ショートショート(と、朗読) イバラ姫の目覚まし時計【SAND BOX 1099】
「『イバラ姫のハリ』今ではあたりに知らないものはありません。」
鋭い痛みに、イバラ姫が目を覚ましました。ようやく百年の時が経った、いえ、頬に何かが刺さったのです。百年前、お城を守るために魔女が城に張り巡らせたイバラのトゲが、目覚まし時計のようにイバラ姫を刺したのでした。
お城のあちこちで喜びの声が上がりました。姫が目覚めたので、お城の呪いも解けたのです。止まっていた時間が動き始めて、王も王女も使用人たちも生きている頃の時間を取り戻しました。
門の外をのぞいてみると、百年間ですっかり変わっていました。豊かな畑はとうになく、荒れ果てた草原が広がっています。王様が力無く座り込みました。イバラ姫は自分が目覚めた時のことを思い出しました。
ちくり。イバラのトゲを王様の頬に軽く刺します。王様の頬がバラ色に染まり、みるみる力がみなぎりました。
『イバラ姫のハリ』今ではあたりに知らないものはありません。イバラのトゲの売上でイバラ姫は国を建て直しました。そう。これすなわち、トゲは金なり。
声のお仕事をされている(詩や小説も書いておられます)水上洋甫さんにお願いして、朗読をしていただこう、のシリーズ「SAND BOX 1099」です。
今月は悠紀さんにイラストをお願いしています。ちゃっかり可愛いお姫様です。悠紀さんは、ハンドメイド作品などを販売なさっている「丸大商店」や、岩手県大船渡を勝手にPRするYouTubeチャンネル「気仙あねっこのやんべにやっぺしチャンネル」の活動をなさっています。地元愛溢れる番組です。一ヶ月間、よろしくお願いいたします!
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