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ショートショート(と、朗読) 隔週警察【SAND BOX 1099】

ーー僕は学生なのだ。怪盗専門学校の。ーー

「交番がない」 
 駅前で思わず声が出た。昨日まであった交番が消えていた。
 盗まれたのかもしれない。警察に届けなくては、と思って苦笑いをした。ないのはその警察だ。

『隔週警察』
 通学電車の中で記事を見た。スマートフォンのニュースアプリだ。人手不足で交番が移動式になったらしい。一週間ごとの交代制だ。
「やりたい放題じゃん」
 つい呟いて慌てて口を押さえる。僕は学生なのだ。怪盗専門学校の。

 駅の改札で立ち止まった。電車から大人がふたり、ついてきている。普通の格好をしてるけど、多分警察官だ。昨日習った。覆面警察ってやつ。
「何か僕にご用ですか?」
 振り返って話しかけた。僕に非はない。何も盗んでいないからだ。今のところはだけど。ふたりはもごもご口篭って、頭を下げて踵を返す。
「いい気味だ。一昨日きやがれ」
 小さな声で言うと、ひとりが振り返って苦笑いした。
「すまんね。一昨日は別の地区の管轄なんだ」


SAND BOX 1099 No.046

 声のお仕事をされている(詩や小説も書いておられます)水上洋甫さんにお願いして、朗読をしていただこう、のシリーズ「SAND BOX 1099」です。

 今回のイラストはつかださんにお願いいたしました。

 名古屋コミティア、お疲れさまでした。

 元の記事はこちら。

 前回のSANDBOX はこちらです。

 全体をマガジンにまとめています。