デート #4

意気揚々と勉強しにいったのはいいが、簡単にノックアウトされて、自部署に戻ってきました。
課長に、量産工場でうまくいっている仕組みは一品一様の我が部署では、使えそうもないこと。
そもそも、部品表というおおもとのデータが作成できないことを説明し、
ちょっと落ち込みながら、昼食を食べ始めました。
ここの社食のメニューは安さと量が取り柄えで、毎日昼と夕方の2食をほぼここで食べています。
大学の有人達に聞くと、毎食ビジネス街のお店で外食すると、昼食で千円以上でていくそうです。
私は、毎日2食で800円以内です。
あー仕事で壁にぶち当たって、食費について考え事してるなんて、だいぶ参っているようです。
そのとき、携帯に電話が。彼女からです!
「もしもし」
「やー、いま大丈夫?」
「うん、食事中だけど、今終わるので、かけ直すよ」
「わかった」
社食をでて、中庭に行き、彼女に電話します。
「やー、この前はわるかったね」
「いや、私の方こそ、理由をちゃんと聞かないで、怒ってごめん。」
「今日、このままトラブルがなければ、早く帰れるけど」
「わかった、夕方電話してね。期待しないで待ってるから」
よかった。仕事は忙しいし、全然改善される気配はないし、
自分でちょっとがんばろうと思ったら、簡単に挫折するし、このまま気まずい関係のまま、
関係を修復する努力も労力がいるし、終わってしまうのかと、ふと気弱になりかけていましたが、さて、今日は、このままトラブルも無く、終われれば、またには、定時で帰ろう!
夕方、昨日以来の計画変更による現場の進捗状況を聞いてまわり、
大きな問題は無いとのことで、課長にも、2日連続深夜勤務したので、今日は、定時に帰りますと告げ、工場からぞろぞろ出てくる社員の流れに乗って、駅に向かいます。
その途中で、彼女に電話し、待ち合わせ場所を決めました。
彼女より先に着き、先にビールを注文し、一杯飲み始めました。
「よ!」と言って、彼女がきました。一人で飲み物を注文し、
「食べるよね」と私に言って、オーダーを始めました。
オーダーが終わると同時に、彼女の飲み物が来ます。
あざやか!いつも段取りいいんだよね。
「さて、とりあえず、おつかれ」といって乾杯し、先ずは私から、
「先日はごめん、あまりにも疲れ果てて、状況を説明するのもしんどくて」
「まー、私も聞き上手になってあげればよかったんだけど、
そうは言っても、伊藤君のドタキャンは多すぎるし、そんなに、急に残業になったり、
普通しないでしょう」
「そうなんだよ、会社の同期にも言われるんだけど、俺の職場が、なにせ特殊な環境で、
うまく説明できないんだけど、毎日トラブルの山なんだよ」
「そんなトラブルの山の職場って、トラブル対応室みたいなところ?、
でも工場の中で現場じゃなくて、事務処理してますっていっていたよね、
いままで詳しく聞かなかったけど、ちゃんと話して!」
ということで、彼女にとくとくと自分の仕事内容について説明しました。
数分説明した後、彼女の目が気のせいか輝いています。
「まいったなー、伊藤君の仕事も知らなかったけど、私の仕事も説明してないよね」
と彼女がなんだかうれしそうに話します。
「君は、たしか、営業からコンサルタントのような仕事に変わったっていっていたよね」
「うん、良く覚えていてくれたわね。私はね、実は!今、製造業の業務改善を手伝う仕事をしているのよ」
「まだ、コンサルタントというにはおこがましいけど、もうかれこれ2年以上勉強しているのよ」
「えーということは、俺の悩みが理解できるよね」
「もちろん、理解できるというより、改善の手伝いができるんじゃないかと思うけど」
「え、まじで!」
「先ず、伊藤君の職場だけど、典型的な個別受注の職場よね。受注してから設計、製造を行うんでしょ。
世の中の生産管理は、たいてい、部品表がベースにあって、いかに在庫を削減するかをポイントにしているけど、
伊藤君の職場では、中間在庫なんてないでしょ」
「そうだね、標準部品のような購入品の在庫は若干あるけど、中間在庫なんてないよ」
「そうそう。実は、今日、同じ社内の別の部署にいる同期にそこで使っている、生産管理の仕組みを聞きに言ったんだよ。
そしたら、部品表が無いなんて、生産管理ができないよ。って言われて、がっかりしてたんだよ。
部品表が無くても、なんとかなるのかなー」
「はい、ポイントはいいですねー」と言う彼女の顔はやけにうれしそうだ。
「部品表は、ものを中心にして、ものの変化を現していくのだけれど、
伊藤君の職場は、設計業務や工場出荷後の現地工事まで対象でしょ。
だから、ものでは無くて、発生する作業を中心に考えないといけないんだよね。
だから、既存の生産管理の仕組みでは無理があるので、別の管理手法が必要なんだよね」
「へー、それで別の管理手法って」
「まあまあ、料理が冷めない内に食べなきゃ」と言いつつ、俄然、彼女の目は輝いているように見える。


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