先進国の株価に出遅れる今年の新興国株とキャッチアップ・ラリーの可能性

マネックス証券 岡元兵八郎

先週末の全国投資セミナーで、お客様から新興国株ETFについてご質問を頂いたのですが、お答えすることができなかったのでこの場でお答えしたいと思います。

キャプチャ3

先進国の株価に出遅れる今年の新興国株

先進国の株価指数であるMSCIワールド指数(以下全て米ドル建て)は年初から9.4%上昇しています。一方、新興国株指数を代表するMSCIエマージング・マーケット指数は年初から3.0%の上げで、先進国株価指数を6.4%下回っています。エマージング・マーケットの国の配分を見てみますと、上位5か国では中国35%、台湾13% 、韓国13%、インド10% 、ブラジル5%となっています。これらの5か国の中で最も上がっているのは台湾で年初から11%(以下全て国のパフォーマンスはMSCI国別指数)上昇しています。コロナ感染者数が激増し大変なことになっているインドの株価指数は実は9.54%上昇、ドル建てでは−0.18%の日本株(MSCIジャパン指数)以上に上がっているのです。
では、上位5か国でどの国が足を引っ張っているかというと中国は−2.4%、韓国、ブラジルがそれぞれ-0.6%、 -1.1% といったことろです。国の配分の大きなところが下がっている為、指数全体にマイナスの影響を与えています。
一方、先進国株価指数を見てみますと、年初から9.7%上昇している米国株の配分が64%を占めており、その恩恵をうけています。

それぞれの業績はどうかと言いますと、今年2021年の先進国のEPSは33.6%の伸びに対し、新興国は50.7%の伸びと見られています。2022年についてはそれぞれ10.8%、11.4%の増益予想です。
一方、PEレシオをみますと、今年の先進国は約20倍、新興国が14倍ですが、来年になると先進国は約18倍に対し、新興国は約13倍まで下がってくる見通しです。

新興国株の上昇はポスト・ワクチン経済とテクノロジー株の回復次第
コロナワクチンの配布が遅れている新興国ですが、先進国でのワクチン接種が進むと次は新興国となるでしょうから、経済の回復も先進国の回復のパターンをみていれば次に新興国の経済がどうなるか、ある程度の判断をすることはできるでしょう。これは時間の問題と言えるのではないでしょうか。
また、ナスダック市場をみていると分かるようにテクノロジーセクターのパフォーマンスが芳しくありません。実はこれは新興国でも同じような状況なのです。MSCIの先進国指数に占めるテクノロジーセクターの割合は約2割なのですが、新興国でもほぼ同じく2割を占めており、先進国のテクノロジーセクター銘柄の下げは、新興国の株式市場にも同じような影響を与えているのです。因みに新興国の35%を占める中国では、テクノロジーセクターが3割を占めており、テクノロジーセクターの株の弱さが株価指数を押し下げているのです。サムソンに代表される韓国でも同じような状況です。
新興国の経済回復は先進国の後、売られ過ぎたテクノロジーセクターの回復がカギになると見込まれますが、それらは時間の問題ではないでしょうか。
出遅れている新興国株のETFに今投資し、先進国のキャッチ・アップラリーを今から待ち伏せするのも悪くないかも知れません。

(参考新興国株ETF)
◎ iシェアーズMSCIエマージング・マーケットETF(EEM)(連動指数はMSCI TRエマージング・マーケッツ・インデックス)  
◎ バンガードFTSEエマージング・マーケッツETF (VWO) (連動指数はFTSEエマージング・マーケッツ・インデックス)

いいなと思ったら応援しよう!