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「嫌われるアメリカ」についての2冊
2024年11月に向けて、アメリカ大統領選のニュースを目にすることが増え、関連書籍を探していたところ、以下の2冊を見つけたので記事にまとめました。
『アメリカは内戦に向かうのか』
第二次世界大戦終結時の1946年以降、民主主義国家は世界的に激増していったが、同時に内戦もまた頻発するようになっていった
(中略)
1870年代、内戦を経験した国などほぼ存在しなかった。1992年に至っては、50を超える国々が内戦を経験している。
さまざまな国の内戦が起きた状況について、詳しく解説している書籍。
・国民が分断されていることが大きな問題(人種、宗教)
・独裁政権〜民主主義の途中段階で、内戦が起こる可能性が高い
・富の偏在は条件ではない
・他国からの介入、代理戦争としての側面について
暴力的な市民
テロ、暴動、内戦が起こるのは、平和な抗議活動(デモ、ストライキ、ボイコット)を何年も行ったにも関わらず、政府に要望が通らなかったときである。
抗議活動それ自体が内戦を起こすわけではない。
市民がシートやプラカードを掲げて街に繰り出し、シュプレヒコールを上げる。それは、政府が声に耳を傾け、何らかの改善がもたらされるとの期待からにほかならない。
抗議の挫折、それが希望の喪失と、直接行動の引火点となる。
イスラエルではパレスチナ人が何年間も非暴力的な抗議活動を行なっていたが、交渉が進まなかったため、民衆が暴発した。
仕事がなくなり、警察が信用されず、家族の安全が保障されなくなると、反政府勢力が力をもつ。
テロリストたち
今日の反政府武装勢力は、ゲリラ戦と組織化されたテロである。屋上に潜むスナイパー、自家製小包爆弾、トラックを狙い、道路脇にしのばせる爆発物などが武器の主たる顔ぶれである。ゲリラは、政府軍の兵士よりも、野党党首、ジャーナリスト、着任間もない警官などを引き入れようとする。
攻撃は一度ではなく、何度も繰り返し行われる。
人々や政府を消耗させ、要求を通すことがテロ組織の狙いである。
バスに爆弾を仕掛け、テルアビブのカフェに自爆テロを差し向け、ハイファ繁華街では自動車にブービートラップを仕込み、医院、ショッピングモール、セキュリティチェック・ポイントを爆破する。
アメリカでは、国内の過激派がテロ組織として指定されていない。
カナダや他の国とは異なり、アメリカがテロ組織と指定するのは、国内ではなく、国外のみである
おそらく政治的理由もあって、左右両派の政治家も国内テロを論じたがらない。過数派から何らかの利益を得ている場合もあるだろうし、あるいは過激派を敵に回す代償を慮ってのこともあるだろう。
政権による分断
例えばインドのモディ首相の政策。
モディは青年時代にRSS(インド人はみなヒンドゥー教徒たるべしとする準軍事組織)に一枚も二枚も噛んでいた。(中略)
排他的なヒンドゥー国家を強硬に追求し、最大州ウッタル・プラデーシュ州のヨギ・アディティヤナート首相をはじめ、過数派に政府要職を与えるなどした。
モディはさらに過派を文化・教育機関の要職に据え、名称変更や教育課程の統制を行い、事実上インド文化史からイスラム教徒を締め出すのに成功した。
『エコノミック・ヒットマンの世界戦略』
途上国に資金提供し、返済不能な債務を負わせせることで港や資源の利用権を得る「EHM戦略」についての本。登場する国は、エクアドル、インドネシア、パナマ、エジプト、イラン、コロンビア、サウジアラビアなど。
かつてアメリカが「民主主義を広める」という口実のもとに行っていた手法が、現在は中国によって行われている。中国はアメリカとは違い「内政干渉しない」という建前なので、独裁国家で歓迎されやすい。
最初は陰謀論?と思いながら手に取ったのだが、たぶん植民地支配を発展させたのがEHM戦略なのだろうという理解に落ち着いた。
具体的な方法
▶️ エコノミック・ヒットマンの仕事内容
(5〜6はIMFが勧告する)
開発融資を正当化するための資料を準備する。電力、道路、港、空港、工業団地などのインフラを整備すれば経済発展するという証拠を揃える。
融資する
開発を行う
債務の利子負担は軽減されず、国家は借金漬けとなる。
石油などの資源をアメリカに格安に譲るように迫る。
電気や上下水道などの公共サービスを民営化し、コーポレートクラシー(大企業の経営者など、富を独占する支配層の総称)に譲渡するように要求する
この種の融資では決まって、アメリカのエンジニアリング・建設企業に事業を発注することが、重要な契約条件として盛りこまれる。そのため、ほとんどの場合、アメリカの外に資金が流れることはない
▶️ これらの提案を断った政治家は失脚する。もしくはジャッカル(殺し屋)によって始末されてしまう。
イランのモサッデク首相、グアテマラのアルベンス大統領、チリのアジェンデ大統領、コンゴのルムンバ首相、南ベトナムのジェム大統領
リクルート
第5章では、著者がエコノミック・ヒットマンとして、どのようにキャリアをスタートしたのか紹介されている。この仕事に向いているタイプについて述べられた箇所が面白かった。
面接官は、国家に対する忠誠心よりも、私が生きる中でいだいた個人的な不満に着目していた。両親に対する怒り、女性への執着心、経済的成功を夢見る野心は、どれもNSAにとって都合のよい材料だった。要するに、手なずけやすかったのである。
・学業とスポーツで人を上回ろうとする意志の強さ
・父親への反発心
・気さくな性格。外国人とも、すぐに打ちとける
・警察相手でもシラを切るような図太さ
国際コンサルティング会社
当初スカウトされたのはNSAだが、実際に活動したのはMAINという国際コンサルティング会社である(Chas.T. Main. Inc.)
社員の大半はエンジニアだが、私たちは機材を持たず、倉庫すら作らない。働く人たちの多くが、軍出身ではあるものの、国防総省や軍事関連機関を契約相手とするわけではない
MAINは非公開企業であり、従業員2000人のうち5%ほどの経営陣が、MAINの株式を握っている。競合他社の名前も挙げられている。
アーサー・ロ・リトル(Arthur D. Little)、ストーン&ウェブスター(Stone & Webster)、ブラウン&ルート(Brown & Root)、ハリバートン(Halliburton)、ベクテル(Bechtel)など
こちらの書籍は分量が多く、まとめているうちに内容が長くなってしまったので、また別の記事にできたらと思っています。
記事を書きました↓
終わりに
中東や石油、シルクロード、イランなど、とにかく知らなかった話ばかりで、映画で見ていた世界と史実がつながったりするのが読んでいて面白かった。
独裁政権
彼らがどのように体制を守っているかについては、こちらの番組が分かりやすかったです。