられた。
「あ。それ俺まだ見てないやつ」
後ろからバスケ部の伊藤が覗き込んでくる。隣はバイト漬けの斎藤だ。
細井のランプの灯りにみんな集まる。笑ってる。なんだ。みんなおんなじ人間だ。
ショートショート No.707
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今週のお題は「放課後ランプ」です。
https://note.com/tarahakani/n/n6095d15c4e8d