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かし子さんの『クリムゾンエコー』読んだぞ
noteでBLお仲間のかし子ちゃんの『クリムゾンエコー』を読ませてもらった。
微妙にネタバレしているから、未読でこれから読もうと思っている人はいったんお帰りいただき、読んでから遊びにきてね。
あらすじ
かつて天才と称えられた画家・鴻上恭介は、30代を迎えスランプに陥っていた。描きたい衝動を失った彼の元に深純稀世という少年が現れ、弟子にしてくれと言い出す。 彼は恭介の元恋人である女性、初美灯子の甥だった。 絵画への情熱を取り戻したいと願う恭介と、恭介の赤い絵に心を奪われた稀世。二人は奇妙な師弟関係を築きながらも、互いに影響を与え合っていた。 一方で過去に囚われたままの灯子が再び恭介に接触し、その行動は穏やかなアトリエを不穏な舞台へと変貌させるのだった。 赤が象徴するものは情熱か、それとも狂気か。
作者さんのタグ付けは、♯BL,完結
(かし子ちゃん、さすがだわ。タグも潔いね!)
ストーリーの着目点としては、もちろん、30代を迎えた天才画家・鴻上恭介氏と、今春訳あって経済学部の大学生になった中性的美貌を持った青年・深純稀世くんの結末。なにせBLですからね。
30代と18歳(もしくは19歳かちょい上)の恋愛って普通に想像しても相当難しい。
ましてや芸術家の恋愛、男同士なんてねじける予感しかしない……
しかも恋敵が稀世くんの叔母で、恭介氏の元恋人灯子さん。
かし子さんの他作品にも共通することなんですけれど、感情が拗れる背景設定を用意するのが上手ですよね。恋敵が美貌の叔母とかどんな地獄……
こういう必然性がある設定いいですよね。感情の動きに説得力が出て。
BL書きや恋愛小説書きのみんな、もちろん性癖を丸出しにした意味のない設定もいいぞ。それも刺さればグッとくるぞ。
しかし、これ、どう考えてもバッドエンドの予感しかしない。
しかも「不穏」の二つ名を冠するかし子ちゃんだぞ……と。大団円じゃないと発狂する病に罹っている私は戦々恐々としながら読み進みました。
って思ったら、やはり終盤恭介氏が我々大人の心の叫びを体現するようなセリフを吐く訳ですよ。
「大人っていうのは、子どもから好きだと言われてもそう簡単に答えを出すわけにはいかないんだ」
そうなんだよね。
さあ、それで恭介氏はどうしたと思う?
表向きは納得の落としどころなんだけど、実はさらに救いが用意されており……いや、見ようによっては怖いかな?
皆、その目で確かめるんだ。
恭介氏よりもさらに大人の私には救いに見えるかな。
けっこう重い題材を扱っているけれど、かし子ちゃんの文体が整然としているのと、モノローグの量が多すぎないのでさらっとした読み口で読ませていただけて、読了感も良いと思います。
どろっとした世界観をさらっと書く方って、居そうで案外居ないと思うんだ。個人的にはそのギャップも心地よかったです。
下卑な感想言うと、私なら(性別に関わらず)才能と美貌を持つ年下から好意を寄せられたら、後先考えずとりあいずいただきますよね。そしてめちゃくちゃ甘やかして可愛がる。何をしても許す。もはや恋愛なんてする気はなくて、いっときの思い出になれればそれで十分。逆に手玉に取られてもそれもいい。喜んで転がるわー
それに比べて恭介氏は純粋で人間的にも魅力的だなと思いました。
やっぱり芸術家だからかな。
作者さんの詳しい解説がこのページでも読めるみたいだぞ。
私は本編読ませてもらってから読もうと思っていたので、これから行ってくる。