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個人のアイデオロジーと、会社のアイデオロジーを考える【7夜目 第2話(全3話)】

青山でデジタルプロダクションを営む5人の社長たちが、夜な夜なお酒を酌み交わしながらへべれけで語る、馬鹿馬鹿しい笑い話や熱いクリエイティブ論をゆるっと公開中。今回はzoom飲みでへべれけトークを開催しました。ぜひ第1話からお読みください。

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へべれけになったCEOおじさん
今村 玄紀(BEES/HONEY INC)美学を持て!オフライン希望おじさん。
加藤 琢磨(SHIFTBRAIN Inc.)色々ありました!オフライン希望おじさん。
定金 基(COPILOT Inc.)終日リモートで1日50歩!どちらでもおじさん。
田口 亮(FOURDIGIT Inc.)娘の部屋で飲酒!オンライン希望おじさん。
村田 健(SONICJAM Inc.)閉まらない扉!どちらでもおじさん。

田口
フォーデジットではみんなの不安とかが渦巻いて、身動きが取れなくなることに対する恐れみたいなものの方が強かった気がする。だからこうしようって言うべきだった感じはあります。最終的にみんなには「親の心配しろ」って言いましたね。トイレットペーパーもマスクも買えないけど、自己中心的な行動を取るんじゃなくて周りを心配しよう、と。正直なところ、美意識というよりも、今後の漠然とした不安の方が強かったと思います。

定金
今村さんは美意識の話を社内でやったの?

今村
いつもしています(笑)僕の理論で言うと、各人が自分の美意識について考えることが大事なので、僕の美意識がみんなの美意識ではない。今回のコロナにまつわることってゲーム理論に近くて、囚人のジレンマみたくなっていて、トイレットペーパーを買わない人が損する流れになっている。本当は買わなくてもいいとわかっていても、美意識がないと不安が勝っちゃうので抑制できないんですよね。

※囚人のジレンマ……ゲーム理論の代表例。各人が自分にとって一番魅力的な選択肢を選んだ結果、協力した時よりも悪い結果を招いてしまうこと。

不安に勝てるものって、座禅じゃないですか。自分の感情をコントロールできるところがないと、そういう判断ができないと思うんですよね。不安が勝っちゃって、マスク買っとかないと困るという流れが金融でも起きちゃう。経済を唯一抑制できるのは、美意識しかないと思ってます。冷静に感情をコントロールできないと。

定金
そんな社会になったらいいな〜。組織の美意識を基準にディスカッションをして、判断についての落としどころを決めるって話があったじゃない。そもそもどういう風にみんなの美意識を揃えているのか、すごく興味がある。

今村
スモールで集まって、この考え方だよって話すかな……例えばプロジェクトマネジメントで「こちらが悪くなかったとしても、自分ももっとこうできた」というのは美意識の問題で、未然にそれをサポートできたんじゃないかと考える。うちでは必ず、「自分の責任にしよう」って話しているんですよね。新入社員にも言っています。

定金
複数人で美意識の合意を取る方法は? チームや会社の美意識はここだよねって合意の取り方・納得のつけ方について。

今村
チームの作り方の話でもあるんですけど、共産主義ではうちの美意識はこう!と完全に独裁でやるじゃないですか。だけどティール型だと、みんなで美意識を探って民主主義的に決めていく。多数の意見があるときどうまとめるかですが、反対意見があるのもそれはそれでいいと思っていて。ただビズハニに関しては僕の独裁なので、守破離の守は教える。

※守破離……剣道や茶道などで、修業における段階を示したもの。「守」は、師や流派の教え、型、技を忠実に守り、確実に身につける段階。「破」は、他の師や流派の教えについても考え、良いものを取り入れ、心技を発展させる段階。「離」は、一つの流派から離れ、独自の新しいものを生み出し確立させる段階。

その後はもう自分で考えられる。そこまでが育成として、もう独裁と言われようが自分の知識は渡して、その後に自分で考えてどう落とし込むかは別なので。でも独裁と言いながら、ちゃんと聞きますよ(笑)

定金
そらそうだ(笑)守から破のフェーズに変わったかどうかは、どうやって判断するの?

今村
クライアントの信頼を得るのが大きな目安ですね。あと、周りのプロジェクトメンバーも、この人だったらいいなって思える状態、その人の独自判断で事柄がいい方向に進んでいく状態って「離」に入っている。

定金
ビズハニのリモート対応方法を決めるのは、今村さんが「離」の人と会話して決めたと思うんだけど、どうやって最終的な落としどころを見つけたの? 多数決?

今村
プロジェクトの提案する時も同じなんですけど、「僕の答えは決まってるけど、みんなに聞いて確認する」が近いですね。本当の独裁にならないために(笑)

定金
なるほどなー、面白い!

加藤
シフトブレインは正直言うとそこまで考えてなくて、世の中がこういう流れだからこそ、その中でどうするかが重点で。次のオリンピックに向けて準備しようとか、普段使ってなかったツールを勉強しようとか。根本的な本質を考える会社ではあるんですけども、どうにもならないことは前向きにシフトしようという考え方なんですね。
いまの状況に対してどういうスタンスで向き合うとか、美意識みたいな個人的な思考に会社はどこまで介入するべきなのかな? それぞれ尊重もするべきだし、自分もあんまり言わないけど、どうあるべきなのかなって最近すごく思うんですね。

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村田
東日本大震災の時もこんな話した気がするんだけど、家族が大事って人も、今こそきっちり仕事するべきって人もいる。天災のときは、情報発信しなきゃいけないからWeb更新仕事もある。実際にやってみるといろんな意見が出てくるし、やる前に議論するのはなかなか難しいなと。去年の台風もすごかったし、地震もいつ来るか分からないから、今回のリモートワークはいいトレーニングになるかなと思ってやっているところがあるかも。

加藤
世の中的に組織・会社はみんなを守るっていう認識はあるから、そういうのは伝えるべきだって分かるし安心感に繋がるんですけど、個人のどこまで足を踏み込んでいいのかは悩むんですよね。

今村
ちょっと、僕いっちゃっていいですか……! 画面共有しますね。

定金
すごい! 今村さん普段こんなに喋らないのに!(笑)

田口
あんなに嫌がってたのに、オンラインの方が喋るじゃないですか(笑)

定金
あの、うちの奥さんが聞きたいって言って隣にいるんですよね……。

定金妻
はじめまして〜〜!へべれけ、大ファンなんです!今度へべれけママ会やりませんか?(笑)

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定金
ちょっと何これ? 仕事!? デザイン フロム アイデオロジーって書いてある! あ、Awwwardsの?

※2020年1月23-24日に、アジア初として開催した世界最大級のウェブデザインアワード『Awwwards』によるカンファレンス『Awwwards Conference Tokyo』で今村さんは「ビズハニのブランディングレシピについて」をテーマに1セッションを担当した。

※アイデオロジー(ideology)…観念形態、思考傾向を指し、大きくは「立場においての考え方」。日本読みはドイツ語のideologieをもとにした「イデオロギー」が主流。ビズハニでは政治的主義と文化的主義の中間というニュアンスを加味する意と、アイデオロジー=美意識という社内の共通認識から、ギリシャ語のidea(空想、発想)とlogos(議論、学問)を語源とする英語の発音に近い「アイデオロジー」読みを採用している。

今村
社内のワークショップでもやっているんですけど、アーキタイプというユング心理学(分析心理学)の超基礎的な元型と呼ばれてるもので、12種類あるんです。

Innocent(純真な者)…Pure、Peace、Nostalgic
Explorer(探索者)…Freedom、Adventure、Curiosity(好奇心)
Sage(賢者)…Knowledge、Resercher
Hero(英雄)…Powerful、Strong
Outlaw(無法者)…Innovative、Breakthrough
Magician(魔術師)…Change、Transform
Every Person(普通の人)…Friendly、Collaborative
Lover(恋する者)…Passion、Romance
Jester(道化師)…Humour、Funny、Playful
Care Taker(世話役)…Kind、Caring
Creator(創造者)…Creative、Imaginative
Ruler(支配者)…Honor、Dignity

※12種類の型とそれぞれのキーワード

アイデオロジーは個人の性格に紐づいているなと思っていて、僕は「Ruler」に「Outlaw」がちょっと入っている感じなんですけど、みんなをコントロールしたいんです。だから独裁色が強くなるんですけど、Every Personだとコラボレーターに、Jesterはこんな時だからこそ楽しもうといった傾向がでる。
どれがいいとか間違ってるとかなわけじゃなくて、ワークショップでも「まず社長の性格を知ろう」って話をするんです。健さんからは「Explorer」とか「Jesper」、定金さんからは「Sage」がベースなんだけど「Outlaw」ちょっと入ってる、とか感じるんですよね。

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定金
自分のを聞いてみたいけど、隣で奥さんが聞いてるのあれだな……(笑)これってどうやって診断すんの?

今村
感覚です。

定金
ストレングスファインダーに近い感じ?

※アメリカのギャラップ社が開発した、人の「強みの元=才能」を見つけ出すツール。個人の才能・傾向を34の資質として分類する。

今村
近いというか、ストレングスファインダーの原型なんです。スタッフの性格と社長の性格って全然違うし、僕らクリエイティブの会社の性格もそれぞれ違う。それをまずお互いが認識合わせしないと、何を最優先にして意思決定するのかが分からないので、ずれちゃうよねって話を最初にします。さっきの美意識は、12種類の中のどれでも正解だけど、良くないのは「どれも」って状態で、自分の性格はこれだから、こう生きると宣言しちゃった方が、社員からしても関わる人からしても分かりやすい。俺はこれとこれとこれの配合でこういうことが好きだよっていうのを言います。

定金
へ〜、面白い。この資料ちょうだい! あ、スティーブ・ジョブズでてきた。

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今村
そうそう、こうやってパーセントで分けるんですよ。例えばジョブズはアウトローが強いですよね。デザイントーンも、実は全部その人の性格に影響されてきている。

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これはジョブズ時代のアップルのデザイントーンですけど、CEOがティム・クックになってから、トーンが変わってきている。そうするとアップル自体の色が変わる。後継者って能力よりも、ここの感覚があってないとなれないんです。そして、時代がかぶっていないと、同じ思考にならないんですよね。それこそホール・アース・カタログとか、WIREDの創刊とか。

定金
ジョブズ時代のビジュアルにミュージシャンが多いのも特徴だよね。象徴的じゃん、聞いてる音楽とかさ。

今村
こういった「好き」を僕は美意識って呼んでるんですけど、美意識をどのようにして揃えるのかというところに話を戻すと、細かい主義の違いは出てくるけど、大枠が同じの中での違いなんで基本的には大丈夫になる。
……めっちゃ喋っちゃいましたね。今日はもう大丈夫?(笑)

定金
「これ好きだぜ」って言うの難しくないですか? 今村さんの他に、普段から言ってるって人は? は〜い!

一同
……う〜〜〜〜〜〜〜ん?

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定金
やりたい仕事の種類とか、こういうクライアントとかこういう仕事はやりたくねえっていうのは個人的な観点としてすっっっげえ言う。ソーシャルインパクトみたいなものを考えてないクライアントのサポートは絶対にやりたくない。それで潰れる会社なら社会に必要とされていない、ぐらいのことは言うけど、逆にそれ以外は言わないかなあ。

今村
ああ、それも近いですね。だから定金さんはティール組織にあってるんですよ。ティール組織ってビジョン共有じゃなくて価値観共有に近い。主義の最終地点は宗教で、何を信じるかの美意識の塊なので。

定金
なるほどね。じゃあ今村さんとしては、さっきの加藤さんの「個人の思想に会社はどこまで介入するか」って話にはどういう回答なの?

田口
介入するというか、そもそも思想が近い人を選びたいって感じだよね?

今村
その通りです。思想と主義って違うけど、思想ってこう思ってるってことで、「好き」とはとはまた違うんですよね。で、シフトブレインにいる人はシフトブレインが好きで入ってるから、全ての行動はシフトブレインっぽさは出てくる。なので、そう言う意味では僕は「思想には介入しない」。でも、好き嫌いはどんどん言ってく。声高に嫌なことと好きなことを言うことが、実は社員にとって一番分かりやすい。そこがブレてなければ何やってもいいって言うのが一番いいかなと。

加藤
行動指針に近いのかな?

今村
コンピテンシー(高業績者の行動特性)はバリュープロポジション(価値提供)に近くて、お客さんが喜んでくれる価値を提供していることを行動指針にしましょうっていうのはありだと思ってて、それは企業ワークフロー分析で出すんですけど。

定金
ほ〜、それ面白い、すごく面白いな〜!

今村
さっきの主義とコンピテンシーの違いは需要と供給なんです。ニーズに対してマッチしてるものは、コンピテンシーになる。でも好きなものってコンピテンシーにならない時がある。

定金
コンピテンシーをそう言い換える人って、なかなかいないと思うよ!?

今村
結果的にその世界観をお客さんが気に入ってくれて買ってくれる。Apple製品を買う人って、ジョブズの思想が好きで買ってると思うんです。パタゴニアとかもそうですけど、うちはこうだよって宣言しているところには、信者がつく。コンピテンシーとさっきの性格とマーケティング的にどう攻めるかっていう視点と、お客さんが何を望んでいるのかを包括的に見てアイデオロジーを出しています。事業が変われば行動指針も変わっていくけど、主義は変わらないと言うか、アップデートしていく。哲学寄りの本を読むともう既に理解している人たちがいて、ショックを受けたんですよね。先人たちはもうすでに、分かっている。

自分の主義を分かった時点で初めて、自分を理解できていることに気づくので、そこがスタートですよね。そこが守破離の「破」とか「離」にいけるポイントで、僕はジェネレーション的に皆さんと一世代違うからこういう思考になった。すなわち時代がこういう思考にさせたと思うと、実は僕の性格ってロボット的に誰かに作られたものなのかなと。だけど俺はこれが好きと言い出すとロボットから離れて、自分の主義主張で生きていけるようになる。その状態にするのが教育で、自分がプログラミングされた上でもこれ好きだよって言えることが大事だと思う。

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第3話につづく……!

話を聞いた人
八木 あゆみ(Facebook)巣篭もりで歩き方を忘れたディレクター/ライター。
絵を描いた人
仲村 直(Tumblr)肝臓いたわり型イラストレーターおじさん。

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