ノンアルのやうな恋かと思ひきや深く酔ひたる我にとまどふ
いつだってあなたが閉めたカーテンは左側だけすこし開いてた
窓際にぽつりと残るビアグラス花を挿したりした日もあったね
「じゃあ」だけで振り向きもせず去ってゆく リボンをかけた箱を背に隠す
訪ね来る君が野良なら良かったのに 我が家に入れて首輪を付ける
あの店もあの服あの靴あの曲もほめる貴方がいなけりゃ無意味
車窓越し見覚えのある横顔か つい振り返る彼誰時(あれはたれとき)
とりあえず乗ってみようかいつもとは逆方向の電車にひとり
あんなにも愛おしかったその名すら意味を為さない文字の羅列に
わたくしを見てかまってと声高に泣き叫びたしみどりごのごと
会えなくて淋しいのならそれはきっと好きなのでしょう思う以上に
無意識に君が差し出すハンカチが私の知らぬライラック色
ずぶ濡れの野良猫みたいな拗ねた眼で紅いペディキュア見ているあなた
ほんのりと色づいているその頬へそっと指先キスのかわりに
五月晴れみたいな笑い方をする人でした記憶の中の君
今日からはもう迷わない何もかも自分で決める君に聞かずに