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アーマードコアネクサスという「破壊」に対する「清算」と「報い」の物語

もういくつ寝るとアーマードコア6の発売ですよ。前作「ヴァーディクトデイ(以下VD)」から10年。待ちに待ちわびました。

VDは「好きに生き、好きに死ぬ」ということがテーマのひとつでした。
一方でAC6のPVでは「ハンドラー・ウォルター」という人物が「お前に意味を与えてやる」と主人公に告げるという、「アイディンティティを他人から与えられる」というシーンがあります。
まるで前作との対比のように、「ハンドラー」と呼ばれる他人を管理・束縛する者から「意味」が与えられるというだけでも、とても重要なファクターとも思えます。このあたりは実際にプレイしてからのお楽しみですね。

また今年のRTA in Japan にはアーマードコアネクサスが選ばれましたしね。

というわけで、今回のお話はアーマードコアネクサスについてです。

「正のエネルギー」で突き進むアーマードコアの物語

アーマードコア人類は旧態の既存の存在を「破壊」することで、新しい世界へ「前進」するという物語を軸にしていました。
例えば初代ACなら人類を管理・束縛する存在「ネスト」を破壊することで現状打破を目指しました。
AC2は火星という新天地を巡る戦いを繰り広げました。
AC3では人類を管理する「管理者」を破壊し、その庇護からの脱却と地上という新天地を手に入れ、AC3サイレントラインでは誰も立ち入ることができなかった領域を踏破していくといった具合です。
ACⅤとVDでは、もうシンプルに自らに降りかかる火の粉を払っていったら、「俺なんかやっちゃいました?」的に立ちふさがる者すべてを焼き払っていた始末です。

ACfAでのオルカ旅団ルートでは、地球を封鎖する武装した衛星「アサルトセル」を破壊し宇宙へ進出できるようになったことを「成長と野心、正のエネルギー」と評しています。

そんな中でアーマードコア・ネクサスはシリーズの中でも異色な雰囲気のタイトルでした。

アーマードコアネクサスという「無為の物語」

ラストレイヴンポータブルに付属していた特典資料「AC CHRONICLE Art Works」に記載されていた年表ではサイレントラインからネクサスまでは50年の開きがあります。現実の体制や組織運営でも、かなり中だるみや停滞が深刻になっていることが想像できる年月の経過ですよね。

正直なところ、この頃のアーマードコアというタイトルも中だるみみたいなものがあったと、プレイしていて思えました。
熱システムやダブルトリガーといったシステムの刷新を試みてはいましたが、その作り込みが甘く、スピード感のある操作の爽快感やアセンブリの幅が損なわれていました。

こんな具合で色々と作り込みの甘いタイトルなんですが、それでも好きなんですよね、ネクサス。

それはこれまでのシリーズで主人公=プレイヤーが積み重ねてきたものへの「清算」と、その「清算」を甘受することしかできない「無為」の物語であると思えたからです。

AC3で地上に進出した人類はどうなったか。続編のサイレントラインでは飽きもせず戦争していました。
サイレントラインを踏破できた人類はどうなったか。続編のネクサスでは新資源を巡り、まだ戦争を続けていました。

結局、新しい世界を切り開くことができたとしても、やってることは舞台を変えての戦争戦争、また戦争なんですよね。
そういう意味では確かに、あの世界の人類は新しい世界にたどり着いたとしても、やるは変わらないという「停滞」が深刻なことになっていました。

ざっくり解説すると、あいも変わらずミラージュ、クレスト、キサラギの三大企業が開発と抗争に励んでいます。
その中でナービスという新参者が新資源発掘事業をひっさげて新規参入してくるところから、ネクサスの物語は始まります。

一方でキサラギはナービス周りの抗争には深く関わらず、完全に独自の思惑で動いています。まあ、ペットが静かにしている時ほどなんかやらかしてるのと同じなんですが。AMIDAとか。

新参者を快く思わないのは世の常で、早速ミラージュは新資源を巡ってナービスへの攻撃を開始。クレストもそれに追従し、ナービスの利権奪取を目論見ます。

ネクサスでは、とにかく企業の動きに稚拙さが目立ちます。

そもそもナービスの新資源発掘の裏には「旧世代の兵器の発掘」であることを見抜けず、ただ利権と新参潰しに目がくらんでいたミラージュ。
ミラージュの動向に焦りを見せて、支社と本社で内部分裂を起こしたクレスト。
ナービスに至っては掘り起こした旧文明の兵器を制御できなかった始末。

挙句、こいつら企業間監査組織の人間を殺してますからね。

一方でナービスに対し静観を決め込んでいたキサラギは、ナービスの本当の目的が新資源発掘なんてつまらんものではなく、旧文明の技術と兵器であったとわかった途端に動きを開始しますが、これもほとんど暴走みたいなもので、キサラギ上層部は研究部をどうにか止めようとしているんですよね。
もう泥沼の状況です。

また、レイヴンたちの動向も腐敗していました。
物語中盤で主人公の同期で、今回の顔役AC「オラクル」を駆るレイヴン「エヴァンジェ」をはじめとした多数のレイヴンが、アークの規約で禁止されている「企業との直接契約」をやらかしていたことが発覚。
ネクサスではこの「専属契約」という違反を多く見かけます。途中で敵対するアグラーヤは最初からレイヴンではなくクレスト専属AC乗りとされていますが、ジノーヴィーに関しては「お前よくそれでレイヴン名乗れるな」と言い訳できないくらいにクレストとべったりです。(ジノーヴィーがクレスト側にいたのも理由はありますが)
同時期にレイヴン斡旋組織であるアーク内部でもミラージュとの癒着が発覚し、レイヴンとレイヴンの管理組織がその腐敗ぶりを露呈します。

これに対しジャック・Oがアーク内部で政治的な立ち位置を確立すると、規約違反を犯したレイヴンたちとアーク内部の綱紀粛正を断行。これを機にアリーナのレイヴンたちの顔ぶれもがらりと変わり、オペレーターも交代となりまし。もしかして前任オペ子もやらかしてたんか?

実はここでジャック・Oはファインプレーを披露します。ミラージュの依頼を受託していた主人公に対し「お前は知りすぎた」と裏切り、主人公の始末を目論見ますが、このミラージュに対しジャックは報復を決行、ミラージュの砂漠の拠点を破壊し、結果的にミラージュを旧文明の兵器を巡る抗争から手を引かせるほどのダメージを与えています。
アーク内部と癒着していていたこともあって、ジャック・Oはミラージュに対しかなりご立腹だったとも思いますし、後のラストレイヴンでバーテックス結成を目論むパフォーマンスとも想像できますが。

旧文明の兵器を発掘し世界のトップに躍り出ようとしたものの、肝心の急性代兵器をまともに制御できなかったナービス。
そのナービスに強行的な態度を取り、利権を奪取しようとするミラージュ。
ミラージュに追随しようとするクレスト支社と損切で撤退を図るクレスト本社の内部分裂。
レイヴンとレイヴンズアークの腐敗。
キサラギ研究部の独断専行とそれを止められなかったキサラギ上層部。
それぞれの泥沼の愚行は、キサラギ研究部の暴走によって旧文明の兵器を起動させたことがトドメとなり、ついに世界の破滅へと繋がりました。

これだけの破滅的な悲壮さをさぞドラマティカルに繰り広げられるかとなりますが、そこはアーマードコアなので、淡々としています。
ネクサスのストーリーテーリングはメールとレポートでの文章による世界情勢の解説を読むだけなのですが、これが世界が崩壊に向かっていく有様を、ただただ眺めることしかできないどうしようもなさがあります。

企業という支配者は自業自得でボロボロに疲弊して誰も利益を得ていないし、世界が破滅へと突き進む中であっても、ミッション中のステージの空は突き抜けるくらい青いし、星野康太さんのサウンドは爽やかだし、世界が破滅へと向かう時は本当に淡々としていると思い知らされます。

そもそもネクサス以前からも、労働環境の改善を訴える労働者たちを依頼だからと薙ぎ払ってきたり、敵対企業の戦力をおびき寄せるために民間人を踏みにじってきたりと、そういった主人公=プレイヤーが行ってきた行為の積み重ねに対する「清算」でもあると思えるのです。
これまで現状を打破し、破壊し、突き進んできた最中で踏みにじってきたものに対する「報い」や「ツケ」でしょうか。

ジノーヴィーが自分たちレイヴンのことを「小さな存在」と言って捨てたように、ネクサスでの主人公の行いが世界に何らかの進歩や変化をもたらすということは、ついぞありません。最後のミッションで旧文明兵器の起動阻止を依頼されますが、それもほとんど悪あがきです。

誰も救われず、何も進歩もなく、世界が壊滅し、自分の意志や行為が何も世界に影響を及ぼすことはない。
主人公であるプレイヤーは何も為し得ることのない「小さな存在」のまま、
人類は人類の業の為に、 過去の人類の業に焼かれたとも考えられます。

3のDOVEやサイレントラインのIBISもガッカリだよ。

まあ次回作のラストレイヴンで、割りとしぶとく生き残って、また元気にまた戦争やってたんだけど。

ネクサスでの「無為」を踏まえた上で、次作のラストレイヴンでは、ただひたすらに「生き残るために戦う」というシンプルな物語になったのは、「ラストレイヴン」というタイトルにふさわしい「回帰」として、熱くさせるものがありました。

クソゲーだのなんだのと言われていますが、実際のところ確かに発熱システムや強化人間周り、ブレードホーミングの弱体化と色々と文句は尽きないのですが、「そのゲームが好き」であることとそれとこれとはあんまり関係ないものだと思うんですよ。

ですので、たまに旧作もプレイしたくなります。
新作の6が落ち着いたら、旧作をSteamあたりでプレイできるようにするとか期待したいところですね。




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