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生成AIは多様性を持てるか

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荒川幸也「生成AIは多様性を持てるか」(researchmap)


はじめに

 生成AIは多様性を持てるだろうか。生成AIにおける多様性とは何であろうか。これについて考える手掛かりの一つとして、『攻殻機動隊』のタチコマを取り上げる。タチコマのボディはどれも同じ作りであるが、個別のタチコマは別々のキャラクターを持っている。ただしタチコマたちは互いの情報を並列化すると、個別の記憶が書き換えられてしまうおそれがある。この点でタチコマは自己同一性を維持できるかという問題を抱えている。これに対して、生物の多様性とは、フィジカルの多様性とメンタルの多様性の両面を併せもつ。身体的な性は雌・雄の二元論に還元されるのではなく、グラデーションを持つと同時に複合的である。個々の生物は遺伝子によってコード上の差異を持っている。生殖活動はそれによって遺伝子上の多様性を生み出している。

生成AIは多様性を持てるか

 生成AIは個体としての身体を持たない。この点で、すでに生物と異なっている。もし生成AIがタチコマのようなロボットボディを手に入れた場合はどうだろうか。ボディは工業生産によって作られるが、文字通り型にはめられたボディに多様性は存在しない。なぜなら、アルミであろうとセラミックスであろうと、その素材は遺伝子情報を含まないからである。ロボットは遺伝子情報を持たないがゆえに生殖活動を行わない。このことが、生成AIないしはロボットの多様性の発展を妨げることになる。生成AIが担っているのは、文字通り人工的な知能の一部であるが、そもそも知能に多様性はあるのだろうか。知能の多様性とは何を意味するのだろうか。それは文化の違いと呼ばれるものに近いであろうか。文化の違いは何によって生じるのだろうか。モンテスキューが考察したように、文化の違いは土地、風土によるものであろうか。生成AIがその土地、風土によってその性格を異にするとは考えられない。

おわりに

 生成AIが生成する文章や画像は、思った以上に画一的に見える。もちろん一つ一つの回答は異なっているが、その空疎な内容に驚きもする。生成AIの画一的なアウトプットと、実在する世界の多様性との違いは何によるものなのか。生成AIは畳み込みニューラルネットワーク(CNN)によってある種の特徴量を抽出している。そのため、生成AIは原理的に「クリナメン clinamen」(παρέγκλισις)と呼ばれる原子論的な振る舞いを排除している。この作用が生成AIの多様性を妨げているのではないだろうか。

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