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ショートショート 人生は洗濯の連続

 交通事故で両親を亡くした私を引き取ってくれたのは叔父だった。父の弟だ。高校は転校することになった。独り身の叔父の家は綺麗とは言い難かったが、気を使わずに済んだ。叔父は企業の研究所に勤めていた。

 小学生からやってきた野球は続けた。叔父がいいよと言ってくれた。叔父もそうしてきたからと。野球をしている間は気分が晴れた。

 ある朝、叔父が干した洗濯物を眺めているのを見た。目の先を追うと私のジャージがあった。泥のしみがしっかりと残っている。

「すいません。汚して」
 試合帰り、叔父に謝った。叔父が笑って私に言った。
「汚れる時は、汚したらいいよ」
 父に似た大きな手が私の頭を撫でる。
「じゃないと逃しちゃうだろ? 潜在一隅のチャンスをさ」
 叔父が私のユニホームを引っ張って洗濯機に放り込んだ。

『人生は洗濯の連続』
 数日後、新しいCMがTVに流れた。洗濯石鹸。叔父が開発したらしい。
「『洗剤』一隅のチャンス」
 叔父が私を見て微笑んだ。


ショートショート No.736

 たらはかにさんの毎週ショートショートnoteに参加しています。今週のお題は「人生は洗濯の連続」です。

 先週はお休みの小粋でポップなヒスイさんは、イベントにご参加なされるそうですよ!

 ご盛況、お祈りしております。(お菓子、食べて下さってありがとうね)