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エッセイ ある日青空の森の中くまさんに(杜埜 玖/KuU Morinoさんと青空文庫について)

 今週は「サンタクロースとねずみの王さま」に朗読や音楽をご提供いただいた方々の紹介記事を書こうと思っています。僭越ながら、キャスト紹介みたいな感じです。

 木曜日の「小さなねずみのはなし」をご朗読いただいた杜埜 玖/KuU Morinoさんは、朗読の活動をなさっている方です。noteにもいらっしゃいます。

 stand.fmではほぼ毎週、青空文庫などのライブ朗読配信をされておいでです。

 くぅさんの朗読配信で好きだったものと、その作品について、3つお話しますね。青空文庫とか文学作品とか難しそう、と思われる方もぜひふれていただきたいです。



1. 「顔」高村光太郎

 高村光太郎はちょっと怖そうです。顔が。髭が生えてます。自画像もゆらゆらしてるし。『道程』とか読んじゃうと頑固そうと思ってしまう。
 突然ですが、私は根が暗い人間です。本当に突然ですね。すぐうじうじするし、深刻になって悪いことばっかり考えちゃいます。
 こういう人間が文章を読んだり書いたりすると、脳内で再生される声は冷たく暗いものになります。
 「サンタクロースとねずみの王さま」の朗読をお願いしたときに強烈に感じたことは、くぅさんの方が解釈が明るいんです。わあああ。となるくらい。そうかあああ。って毎回なりました。(おかげで物語が暗い所に落ちずにすんだことに本当に感謝しています)
 解釈によって文章は本当に読み方が変わるんです。声の表現の面白いところだと思います。

 顔だけじゃなくて、声もごまかせないのかもしれません。
 くぅさんは、ライブの後でnoteに記事を書いていらっしゃいます。そこだけ読むと、すごく文章を真面目に書かれる方だということがわかります。

 この時は、マスクと顔について書いておられます。
 文章だけみると、絶対に私の方がちゃらんぽらんのかんからかんに見える自信がある。(くぅさんがちゃらんぽらんという意味では断じてありません。すごく真面目な方です。単純に明るさの問題なのです。)みなさん、ごまかされていると思います。ねこのひとの中身はじめじめの真っ暗闇です。言葉は、いくらでもごまかせるんですよ(にやり)。


2. 「きのこ会議」夢野久作

 「ドグラマグラ」で有名な夢野久作。なんだかへんてこ(そして不思議と面白い)掌編も書いています。確か私はアンソロジーで掌編を先に読んで、作者から辿って「ドグラマグラ」をみつけて、ひえええ、となった記憶があります。
 『夢野久作』(夢ばかり見る夢想家)の筆名のとおり、童話調とはいえ一筋縄ではいかないナンセンスさがあります。やっぱりちょっとひえええ、となる。
 ともするとちょっと怖くなってしまうナンセンス童話も、くぅさんの声で聞くと一段階明るくなります。何が起こるかわからない恐ろしい森にも入っていける。
「なるほど、毒きのこはえらいものだ」ときのこがみんなで思うところが好きです。

え? くぅさんしいたけダメなんですか?(大好き)



3. 「ア、秋」太宰治

 いわゆる『文豪』という作家の作品に最初に触れたのは中学生くらいの頃だと思います。芥川龍之介の「羅生門」あたりから始まって、「鼻」、志賀直哉の「小僧の神様」、坂口安吾の「桜の森の満開の下」。川端康成の「伊豆の踊り子」あたりで『あれ?』と思って、夏目漱石あたりに来て、思うのです。
 みんなおじさんだな。
 って。
 大人すぎる。(中学生時代の感想)
 芸妓とか言われても。胃痛とかしないし。(あくまで中学生時代の感想)
 その後、いわゆる名作ではなく、エッセイやもっと軽いものも読んで、好きになったり、嫌いになったり、普通の作家さんみたいな扱いになっていったりしました。それでも「なんだかはるかに大人」というイメージがついて、今になってもとれないでいます。

 けれど、昔の、特に作家の方は短命な方が多くて、太宰治は38歳で亡くなっています。もはや年下です。恐ろしい。

 太宰治は軽いものを書くとちょっとひょうきんなところがあり、もともと結構好きなのですが、この朗読を聞くと、可愛らしさが出ていて、いいなと思います。大人の女性が、太宰治のかわいらしさを見ている感じ、かな。


 私自身、くぅさんの毎週日曜日の配信をとても楽しみにしています。
 自分の知らない話や、解釈を聞ける、素敵な時間です。(青空文庫にのるような昔のものでも、「難しい」というイメージさえ乗り越えられれば、面白いものがたくさんあるんですよ)
 お正月のちょっとした空き時間に、興味を持たれた方は聞いてみていただけたらと思います。

 最後にくぅさん、今年一年仲良くしていただきありがとうございました。年末の忙しい時期に朗読をくださってどうもありがとうございます。
 どうぞ良いお年をお迎えください。

エッセイ No.020