ショートショート 痛いの痛いの飛んで行け!
中間テストが帰ってきて、眺める。母親のがっかりする顔が目に浮かぶ。中の上。正直、上に食い込む自信なんてない。なまじ中学のとき頭が良かったばっかりに負けた感が強い。胃の中の蛙でした、僕。世界の広さを知りませんでした。
隣の席で友達が鼻歌歌いながら何か折り曲げていた。声をかける。
「テスト、どうだった?」
「ん? まあまあ?」
平気な顔をしている。そうか。
「僕ダメだった。上位とか無理だ。」
つい本音がでた。
「ふーん?」
友人が席を立った。気を悪くしたんだろうか。右手に折っていたものを持っている。大きな紙飛行機だった。真っ直ぐ窓に向かっていく。外に向かって叫んだ。
「俺はぶっちぎりの赤点だー!」
ふりかぶった。半泣きになって言う。
「痛いの痛いの、飛んでっけえええ!!」
グランドに向かって思い切り飛ばした。
「まじかよ!」
あわてて友人のところまで走る。もう遅い。
「おい! 取りに行くぞ!」
教室を飛び出す。廊下を走って、階段を転げ降りる。踊り場でくるりと身を翻す。友人が鼻すすりながら後をついてくる。変なやつ。
窓の外を見る。紙飛行機が飛んでいく。
僕の小さな悩みも、一緒に飛んでいった。
Novelber No.3「かぼちゃ」 | Novelber No.5「秋灯」
140字小説版