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アーマードコア6が待ちきれないので、デモンエクスマキナをプレイした
アーマードコア6の発売おめでとう。そしてありがとう。
9年ぶりの新作の発表で大盛りあがり。旧来からの傭兵はもちろん、ダークソウルやエルデンリングからフロム・ソフトウェアのゲームに触れたニュービーも興味津々なようで。
そうなれば、旧作にも触れたくなるもの。
でも無いんだな、これが。現行機で遊べるタイトルが。
最後にリリースされた「ヴァーディクトデイ(以下、VD)」が9年前。ひとつ飛んでPS3とXbox360の時代で10年以上前のハードだ。ちょっと待て。もう10年前!? 5年くらい前じゃないの? もうこうなるとブックオフだのハードオフだの秋葉原あたりだのを巡らないといけないので手が出しにくい。amazonだと調子ぶっこいた転売屋が舐めた価格で売ってるのでこちらもおすすめし辛い。
それじゃSteam版のひとつでも出ているかと思えば、そうでもない。
ほんとフロムソフトウェアはこういうところ、商売が下手。新作発表から盛り上がって発売までのタイムラグこそが旧作の売り時じゃん。
Xbox seriesは後方互換に対応している優秀なハードなんだけれども、肝心のアーマードコアシリーズは対応していない。マイクロソフトは本当に日本でゲーム機売る姿勢はあるんか?
こんな具合で10年ぶりに新作が発表されたというのに、発売までに旧作を遊びづらいというなんとももどかしい状況になってしまっている。
そんなカスタマイズハイスピードメカアクションという当時浮いていた駒を取りにきたゲームが2019年に出てました。
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そう、デモンエクスマキナです。
どうみても「ジェネリックアーマードコア」
プロデューサーに初期のアーマードコアシリーズを手掛けた佃健一郎氏、メカニカルデザインには同じくアーマードコアでもデザインしていた河森正治氏というどっかで見たような布陣。
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主人公=プレイヤーは傭兵として「アーセナル」と呼ばれるロボットに搭乗して依頼された仕事をミッションとして進めていくゲームシステム。そしてこのどっか見たようなでゲーム画面の構成。
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更にどっかで見たような感じの依頼主とのメッセージのゆりとりをする画面のこの感じ。
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そもそも一番最初のミッションのスタート位置から背後に下がったら、こんなメッセージが出てきた時点でもう確信犯だよ。キングスフィールドのネタなんか知っている人少ないでしょ。フロムの一番最初のゲームだぞ。
ロックマンに対するガンヴォルト、悪魔城ドラキュラに対するBloodstainedといったいわゆるリリースが途絶えたシリーズの「精神的続編」のような立ち位置として、開発側も明らかにデモンエクスマキナ(以下デモエク)というゲームをジェネリックアーマードコアとして製作していたことが窺える。
実際のプレイフィールにしても空中戦メインでブーストでの高機動戦闘といった具合にシリーズの中でも最もスピード感があってわかりやすいアーマードコア4とfAを踏襲している。これには往年の傭兵にも良し、アーマードコアに触れたことのない新人傭兵にも良しだ。
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「アーマードコア」を下地にした「デモンエクスマキナ」という新しいロボアクションゲーム
実際のところはもちろん、何もかもがアーマードコアそのまんまというわけでもない。
例えばアーマードコアが生真面目な「わかるやつだけわかればいい」ような渋い方向を攻めているならば、デモエクは「プレイできるロボアニメ」といった具合でケレンミのあるわかりやすくて派手派手な演出が盛りだくさんだ。
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あとデモエクでは、なんとキャラにグラフィックが存在している!
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そんなエンタメに振り切った面白さと手軽さが、デモエクの面白さのコアなところの一つと言える。
戦闘面ではアーマードコアのようなハイスピードアクションを下地にした上で、敵からアイテムを奪えるハクスラ要素や各種武装に設定された距離適性という要素が、アーマードコアとはまた絶妙に違った戦い方を提示してくれている。
ハクスラ要素は倒した敵から弾薬を補給したり、撃墜した敵アーセナルからパーツを奪うことができる。倒した敵から弾薬を補給できるので、ある程度武器の弾数を気にすること無く気持ちよくバカスカ撃ちまくることができる。
敵から奪えるパーツには店売りや自分で開発できるパーツとは違って、「アタッチメント」と呼ばれる性能アップ用を装着するために「スロット」があったりなかったりする希少品だ。
ここまで書けば何が始まるか、もうおわかりだろう。
そう、掘り作業だ。
ただこの追加ステータスも大きく影響してくるのは対人戦くらいなので、エンドコンテンツと考えたほうがいいのかもしれない。
次に距離適性について。
各種武装には距離適性という属性が存在し、適正とは違う距離で攻撃を命中させてもダメージが減少してしまう。
デモエクではロックオン距離は頭部パーツによって決まり、近距離用の武装でも遠距離でロックオンが可能となる。ただしこの状態では射程距離が適正ではないので威力が著しく低下する。
逆にスナイパーライフルを近距離で命中させても大したダメージを与えられない。
またこの距離適性はブレードにも適応されていて、ちゃんとブレードを踏み込んで斬り込まないとダメージが出ない。敵に張り付いてブレードぶんぶん振り回してゴリ押すという戦法が通用しないのだ。この点もACをプレイしていると戸惑う。
デモエクは敵が硬いとよく言われているのだけれども、その原因はこの距離適性にある。
この距離適性によってシビアな立ち回りが要求される。いかに自分の装備の距離適性に合致する間合いを保ちつつ、敵の距離適性から外れるか。その上、実弾属性とエネルギー属性も絡んでくるので、自分に合った理想のアセンブルを探究するのに結構な試行錯誤をする必要がある。
アーマードコアで可能だった高積載のガチガチに硬いタンクにグレネードなどの重い高火力武器を片っ端から積んで力押しする「ガチタンによるゴリ押し」という初心者救済戦法もデモエクでは通用しない。というかデモエクにはタンクが存在しない。
どうしてみんな僕に優しくしてくれるの?
世界観とストーリー、そしてキャラクターたちはアーマードコアとは似て非なる味わいだ。
その日、月は落下した。
「目覚めの日/THE FIRST DAY」
人々は、壊れた月を見上げ、目を背ける。
この災厄により、文明は半壊した。
そして、月から放出された新しいエネルギー資源「フェムト粒子」は、
世界に恩恵を与え、その一方で脅威をもたらしていた。
人類の制御下から離れたAIたち、通称「イモータル」の行動パターンは人類の排除。
時を同じくして生まれた、新たな人類「アウター」たち。
人類は、イモータルを封じ込めるために壁を建設。
そして、アウターで構成される傭兵集団「解放旅団」を結成した。
アウターと呼ばれる彼らは、外部装甲「アーセナル」を身に纏い、
死なない敵、自己増産を続けるAIたちと一進一退の攻防を繰り返す。
なぜイモータルは、人類に敵対するのか………。
新たな人類、アウターである自分たちは何者なのか………。
戦闘は依然として継続中。
一番最初のミッションである傭兵試験では、先輩たちが同伴してくれて、死にそうになったら助けてくれるという高待遇ぶりだ。
アーマードコアだったら「試験に失敗したら、その時は死ぬだけだ」とか言われて自己責任だとでも言うように突き放されるのに。
その後もミッションを進めていく中で、プレイヤーは他の傭兵たちから一目置かれるようになっていく。
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なんでみんな優しいんだよ!!!(碇シンジっぽく)
地下世界でちょっと誤射しただけで僚機が敵対したり、裏切るのがわかってるのでまず僚機を殺したりとかやっていたレイヴンからしたら、皆の好意を素直に受け取れない。だって、仲間って生かしておいてもすぐ裏切るし、なんならこっちに修理弾薬費押し付けてくるものじゃないの?
というのもアウターとして戦っている登場人物たちは、壁の内側に押し込められてイモータルなんぞと戦わされているという見方もあり、その生死さえも外側の世界では弄ばれている。
そういうこともあってあくまでアウターの敵は同業者ではなくイモータルであって、アウター同士は出来る限り相互互助で活動していくのが当たり前という考え方のようだ。これはこれでアーマードコアとは違った世知辛さがある。
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デモエクでもやはり人類は愚か。
それと武器弾薬費も修繕費もかからない。ブリーフィング後の契約時にも言及はほとんど無いので、名言はされてないけど依頼元の組織が持つのが当たり前なのかなと想像が捗る。
メタ的に考えると、倒した敵から弾薬やパーツを奪えるので、そのあたりをステータスにして計算させると面倒だからじゃないかとも。
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あとなぜかガレージにはアイスクリーム屋がある。福利厚生か?
アイスクリームを食べるとステータスにバフがかかるので、突き詰めようとすると毎度毎度腹を壊しかねない勢いでアイスを食べることになる。
アウター同士がミッションでカチ合うことになっても、まず相手に対し「そのミッションから降りろ」と交渉から始まる。実に理性的だ。鬼に逢うても仏に逢うても躊躇ゼロのノータイムで撃ち合いが始まるどこぞのレイヴンどもとは大違いだ。
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「イレギュラー」ではなく「大物ルーキー」に
別のゲームの話になるが「エースコンバット」ではプレイヤーを気持ちよくさせるために、無線で敵からは恐れられ、味方からは信頼と羨望の対象にされて主人公をアゲにアゲてくれる。「メビウス1(プレイヤー)が来ているといっておけ、嘘でもいい」なんてその最たるものだ。
一方でアーマードコアでは主人公=プレイヤーに対し「イレギュラー」だったり「人類の天敵」とプレイヤーを規格外、畏怖すべき存在、世界の秩序や構造までも破壊しかねない程に強くなった果てに全員が敵になったという形で持ち上げる演出をしている。
ではデモエクではどうなのかと言うと、このあたりは両方のいいとこ取りだ。前述のようにストーリーを進めていく内に、傭兵仲間から注目や期待を集めている一方で、それとはまた別に大物傭兵から「戦ってみたい」とまで見込まれるほどになる。
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それと同期からは羨望と嫉妬を向けられたりもする。
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来るべき戦いに向けて
ロボゲーとしてのクオリティはかなり高く、また新規に対する敷居も低めに設けられている。
リリース当初は本当にロボゲー冬の時代だったし、主要開発メンバーがかつてのアーマードコアのスタッフだったのでジェネリックアーマードコアという見方もあったが、蓋を開けてみれば意識的にアーマードコアとの差別化がなされていて食い合うこともない。既に佃Pから続編の制作も明言されていて、むしろアーマードコアと並び立つロボゲーシリーズになり得る魅力は十分にあると思う。
それと一点注意しておいたほうが良いことがあって、これから購入するなら最大120FPSまで設定できるSteam版一択だ。
Switch版はかなりスペックがカツカツで、30FPSな上に爆発などのエフェクトが重なるとカクカクになる上に最悪落ちるので推奨できない。
デモンエクスマキナのデモンは「Demon」ではなく「Daemon」と書くよ。このことを念頭に入れておくと、世界観の理解が深まる。
アーマードコア6を待ちきれない傭兵たちに良し。
アーマードコアやったことないけどこれを機にやってみたいと思ったのに旧作が中古で値上がりしていて中々手を出せない貴方にも良し。
なんだったら、ガンダム以外のアクションロボゲーに手を出したことのない君にも良し。
来るべき戦いを待ちきれない傭兵なら満足できる一品だ。