入院して親知らずを4本抜歯し嚢胞を摘出した体験談を話します

冷たい風が頬を撫でる中、私は重い足取りで自転車を漕ぎながら大学病院へと向かった。

『親知らずを4本抜いて嚢胞を摘出』

大病を患った人からしたら「その程度?」と思われるかもしれないが、手術が初めての私には不安で胸が締め付けられる。
大学病院での手術なので安心感はあるが、「本当に大丈夫だろうか?」という気持ちは拭い去れない。

入院前のPCR検査

午前9時、病院に到着する。

当時はコロナ禍であり、まず最初に行うのはPCR検査だった。
外来診療なら検温と消毒だけでよかったが、入院するためには陰性証明が必要だと説明されていた。
診察室に入ると看護師さんが細長い綿棒を手にして待っている。
「ちょっと痛いかもしれませんが、すぐ終わりますから」という言葉とともに、私の鼻の奥へと綿棒を差し込んだ。
粘膜をグリグリされる感覚は想像以上に痛く、私の目にはうっすらと涙が浮かんでいた。
綿棒を抜いた後も鼻の奥はヒリヒリしている。

検査の結果は11時半以降になるそうで「結果が出るまでは病院の外で待機してください」とのこと。
病院から近所に住んでいた私は、一度帰宅して準備をすることにした。

僅か2時間ほどであったが、とてつもなく長い時間に感じられる。

入院開始と最初の食事

午後12時、私は再び病院を訪れた。

冷たい空気が肺に入り、心拍数が少しずつ上がっていくのが分かる。
検査の結果は『陰性』と聞いた瞬間、「これで手術は予定通り行われる」と安心した。
少しホッとしたものの、次に控えるのは入院の手続きをしなければならないという現実に引き戻される。
必要事項を記入し終えた後、私は【限度額適応認定証】を提出しておく。
この申請を行っておけば手術費用が高額になっても、個人負担は9万円前後に抑えられるからだ。
医療費の心配が少しでも和らぐのはありがたい。

入院手続きを終えると、13階にある6人部屋へと案内された。
室内に入るとそれぞれの5つのベッドにはカーテンがかけられ、顔はわからないが人の気配がする。
空いていたのは窓際のベッド。
明るい日差しが差し込み外の景色が綺麗に見える。
「ここで手術前後の時間を過ごすのか...。」と思うと緊張感が高まった。

とりあえずパジャマに着替えると、ほどなくして昼食が運ばれてきた。


最初の入院食

思ってたより質素だな…。
「いただきます」っと思た瞬間、ある疑問に気付く。

お箸がない!

入院経験のない私は、箸は持参しなければならないことを知らなかったのだ。
だからと言って手で食べる訳にはいかない。
看護師さんに事情を説明すると「今回は準備します。夕食以降は2階のコンビニで購入しておいてください。」といって割り箸を手渡してくれた。

いきなり恥ずかしい思いをしてしまった...。

薬剤師の説明と点滴の焦り

午後2時、昼食を食べ終えて少し落ち着いていた。(コンビニに箸を買いにも行った)

若い薬剤師の方がやってきて、手術後に使う痛み止めの説明を丁寧にしてくれる。
落ち着いた優しい声を聞きながらも、私の頭の中はこれから始まる手術のことばかり考えていた。

薬剤師さんの説明が終わると、入れ替わるように再び看護師さんが点滴を持って現れた。

手術の開始は午後3時。

1時間前から抗生剤を投与する必要があると言われ、私の腕に針を刺してその場を立ち去る。
ポタポタと落ちる点滴を見つめるといよいよ現実味が増してきた。

10分ほど経過した時、再び看護師さんが少し焦った様子で部屋に入ってきた。
「手術が早めにできることになったので2時半頃に口腔外科に向かうことになりました」とのこと。
まさかの事態に驚いていると、さらに衝撃の光景が!

看護師さんが慌てて点滴のスピードを早めたではないか?!

特に痛みなどは無いのだが、少しだけ不安になる。
「これで本当に大丈夫なんだろうか?」と心の中で問いかけながら、準備は急ピッチで進んで行った。

そして午後2時半。
まだ残った点滴をぶら下げたまま、看護師さんに連れられて口腔外科へと向かう。
道中は看護師さんが気を遣って優しく声をかけてくれていたようだが、不安と恐怖に支配された私の耳には何も届かなかった。

まるで死刑台に向かうような気分である…。

口腔外科に到着するや否や、私は無言で手術台へと寝かされた。

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