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ショートショート 南の島の偉大な大王

南の島の偉大な大王様がハンモックに揺られながら「あ」と呟きました。
北の国の王様が、今日200歳の誕生日なのです。

レイを作ってあげよう。

大王様は思いました。雪のように真っ白な、花でできた、立派なピカケ・レイ。

花がたくさんいるな。ハンモックにゆられながら、お腹もゆらゆらゆれました。純白のジャスミンがたくさん。きっといい香りがするだろう。思わず、鼻歌が漏れました。

ピカケ・レイを作ろう
真っ白なピカケ・レイ
雪みたいで 雪じゃない
両手いっぱい 山盛りのジャスミン

南の国の風は、全て大王様の歌でできています。
調子っ外れの風が、広く遠く、海に流れて行きました。赤道を超えて遠くへ、大陸に着いて、もっと、もっと遠くへ。

ピカケ・レイを作ろう
真っ白なピカケ・レイ
雪みたいで 雪じゃない
両手いっぱい 山盛りのジャスミン

極東の国の、岩燕が目を覚ました。音痴だけど、そこぬけに明るい歌でした。
なんだか嬉しくなって、飛び上がりました。それから、ジャスミンの花園へ。たくさんの真っ黒な岩燕が、真っ白いジャスミンの花畑に集まりました。
200羽の岩燕が、みな嘴に1輪ずつ、ジャスミンの花を加えます。
塊になって、太平洋を渡りました。
もう夜でしたが、道はすぐにわかりました。
夜空の星の全てが、偉大な大王様の夢なのです。
岩燕たちの頭上に、星でできた真っ白な光の帯が、真っ直ぐ、真っ直ぐ、南の島への道を指し示していました。

岩燕が島に着くと、偉大な大王様はハンモックで寝ていました。一羽がお腹をつつくと、ぼよんとゆれました。起きる気配はありません。

仕方がないので、燕たちがレイを作りました。働きもので、器用でしたから、あっという間に立派なレイができました。岩燕たちは自分たちの仕事に満足して、大王様のお腹にレイをかけてやりました。一羽がもう一度お腹をつついてみます。やっぱりぼよんと揺れました。大王様が目をさまさないうちに、星を頼りに自分の巣に帰っていきました。

「呼ばれたはずなんだけど。」

北の国の王様が、ハンモックの横で呟きました。

「寝てるじゃん、この人。」

鹿の角でできた杖で大王様のお腹をつつくと、「はっ」と小さな声を出して、大王様が飛び起きました。お腹をつつかれて、むちゃくちゃ心外そうな顔をしています。しかも、つつかれたの1回や2回じゃない気がする。大事な、大事なお腹をさすると、お腹の上に真っ白なレイがありました。

「ピカケ・レイだ!」

偉大な大王様は嬉しそうにレイを持ってながめました。それからいそいそとハンモックからおりて、ピカケ・レイを友達の首にかけてあげました。

「贈りものだよ。今日の日のためのレイだ。」

ジャスミンのいい香りが広がりました。

「花だからしおれちゃうけど、気に入ったら、また作るよ。何しろ、風はずっと吹いてるし、星はこぼれるほどあるんだから。」

何言ってるんだろう、この人。
北の国の王様は苦笑いをしました。
大王様はにこにこ笑い、嬉しくて歌いながら踊りました。風がそよいで、星がきらきら瞬きます。お腹もぽよぽよ揺れました。

パウ・ハナ
アロハ・オエ
ア・フイ・ホウ

ちゃんとレイができたので、今夜の話は、これでおしまい。

ショートショートNo.93

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