DeepSeekショックと関税リスク:試される米国市場の耐久力

by マネックス証券 ハッチ

DeepSeekショック:エヌビディア急落の影響
今週の市場はまさにジェットコースターのような動きでした。DeepSeekショック(https://media.monex.co.jp/articles/-/26274)でエヌビディア(NVDA)が急落し、AI関連株が激しく売られました。このパニック売りは、「強気派の覚悟」を試すまたとない機会となったと思います。金曜日には、事前にわかっていたともののマーケットは関税リスクにフォーカスし、金曜日の午後にかけて投資家が一斉に売りに走りました。先週は全体として市場は下落したものの、S&P500はわずか1%の下落で終えました。ナスダック100は1.36%の下げとなっています。
先週のマーケットの主人公であったエヌビディアは先週火曜日のざら場中の安値まで18.5%まで下落しましたが、最終的には15.8%の下げで1週間を終えています。
 
エヌビディアとAI市場の未来:本当に終わりの始まりか?
「AIブームが崩壊し、おそらくS&P500で最も重要な株であるエヌビディアが大打撃を受け、さらに関税まで追加される」といった報道がある中、米国株はもっと大幅な下落をしても全く不思議ではありませんでした。1%の下落で済んだのは、米国株式市場の検討ぶりを考えると、依然としてかなりの耐久力を持っているのだと思います。
DeepSeekについては、AIモデルの開発を大幅に削減したとされています。しかし、米国政府による中国に対する半導体輸入規制がある中、同社が第3国経由でエヌビディアのGPUを大量に輸入、実際の開発にかかったR&Dのコストは発表されている以上に莫大ではないかと言う見方もあります。市場にはDeepSeekは急速に進化する生成AI業界の一部であり、大きな方向転換ではないと言う見方もあり、今後の展開を確認し判断する必要がありそうです。
 
決算シーズンの明暗:アップル、メタ、テスラの業績が示すもの
先週のマーケットでは、エヌビディアや関税だけが市場の話題だったわけではありません。
現在米国では2024年第4四半期の決算発表中で、先週はアップル(AAPL)とメタプラットフォームズ(META)の好決算が市場を支えたのです。
市場全体が下落する中で、アップル(AAPL)は先週5.93%上昇、メタは6.44%上がり、市場のさらなる下げを防いだのです。
また、テスラについては、市場予想を下回る決算発表を行い引け後株価は下落したものの、その後イーロンマスクCEOのコンファレンスコールで、同社のAI戦略にこれまでで最も強気な発言を行い株価は翌日上がったのです。
これまでのところ、S&P500社のうち179社が決算発表を終えており、現時点では前年比で10%の増益となっています。これは事前予想の7.3%を大きく上回るものです。
 
FRBの動きと市場の反応:パウエル議長の発言の影響
もう一つ特筆すべきは、FRBのジェローム・パウエル議長が先週ほとんど話題にならなかったことでしょうか。
先週のFOMCでは、FRBは市場の予想通り政策金利を据え置きました。これはウォール街の予想通りで、ほとんどの投資家にとって懸念材料とはなりませんでした。ただ、唯一不満を持っていたのは利下げを求めているトランプ大統領でしょうか。
一つ注目に値するのは、FRBの声明で「インフレが目標に向かって進んでいる」という表現が削除されたことです。
代わりに、「インフレは依然として高水準』と記され、この変更が一時的に市場を混乱させたものの、パウエル議長が「それは利上げの示唆ではない」と説明、最終的に市場は落ち着きを取り戻したのです。
 
1月相場の教訓:市場の強さと今後への影響
米国株では、1月がどう動くかで、その年全体の相場が決まると言われています。1953年から2024年までのデータでは、1月にS&P500が下落した年は、その年の残りの期間の上昇率(中央値)は3.5%にとどまり、年間を通じてプラスになる確率は60%。一方、1月に上昇した年は、残りの期間の上昇率はその約4倍の13.5%となり、年間を通じてプラスとなる確率も86%と上がります。
2月は歴史的に見て必ずしも強い月ではありませんが、少なくとも今年1月は2.7%上昇とプラス圏で終えており、年末に向けて上昇の確率が高まったことは米国株投資家にとって良いことであるのは間違いありません。

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