見出し画像

障がい者支援が特別ではなくなる社会

 西村知恵さんは、ジャズの100年を超す歴史をしっかりと伝承しているオーセンティックなシンガーなのですが、ジャズという衣装を纏った「愛を表現」する人だと思っています。
 その活動は幅広いのですが、VIRTUAL SILENCE のような極度に尖った領域であってもその奥にはしっかり「愛」があります。かなり対称的になる領域で全面的に愛を表現されるのが例えば2月11日、川崎市国際交流センターで行われた Dreamweaver Live 2025。 NPO法人あいけあさん主催で、「医療ケアの必要な障害の重い人たち」の前での、綿密に周到に準備はされたのでしょうがそれはあまり表に出さない、ただただ気軽にジャズを楽しめる1時間強の崇高な時間を、いつものように全身全霊で演出されました。

 実はこのイベント、昨年も参加させていただいたのですが、昨年は、こんなに温かい場なのだというただただの衝撃であったのが、今回はそんな衝撃はあまりない、極めて「自然」な時間の流れに、逆に驚きを感じました。例えば昨年は幾分の「慣れ」の後で体が動き始める人々、それが今年は当たり前かのように最初から踊りだす人々。国際交流センターのホールの壁が、昨年は幾分の「保護壁」でもありその中で特別に温かい時間が流れたのが、今年は特別な保護すら感じさせない、ごく自然な空間での温かさへの変貌。

 個人的な話で語弊を生むものであれば申し訳ありませんが、私自身いいトシにもなれば多少の問題は抱え、実は今でも定期的に築地の国立がんセンターで検査を受ける身です。いや、そこの患者さんの中ではたぶん最も軽微な立場なのでしょうが、それでも手術を受ける前後その他、一時はかなり真っ暗になりました。そして、その病院の高度な医療体制に安心でき、病院の外壁がまさに「保護壁」となって中の空間が特別なものとなりました。そこで、その後、医療の継続で「特別ではなくなっていく」その経過で受けた新たな感銘はずっと忘れられるものではありません。
「特別なものから特別でもなくなっていく」

「障がい者支援」って大変難しいもので、言葉に出すとどこかで余計なことになりそうで怖いのですが、それでも「自然さ」は関係される方々の共通の方向性ではないかと思います。実践されている方々にただただ敬意を込めまして。
 西村知恵さん(VO)
 天野丘さん(g)
 高木慎二さん(SS)
 NPO法人あいけあの皆様

 当日の第一発目の「愛」です。


いいなと思ったら応援しよう!