ショートショート(と、朗読) オバケレインコート 【SAND BOX 1099】
ー「もう脱いでも大丈夫だよ」ー
「アーメン」
日曜日の礼拝で、神父様が言いました。
「アーメン」
集まった村の人たちが両手を組んで唱えます。
「足元にお気をつけて。良い日曜日を」
神父様が手を振ります。ざあ。開いた教会の扉から雨の音が聞こえました。
「で、君は?」
村人たちがいなくなった教会で、神父様が言いました。ゆらり。部屋の隅で影が揺れました。
「見えてたんだ」
「見えていたよ」
レインコートを着た男の子が現れました。体の向こうが透けていました。
先月お葬式をした子供だ。神父様は思いました。雨の日に馬車に轢かれたのです。
「お祈り、よく平気だったね」
「平気。どうしてかはわかんないけど」
「コート、気に入ってるの?」
「そう。雨から守ってくれるんだ」
雨からか。神父様が苦笑いします。
「もう脱いでも大丈夫だよ」
雨音は止んでいました。窓からの暖かい光に男の子が溶けて消えていきます。笑っているように見えました。神父様が言いました。
「晴レルヤ」
SAND BOX 1099 No.042
声のお仕事をされている(詩や小説も書いておられます)水上洋甫さんにお願いして、朗読をしていただこう、のシリーズ「SAND BOX 1099」です。
今月のイラストはuchakoさんにお願いしております。Xやpixivでイラストを描いておられる方です。
今回のイラストは下からのアングル。
なんか、すごく爽やかですよね。
今回は水上さんの音声も効果が気合い入っております。ぜひお聞きください。
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全体をマガジンにまとめています。