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小説版のレクター博士

現代サイコスリラーを読むと余計な知識ばかり増えます。
ハンニバル・レクター博士のセリフを中心に、映画版には登場しなかった場面などを集めてみました。

『羊たちの沈黙』

・クラリスとの最初の面談から

きみに関する特別な事実を一つ、話してやろう、スターリング訓練生。
きみの部屋には、プレゼントされたビーズを増やしていく金色のネックレスがある。いまそれを手にしてどんなに安っぽいかに気づくと、きみはげんなりしてがっくりしてしまう。ちがうかね? 

ビーズをもらうたびに発したありきたりの感謝の言葉、生真面目にビーズを通してもらった思い出、いまとなってはそのビーズの一つ一つが安っぽく見えるのだ。ありきたりで、何の面白味もない。平々凡々たる思い出。頭がいいと無価値になってしまうものがたくさんあるんじゃないのかな? それに、センスの向上もきみを傷つける。

あのネックレスすら安っぽく見えてくるなら、この先、輝きを保ちつづけるものなどあるのだろうか?

p48

・他人を吊るすのは難しい

人が自分でドアの把手に紐をかけて首を吊ることはよくある。すわったまま首を吊ることだってある、実に簡単なんだ。ところが、だれか他人の首を吊るすのは難しい———たとえ縛られていても、身を支えられるものが足の爪先で見つかれば、相手はなんとかそこに立とうとするからね。

そこでよく使われるのが階段なのさ。階段はだれでも見慣れているだろう。で、階段の上のトイレにつれていくとか行って、相手に頭巾をかぶせて階段をのぼらせる。そして、踊り場の手すりに結びつけておいた紐をすばやく首にかけ、相手を最上段から蹴り落とすんだな。普通の家の中でだれかの首を吊ろうとしたら、それしか方法はない。

p173

・統合失調症の体臭(疑わしいという説も)

きみは、彼の汗の臭いがかげるかい? あの山羊のような独特の臭いは、トランス3メチル2ヘキセン酸だ。覚えておくといい、あれが統合失調症の臭いなのさ

p268

・皮を剥ぐ手法。ティツィアーノの "マルシュアースの皮剥ぎ" に言及されている

「いいかね、クラリス、享楽的な皮剥ぎ行為は常に犠牲者を逆さに吊るして行われるものなんだ。そうすると、頭部と胸部の血圧が長く維持される結果、犠牲者は意識を保ちつづけるからね。

・チルトン院長が自らの発言により独り身だと判明する場面。実は彼は医学博士の学位すら持っていない。

「言っとくがね、わたしは単なる獄吏じゃないんだよ、ミス・スターリング。単に人を出入りさせるために、わざわざ夜間、ここに出張ってくるわけじゃないんだ。今夜なんか、ホリデイ・オン・アイスのチケットを持っていたんだから」
 複数形の "チケッツ" ではなく、単数系の "チケット" と言ってしまったことに、彼は気づいた。その瞬間、クラリスは彼の暮らしの内実を知り、それを知られたことを彼も覚った。

p253

記事を書くついでに3部作まとめて読み返したのですが、『ハンニバル』とかどうにも蛇足というか映画作るから設定いくつか出しとこって感じに見えたり

好きだった作品を見直したときの「大したことないやんけ」ってなる感情、なんか名前あるんですかね、、

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