Dare Feature Issue pt.2|MAアングラ特集(後編)
MAアングラ特集の後編は、マサチューセッツ州内でも更に"コア"な音楽性を追求するアーティストたちをピックアップしてみた。
前編はこちら↓
特筆すべきは、ドミニカンやコロンビアンといった、ラテン系アメリカ人のコミュニティ、そしてボストン市街から北に離れた郊外の街、Lynn(リン)。
この二つは、数年前から現在に至るまでの現行MAシーンに着目する上で重要なキーワードだと考える。
彼らは、NY・Hip Hopの模倣的なスタイルに囚われず、各々が自己完結型のスキルセットを持ち、共同体と共に独自の音楽性を見出してきた。
そして、ブーンバップ・シーンの変遷を辿る、2010年代後半から、活発なリリースとメディアやビジュアルでの露出を増やし、徐々に注目を集めるようになる。
"マーダー・マス"で怪しく蠢く、ネクスト・グライミーの求道者たちに刮目したい。
Estee Nack
Artist Name: Estee Nack
Base: Lynn, MA
Estee Nack(本名:Alex Rosario)は、ドミニカ共和国出身でリンを拠点に活動するMC・プロデューサー。
Nackは、Supa Nackman、Nack Mandela、Nacki Chan、Naxi Priest、Nack Daddy、Nackaroni、Nack Sparrow、ELDARIROSE、Mr.Rose(プロデューサー・エンジニア名義の別人格)他、多数の別名義が存在する。
ドミニカンであるNackは、幼少期からアメリカン・カルチャーに憧れを抱き、その一部であるHip Hopに傾倒していった。
二つのカルチャーがミックスされた、彼の野性味溢れるマシンガン・スピットは、一度聴けば耳から離れない。
Nackは、ここ数年でシーンに躍り出た、新参者でないことはご存知のリスナーも多いだろう。
古くは、Purposeを中心に、2000年代初期に結成された、「Tragic Allies」というクルーでの活動経歴を持つ。
Tragic Alliesは、2005年頃からミックステープを中心にリリースを行い、精力的に活動していた。
現存メンバーは、Nackの他、Code Nine、Paranom、Purpose。
筆者は十数年程前に、Wu-Tang Clanの分派勢力にハマっていた時期にTragic Alliesを聴き、音楽性も似ていたので"Wu一派"だと思っていた気がする。
Wu本隊とも密接な繋がりを持つ、4th Disciple、Bronze Nazareth、Killah Priest等とも共演していたが、Wuと繋がった頃には、Hip Hopのサウンドの主流が南部に移り変わり、ブーンバップ自体が下火だったそう。
2010年頃から彼は、Clarence 13Xが創始者である、ネイション・オブ・イスラームの分派組織、「ファイヴ・パーセンターズ(Five-Percent Nation)」の思想に共鳴し、自らも「ファイヴ・パーセンター」を名乗るようになる。
Wu-TangやRakim、Lord Jamarを始め、近年も数多のHip Hopアーティストが信奉し、"黒人こそが至高の存在=神である"とするこの思想は、Nack自身のライムにも絶大なる影響を及ぼした。
2013年、NY・クイーンズ出身のQBレジェンド、Tragedy KhadafiとTragic Alliesで「7 G.E.M.S.」というユニットを組み、「Golden Era Music Sciences」という、ユニット名からしてファイヴ・パーセンターズなクラシック・ジョイントもリリースしている。
また、現在の彼の変調なラップスタイルへの影響力で言えば、若きカリスマ、"Al.Divino"との関係性も切り離すことができないだろう。
Nackは、2010年頃からDivinoと行動を共にし、この稀代のMCの存在に触発され、ラップにおける技法を確立していく。
Al.Divinoが全曲フルプロデュースした「Triple Black Diamonds」を皮切りに、両者はコラボ作品を量産し、アングラ界隈の中でも、更に"コア"なファン層の耳を虜にしてきた。
以下、Estee Nack x Al.Divinoのコラボ作品を記載する。(現在はいずれも入手困難で、市場でも高値が付いている)
この時期に出した作品群は、独創性に富み、軸となるジャズサンプルをアシッドに浸して凝固させた様な、カオティックで呪術的な世界観を生み出した。
各作品に起用された外部のプロデューサー陣も、彼らの流儀に逸脱することなく見事に一体感を示している。
その他にも、多数のMCやプロデューサーたちとのコラボレーション、Nackがミニマンションの"住人たち(Estee Nack&Friends)"とプレゼンツする、「#MiniMansionDust」シリーズ、Mr.Roseとのセルフコラボ名義等々(多作すぎるので割愛)。
また、「GRISELDA」のWestside GunnもNackの才能に惚れ、「Hitler Wears Hermes 7」(2019)の楽曲、「Banana Yacht」で曲中の尺の殆どを彼に預けた。
Nackのキャリアは、長期的な潜伏期間を以って、リンに独自のコミュニティ基盤を築き上げ、各地の同じ匂いのアーティストたちとも有機的に結合し、現在も脈々とその功績を刻み続けている。
◆Estee Nack Instagram
◆Estee Nack Twitter
◆Estee Nack Soundcloud
◆Estee Nack Bandcamp
Al.Divino
Artist Name: Al.Divino
Base: Lawrence/Lynn,MA
Al.Divino(本名:Alec Pompeo)は、セーラム出身の27歳のMC・プロデューサー(表記が、cvv.vinoの場合もある)。
スペイン語で "al divino "は、「神の」や「神のために」といった意味合いを持つらしい。
Divinoの活動初期は、Apollo Knoxと名乗り、写真の当時はまだ弱冠17歳だった。
彼は、リンのローカル・シーンにおいて、重要なプロモーター/活動家である、「Wreck Shop Movement」のJustice Bornによって才能を見出され、ラジオインタビューや様々なイベント、サイファーの出演を通じて、大人たち顔負けのスキルを披露する。
若くして、自身の音楽に対する確固たる信念を持っていたDivino少年は、常に自分のスタイルを改革していくことを掲げ、貪欲なアーティスト精神を滾らせてきた。
Divinoは、Jay ElectronicaやTha God Fahim、Mach-Hommy、KA等の様に、一部の熱狂的信者からカルト的な人気を博し、自身のMP3音源に数百$の値段を付けて販売する。
Divinoの音楽性は明らかに異端であり、その奇抜なスピットスタイルは、ラップなのか、ポエトリーリーディングなのか、はたまた神懸り的な啓示であるか・・・(最近のはまた凄い世界に向かってるが)。
どの尺度を以って彼を評価するかにもよるが、暗号の様に難解なリリックやピーキーなビートセンス、抽象的でサイケデリックなアートワーク、あらゆる点で、この世代のアングラ界隈の偶像的な存在となっていく。
Al.Divinoとしての活動が本格化したのが、2015年頃。この年に新たなキャリアの狼煙を上げるべく、「Green Light EP」をリリース。
Tragic AlliesのParanomのEP、「777」では、楽曲プロデュースと客演でも参加。
翌年には、ニューヨーク州ヘンプステッド出身のMC、Hus KingPinとSmooVthが中心となるムーヴメント「The Winners」にもスカウトされ、Husの作品、「HNIC : Hempstead Niggas in Charge」(2016)や「Cocaine Beach」(2017)にも参加。
その後、ニューヨーク滞在の最中に、当時、アンダーグラウンド・シーンの革命児だった、アトランタ出身のTha God Fahimやニュージャージー出身のMach-Hommyとの邂逅があり、Dumpクルーともリンクする。
Divinoは、Fahimの「Dreams of Medina 2」(2017)、「Adamantium Dojo」(2017) 、「Tha Ides of Summer」(2017)、「Dump Goat」(2017)、に客演やプロデュースで参加した。
また、彼は同時期に自身名義の「Divino Edition」 1・2をリリースする。
フィラデルフィアの天才的プロデューサー、SadhuGold、Fly Anakinの記事でも紹介した、「Mutant Academy」のGraymatterやewonee、Ohbliv等を起用し、完全異質なニュータイプ・スタンダードを提唱した。
しかし、本来「Dump Gawd」の冠が付いていたはずのこの2作は、Fahimらの許諾を得ること無く使用されたため、正式なタイトルからは削除されたらしい。
そして、Divinoは短期間でDumpの元も去り、古巣であるマサチューセッツのEstee Nackらとの活動に注力していく。
Nack同様、作品数が膨大すぎるため、その全てをここで紹介するのは差し控えたいと思う。
もし、彼の作品に触れたことが無ければ、直近1~2年でリリースされた、御大DJ MuggsとのコラボEP、「Kilogram」、Grubby Pawzとの「CCXXXVII」、Big Ghost LTDとの「Two Nights In Marrakesh」辺りからおすすめしたい。
◆Al.Divino Instagram
◆Al.Divino Soundcloud
◆Al.Divino Bandcamp
The Mellos
Artist Name:The Mellos
Base: Lynn, MA
The Mellosは、リンを拠点とする、SwaemelloとSmelloの双子のMC・プロデューサーチーム。
Estee Nack、Tragic Allies周辺のコミュニティの代名詞、「23 INCREDIBLE (ALLIES) INDUSTRIES」に所属し、Nackがウエスト・リンの自宅に構える「The Mini Mansion」を根城に活動する。
Nackの「#MiniMansionDust」シリーズのVol.3への参加や、自分たちの作品にも、NackやAl.Divino、Paranom、そして、23 INCREDIBLE INDUSTRIESのメンバーが参加している。
The Mellosは、Wu・アンダーグラウンドを彷彿させる様な、(あえて狙った)チープで無骨なドラムと、不穏で怪しげなサンプルをトッピングした、ラギットなサウンドが特徴的だ。
余談になるが、彼らもファイヴ・パーセンターズであることを表明している。(23II周辺はかなり感化されていると予想)
◆The Mellos Instagram
◆The Mellos Bandcamp
???
Artist Name:???(The Hidden Character)
Base: Lynn, MA
彼の名は、???(The Hidden Character)。リンに犇めく強烈な生態系の中でも、一際危険なオーラを放つ覆面アーティスト。
表では、常にバラクラバで顔を覆い隠し、テ〇リストさながらの"サグい"風貌。正に(?)隠れキャラ。
23 INCREDIBLE INDUSTRIESのメンバーでもあり、Estee NackやAl.Divino、The Mellos、Starker等とコラボ作品の制作や客演を行っている。
そのキャラ立ちのインパクトばかりに目がいくが、曲中や曲毎で多彩にフロウに変化を付け、装填される口マシンガンは、決して気を衒うだけの飛び道具では無い。
イタリアのインディペンデント・レーベル、「Frank's Vinyl Records」から、複数の作品をリリースしているので一聴してみて欲しい。彼がただの色物MCでは無いことを証明してくれる。
◆??? Instagram
◆??? Twitter
◆??? Bandcamp
Vinyl Villain
Artist Name:Vinyl Villain
Base: Boston, MA
Vinyl Villainは、レディング出身、ボストンを拠点に活動するプロデューサー。
積極的には表に姿を現さないが、フォトグラファーの1000 Wordsのポラロイド写真で顔出しが確認できる。
Villainは、マサチューセッツ州のみならず、NY・ブルックリン出身のRIMやクイーンズのFastlife、ロチェスターのETO、ワシントンD.CのAnkhlejohn等、多数のコラボ名義の作品をリリースしている。(その他、インストゥルメンタル作品も多数)
彼のビートは、ノイズ掛かる針音に、グライミーとドラマチックが同居する、映画的なビートアプローチを得意とする。
ムービークリップの断片を挿し込み、曲中に一つのストーリーを展開する、臨場感のあるシネマティックなサウンドが彼の魅力だ。
Villainは、オーディオ・エンジニアの専門学生時代に、授業で聴かされた映画のサウンドトラックに感銘を受け、自身のビートメイキングにも影響を与えた。
サンプル、ドラム、ベース等の構築だけでなく、トラックのディティールや演出にまで徹底してこだわり、彼自身が常に目標とする、クオリティの高い職人気質な楽曲を体現する。
また、今日のVillainが得意とする、グライミーなサウンドスタイルのベクトルを導いた人物が、Al.Divinoだ。
ある時、彼がDivinoにビートを聴かせた際、"Vinyl Villain"というハンドルネームと音楽性が合致していないことを指摘されたという。
Divinoの言葉に気付きを得たVillainは、年月を経て、徐々に自分のスタイルや方向性を確立する。Al.Divinoのカリスマ性というか、絶大な影響力はここでも感じることができる。
ちなみに、VillainのYouTubeチャンネルでは、自身の個人的なコレクションの中から、ランダムに3枚のレコードを選び、その場でビートを作らせる「VILLAIN'S CRATES」という(Mass AppealのRhythm Roulette風な)企画も連載していて、面白いのでぜひ。
◆Vinyl Villain Instagram
◆Vinyl Villain Twitter
◆Vinyl Villain Soundcloud
◆Vinyl Villain Bandcamp
◆Vinyl Villain Official Site
Grubby Pawz
Artist Name:Grubby Pawz
Base:Boston, MA
Grubby Pawzは、イースト・ボストンを拠点とするプロデューサー。
MAエリアで活動するアーティストたちの音源をリリースするために始めたレーベル、「City Yard Music」を主催しており、グロットン出身のMC、Haze Of Main Aimも共同運営者である。
Grubbyのビートは、その趣味趣向からも見て取れる通り、ホラーコアを主体とした、サイケデリックで、おどろおどろしいサンプリングを得意とする。
また、ホラーテイストだけでなく、ジャジーでドラマチックな透明感のあるビートも作り、シンプルでありながらも深みのある情景を浮かばせてくれる。
共演者には、Tragic Alliesのメンバー、Al.Divino、SPNDA、Kadeem、Sekwence、Datkidbravo、???、Skunkz、Pounds448、O.T.O、Primo Profit、Nat Burner、JuneLyfe、Avenue、Lord Juco、Sullynomad、Rahiem Supreme等、エリア問わず、多くのアンダーグラウンド・アーティストたちから支持を得ている。
特に、複数のコラボレーション作品を有する、Haze、SPNDAやリン周辺のアーティストとも結び付きが強く、彼らの音楽性との親和性の高さも伺える。
上記、SPNDAとの「Steel Sharpens Steel」は、当時、個人的にも気に入っていた一枚。
日本語のインタビュー(?)のイントロから始まり、洋画の一節と思われるセリフを多数引用し、全体を通して、Wuアングラにも近い雰囲気を持つ。
Lino Gonzalez率いる、ボストンのストリートBMXクルー、「90EAST」が協賛した、2019年リリースの「In The Field」では、ボストンやリンのアンダーグラウンドの名手たちが集い、彼の精度の高いビートに華を添える。
Grubbyは、ボストンとリンの両エリアを繋ぎ、新たなシナジーを生み出す役割も担う、MAシーンの要となるプロデューサーである。
◆Grubby Pawz Instagram
◆Grubby Pawz Twitter
◆Grubby Pawz Soundcloud
◆City Yard Music Bandcamp
◆City yard Music Official site
Primo Profit
Artist Name: Primo Profit
Base: Boston, MA
Primo Profitは、コロンビア系アメリカ人でボストン出身のMC。別名、Periko Premeの名称でも知られる。
ボストンにおけるPrimo周辺のコミュニティはコロンビア人が多く、ニックネームの由来もそこが起源となっているそうだ。
ボストンを拠点とする、コロンビアン・クルー「Money Mobb」での活動を経て、現在、ニュージャージー州ハッケンサック出身のCrimeappleが率いる、「Manteca」に所属している。
コロンビアといえば、麻薬王の"パブロ・エスコバル"の名前が真っ先に浮かび、ドラッグ、カルテル等の裏社会の暗部的なイメージが強い。
Primo自身も経験に基づく、ストリートライフやドラッグカルチャーを通して、コロンビア文化の側面にフォーカスし、ハードな生き様や社会問題について提起している。
2012年に公開した「Reza Por Mi」のMVのスマッシュヒットによって、圧倒的存在感を示したPrimoは、その後もDipsetのFreekey Zeekeyのクルー、730Dipsに所属していたSen City、Maybach Music GroupだったTracy T、Coke BoysのFrench Montana、故・Chinx等、有名アーティストとも楽曲を制作している。
2017年にデビューアルバムとしてリリースされた「Locksmith」では、最近のPrimoとは異なるスタイルでありながらも、ストリートマナー全開で、Dave East、Conway The Machine、Jadakissらの豪華客演を招き、ゲスト陣にも負けず劣らずの剛腕なスピットで、完成度の高いストリート産クラシックを残した。
その後は、アンダーグラウンドなブーンバップサウンドに傾倒し、よりドープなストリートシットを量産していく。
よく、ラッパーがビート(トラック)負けするという言葉があるが、彼のアクロバティックで豪快なワードプレイの前では無用の戯言である。
2020年作、MichaelAngeloとのマンテカ・タッグで生み出された「Ransom BLVD」は、鞭打ちどころか、首ごと引き千切られる程のサディスティックな"音の暴力"が体感できる、ハードコア・Hip Hop・クラシックとなっている。
昨年は、キャピタル"V"の仕掛け人、Vandarude主体の下、Bohemia Lynchが全曲プロデュースした「¥EN」をリリース。
ドラッギーなイントロで幕を明け、漆黒で研ぎ澄まされた闇に映える硬質なドラムと、細部まで計算された奥行きのある演出が、Primoの凄みのあるヴァースを一層に引き立てた。
客演には、Sullynomad、Estee Nack、RLXら、彼らと馴染みあるメンツが参加。
VandarudeのBandcampでは、先行の7inchシングルとEPの12inch Vinylも販売された。
Bohemia Lynchは、静岡出身で、国外でも注目されるプロデューサー。
日本人としては異例のWestside Gunnの傑作、「Pray For Paris」への参加や、Lord Juco、Cousin Feo、Sullynomad、Hus KingPin、Tha God Fahim、Y.N.X.716、Junglepussy、Rick Hyde等、多数の海外アーティストへの楽曲提供やコラボで話題となっており、国内でも他の追随を許さぬ、異彩を放つ才能を見せている。
VandarudeとBohemia Lynchからなる、インディペンデント・レーベル、「BETRVY」周辺の動きからも目が離せない。
◆Primo Profit Instagram
◆Primo Profit Twitter
◆Primo Profit Soundcloud
◆Primo Profit Bandcamp
MichaelAngelo
Artist Name:MichaelAngelo
Base: Boston, MA
MichaelAngeloは、ボストン出身のプロデューサー。Primo Profitと同じく、Mantecaに所属している。
顔半分を常に、スカーフやバンダナで覆い隠し、怪しげな雰囲気を放つプロデューサー。
彼のサウンドは、非常に洗練されたサンプルの研磨と、自身もこだわりが強いと語る、強度の高い合金の様な重厚なドラムを叩き付け、かと思えば漢臭い哀愁が入り混じる、ソウルフルなドラムレスビートも作り出す。
緩急の使い分けやビートの振れ幅も秀逸で、他に中々類を見ないオリジナリティを背中で語るプロデューサーだ。
以前は別名義で活動していたそうだが、2018年に、Crimeappleとのシングル「Chepe」、Rome Streetzと「Felony Phonics」をリリースし、表舞台に姿を現す。
その後、ロチェスター出身のDa Clothの中心メンバー、RigzやEstee Nack、Primo Profitとの楽曲を纏めた、コンピレーション形式のEP、「Commerciante D'Arte」の7inch Vinylを「FXCK RXP RXCXRDS」からリリース(Nackとは、以前の名義から既に楽曲提供を行っていた模様)。
勢い衰えず、MantecaのCrimeapple、Primo Profit、RLXは勿論、ボストンの"プエルトリカン・Jay Z"こと、Bori Rock等ともコラボレーションや楽曲提供を行い、コンスタントに制作とリリースを続けている。
直近のリリースでは、強烈なインパクトのETOとのコラボEP「Table For One」や、Crimeappleの新作「Jaguar on Palisade 2」へのビート提供を行っている。
また、少し前のインスタグラムのストーリーズでは、前編でも紹介したボストンのMC、Avenueが、Money Mobbのスタジオで彼をメンションした動画を上げており、今後の共演が期待される。
ちなみに、Vandarudeプレゼンツ~Sagashitarekoitsu~では、Vandarudeのプライベートストックのお気に入りビートを7inchにする企画の第一弾が、MichaelAngeloの「Merci/Japanese Break」(既に完売済)。
◆MichaelAngelo Instagram
◆MichaelAngelo Twitter
◆MichaelAngelo Bandcamp
RLX
Artist Name: RLX
Base: Boston, MA
RLX(Real Life Experience)は、コロンビアンとプエルトリカンのミックスで、ローレンス出身のMC・プロデューサー。
Mantecaに所属し、ボストンを拠点に活動している。
ボストン近郊で多数の移民文化が交差する街、ローレンスで育ったRLXは、Hip Hopに限らず様々な音楽やアートに影響を受け、音楽活動を始める。
MantecaのPrimo Profitとのコロンビア・メデジンでの出会いや、MichaelAngeloとの繋がりが、彼を同じコミュニティへと導いた。
その後、Primoとニュージャージー州に赴き、CrimeappleやMantecaのインハウス・プロデューサーである、ニュージャージーのDJ Brown13(Soul Assassins RadioのレギュラーDJ)や、Crime作品ではお馴染みのBuck Dudleyを紹介される。
元々、プロデューサーとしてのキャリアがメインであった彼のビートメイキングは、自身名義の「Phil Pockitts」や、Estee NackとAl.DivinoとコラボしたEP「VILLAINS IN VILLAS」、Estee Nackとリリースした、「RENAISSANCE」、Al.Divinoとの「Legacy」辺りからも読み取ることができる。
RLXが、地元ローレンスを越えた認知を獲得し始めたのが、MichaelAngeloとリリースしたシングル「High Standards」辺りからであろう。
その後に、MichaelAngeloとの激渋なコラボEP、「Dali」や、Brown13との「Panaeng」をリリース。
ちなみに、ポロ・フリークっぽい名前だとは思っていたが、2020年のインタビューでは、「皆同じに見えるからポロはもう着ない」と語っている。
翌年、Primo Profitとのコラボ作「Gaviria」やコロンビア・メデジンのプロデューサー、D.J.HことIgnorancia Sofisticadaとのコラボ作「Kuntanawa」を次々と発表し、MCとしての活動を本格化させていく。
面白いことに、作品を出す毎にRLXのラップには、鋭いキレが出てきており、フロウの自由度も加速度的に増している様に感じる。
また、DJ Muggsからも「Winter」で1曲、「Winter 2」ではなんと4曲も客演に招かれ、熱烈にフックアップされるその才能は、まだまだ成長過程として伸びしろが期待できる、ポテンシャルの高いフレッシャーなMCだ。
今年も既に、MichaelAngeloとのEP、「Here&Now」やBohemia Lynchがプロデュースした7inchシングル、「ALL OVER THE MAP」をリリースしており、その期待値の高さを伺うことができる。
RLXとCedar Law$の96年同い年コンビによる「CIELO」は、掲題に違わず、憂世から解脱したエキゾチックな世界観の陶酔へと誘う。
作品全体の設計がシームレスな蒼穹の様であり、RLXはその幽玄の聖地を流れる雲海の如きフロウで、芸術的に色を足していく。
客演はメデビンの盟友Primoに、「Timeless Truth」としての活動も懐かしいJoel Rodriguezの名前も。
◆RLX Instagram
◆RLX Twitter
◆RLX Bandcamp
peace LAWD.