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ウクライナ侵略の停戦に向けて
トランプ米大統領は、24日にホワイトハウスでフランスのマクロン大統領と会談しました。
その中で、ロシアによるウクライナ侵略の停戦後は、フランスや英国など欧州の国がウクライナに平和維持軍を駐留させる方針を示しました。
地理的にロシアは、米国よりも欧州に近いですから、欧州自身で防衛力を強化させ、米国は依存を減らしたい思いがあるのだと思われますね。
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ドイツのキール世界経済研究所によれば、ウクライナに対する軍事・経済支援については、累計2,670億ユーロで、その5割を欧州が、4割を米国が占めたとされます。
マクロン仏大統領は、トランプ米大統領がロシアへの融和を隠さない姿勢を見せていたことから、ウクライナの停戦に向けて、ロシア側に有利な形で停戦交渉がなされることを懸念してのものだったと考えられます。
今回のマクロン大統領の訪米で少しでもウクライナにとって良い形で停戦が進められるのであれば、まずは良かったなと思います。
他方、同日に開かれていた国連総会では、米国はウクライナや欧州が提案した決議案に反対票を投じており、米国と欧州の亀裂が起きています。
国連総会の中では、21日に米国がロシアへの非難を控えた形で独自の決議案を欧州側に通告していました。
対して不意打ちを食らった形の欧州は反発し、24日に欧州側の案を提示しました。
それにより、米国と欧州の決議案のそれぞれが採決にかけられる、という異例の展開になったようです。
国連総会では、欧州が主導した決議が賛成多数で採択されました。
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ただし、国連の安全保障理事会では、ロシアに比較的有利な内容で米国が提案した決議が、採択されました。
これは、安全保障理事会が常任理事国5か国と、非常任理事国10か国で定められるものだからです。
いわゆる大国による賛成が安全保障の方向性を決めてしまう懸念、というのが実現してしまった形です。
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安全保障理事会の決議が米ロ主導で採択されてしまった意味は大きいとみられ、今後のウクライナ停戦に向けた欧米の足並みの揃わない点が大きな課題になってくるものと思われます。
こうした、そもそも指摘されていた制度間の課題が、こうした形で表面化されてしまうのは残念ですね。
大国にとって有利な結論ではなく、戦争に巻き込まれた側の被害者たちにとって、まずは安心できる停戦交渉が進められることを祈念しています。