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令和の新作2DSTG「ナツキクロニクル」

斜陽ジャンルで新作を出すということ

格闘ゲームというゲームジャンルは、ほぼ季節の変わり目に「衰退した衰退してない」だのと学級会が繰り広げられている。衰退したと喚かれる割には毎年何本かタイトルが発売されているのだけれど。

一方で冗談抜き衰退してるジャンルが存在する。そう、2DSTGだ。
Steamで販売されるインディーズものを除けば、新作タイトルは令和の今やてんで見かけなくなった。ダライアスやR-TYPEが発売されたが、あくまでシリーズものだし、R-TYPEはクラウドファンディングでどうにか開発と発売までこぎつけ、ダライアスに至っては過去に移植したもののバージョンアップ版だ。無論、それが悪いこととは言わないが、元気よく完全新作が出ないというのは、それはそれで寂しいものがある。

そんな学級会すら開かれない有様で、これはむしろもはや学級閉鎖だよ。アホみたいな学級会が開かれてる内が華なんだなーと思わされて、なんだか哀しくなってしまった。

そんな斜陽ジャンルで新作を出すというのは、それは利益度外視のクリエイターたちのやりたいことをやり通す意地でしかないのだろう。
ましてや今回の「ナツキクロニクル」は開発が遅れに遅れて、発売まで足掛け5年近く要している。それでもなんとか世に出してくれたのは、それこそ開発側の意地でしかない。

「ナツキクロニクル」はそんな意地を感じられるクオリティの良作だった。
多少、この意地が悪い方向にも出ていたけど。

新規へ向けて配慮を重ねてハードルを下げたシステム

上記で書いたダライアス含めて、これまでのシューティングと言うジャンルの9割方は何度もゲームオーバーになりながら、攻撃方法等のパターンを掌握と、繰り返しプレイしてゲームそのもののスキルを上げて「ゲームに対しアナログに上達する」攻略法だった。要はやってることはダークソウルと同じで、ゲームに対してどれほど自分が今どれぐらい上達しているかを数値などで明示化されておらず、ゲームをクリアするための要素がプレイヤーのテクニックに依っているということだ。

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だが残念ながら近年ではその方式は既に廃れて、プレイヤーもメーカーも「えっ?今更STG!?」という具合だ。これは、攻略パターンの構築やギミック対策だけでは時間もクレジットも膨大となりユーザーを掴むことが出来なくなったと言う事だろう。これはアーケードを祖とする2DSTG共通の欠点とも言えるんじゃないかな。

ナツキクロニクルはジャンルこそ「アナログな上達」がキモとなっているオーソドックスな2D横STGだが、その一方で時間をかけた分だけ確実にクリアしやすくなるように配慮をゲームシステム側に落とし込んでいる。言うならRPGのように「パラメータという数値の上昇によってゲームに対し絶対的に強くなる」ことだ。
それらが「研究開発費」と「Exシールド」だ。

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これまでのSTGでは武装が固定されて、道中でパワーアップアイテムを取るというのが大抵のパターンだったが、前作ギンガフォースも含めてパワーアップアイテムも出現せずに、武装もステージ開始前にアセンブリする。自分にとって慣れた編成で行くもよし、ステージに合わせた対策で編成するのもよしだ。また前作か続いてシールドなどの防御用装備もあるので、積極的に使っていけば生存率も高くなる。
これらの武装はステージをクリアする毎にスコアとして支給される「研究開発費」によって新しく購入したり、パワーアップさせることができる。
武装の内容としてはホーミングレーザーや対地ボム、極太レーザーなどSTGとして必要どころが一通り取り揃えられている。このあたりも開発の「わかってる感」が素晴らしい。迷ったらウェーブでよろしい。

もうひとつ「Exシールド」というシステムがあり、「ステージ学習レベル」の上昇によって自機のシールド数が上昇する。要は残機のエクステンドだ。
ナツキクロニクルでは通常のシールドは時間経過で回復するので、このあたりもやり込めばやり込んだ分だけクリアしやすくなるという配慮がある。

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これら研究開発費とステージ学習レベルはゲームオーバー時にも支給されるので、たとえ失敗してもプレイした分だけシステム側でもクリアしやすくなる配慮がされる。もちろん、わざとゲームオーバーを繰り返せばいいというわけでなく、「頑張ったけど駄目だった」という点が支給額として評価されるあたりもちゃんと考えられている。過程も評価してくれるゲームは慈悲深いのだ。

またメインとなる「クロニクルモード」ではアーケードのように連続せずに各ステージごとに区切られているので、ゲームオーバーになってもステージ1からやり直しにはならないので、練習のためのリプレイもやりやすい。

本当に新規を引き込みたいのか 古臭い世界観

さて、前述の開発の意地が悪い方向にも出ていた、ということについて。

ゲームシステム側がちゃんと新規に配慮しつつ、しっかりとコアなSTGファンにも満足できる骨太なやりごたえも用意しているのだが、その一方で、もうひとつ肝心要な要素であるはずのビジュアル面がぶっちゃけ新規の目を引くほどにキャチーとは言えない。
一言で行ってしまえば、シンプルに古臭い。

物語は、人類が太陽系外まで進出した未来。惑星セブンティアで「MSS警備」という警察の仕事を請け負う企業に勤める主人公たちの活躍とそこに潜む陰謀を暴く、といった具合だ。
前作「ギンガフォース」はそんなシンプルな勧善懲悪ものだが、今作の
「ナツキクロニクル」ではその裏側のエピソードが描かれている。

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どちらも何の捻りも無いストレートな世界観だけれども、如何せんどうにもキャラクターや台詞回しや全体の空気感やテンションとかも古臭い。例えるなら90年代前半のラノベとか夕方6時にテレ東で放送してたアニメのような、そんな感じ。これじゃぶっちゃけゼロ年代生まれには目を引くとは言えないと思う。

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というか、開発側でもそんなことは百も承知しているのか世界観の繋がりのある前作「ギンガフォース」ではOPムービーで夕方のアニメを彷彿とさせるこんな演出がある。こういうことをやってる時点で、開発側は「こういう懐かしい感じの世界観のゲームを作りたい」ということなのだろう。
でもやっぱりこれじゃ弱いし、どちらかというとこれは開発スタッフのノスタルジーに囚われたエゴなんじゃないかな。

前作同様目まぐるしく動くカメラアングルは視点が単調になりがちな2Dシューティングにおいては飽きさせないアクセントとなっている。更にはボス機体をプレイヤー側が使用できる上に負けイベントというステージまである。
ゲーム中でもキャラクターが喋りまくり、ストーリー演出にも力を入れているが、肝心のそのストーリーそのもの、キャラ造詣と世界観はどこか前時代的で今のニーズにフィットしているかどうかは「う〜ん……」となる。

はっきり書いてしまえば、キャラや世界観といったガワがちょっと興味を持ってる層に対する強いフックになっていないと思えた。

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「ギンガフォース」の裏側を描いた「ナツキクロニクル」では多少ビターな話運びをしているが、それがナツキクロニクルの強烈な魅力の一つに成り得ているかと言われれば、ちょっとむずかしい。

良作だけど「懐かしさ」に囚われている

初心者にとっつきやすいゲームシステムを用意した一方で、ビジュアルとストーリーテーリング面では開発側がやりたいことをやろうとした結果、初見に引っかかりにくいといった具合になっていまい、「新規獲得」という狙いと「やりたいこと」が噛み合ってなくて、ちぐはぐになってしまったのがナツキクロニクルだ。

良く言えば懐かしいとは言えるのだけれども。だけどその懐かしさが、令和の今に通じるかとなると、それはそれで疑問だ。
とはいえ肝心のシューティングゲームとしてのクオリティは高くて、丁寧に作り込まれているのが確かだ。

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ビジュアル面からどうにか新規の取っ掛かりを作ろうとしたのは、
メインビジュアルにヤスダスズヒトを起用した「カラドリウス」がある。被弾したら脱げるという変化球な攻め方。
正直、これもヒットしたとは言い難いけど。

この令和に2DSTGが求められているのか、どんなSTGが求められるのか。

あるいは2DSTGはその役目を終えて、ジャンルそのものがゲームオーバーになる運命なのか。

前述したように「ゲームに対しアナログに上達する」という遊び方は今流行りのダークソウルといった死にゲーにも通ずるものがある。その点から攻めていけば、STGというジャンルにもう一度光が差すチャンスもあるんじゃないだろうか。

だから、その古臭いノスタルジーに浸って自己満足するのはやめてくれ。

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