東京 🛫 Berlin フィクションの中にさりげないノンフィクションを。

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深夜JST-7、懐旧の情

思わず線を引いてしまいたくなるような一行を含む小説を買ったのに。迷わずハンドミキサーを買ってしまうほど大切な人に作ってあげたくなるスイーツのレシピを見つけたのに。まるでMVの主人公になったかのように信号を待ち、川沿いを歩ける曲に出逢ったのに。お金がなくて毎日バナナで凌いだ日々もとっくに越えて、水道を止められてトイレで冷や汗をかく生活もしていないのに。 きっともっと大切な部分が欠如、 いや、 我儘だから寂しい。 吉祥寺に向かう中央線の窓に反射する自分越しに通り過ぎる赤く

    • 「目が覚めたら昼」など日常茶飯事

       寝室の窓から聞こえるトイレの流水音。揺れるカーテンの隙間から一室の電気が消えるのが見える。 「ああ、あそこは洗面所か。」  六月末の朝六時、19度。やや冷たい風に半袖。布団とイチャイチャするには丁度いい。自分とは違う体温と足を絡ませた暑さで、思わず足の先が布団から覗くような、そんな気温。生憎、寝返った先にいるのは、絡めるに至る長さの足と体温を持たない、IKEAのタグを身につけた犬。挙げ句の果てには、その彼にさえそっぽを向かれている。腕の中に引き寄せ戻した後、布団を口元ま