ベトナムとマレーシアで「おいしいコーヒー」に取り憑かれた二人のチャレンジャー
「このコーヒーの香り、すっごいですね!芳醇なワインの香りがプンプンに伝わり、力強く・・・」
田中(仮名)は抑えられない気持ちを絞り出すかのように店主さんに伝える。目の前には店主さんが勧めた一杯のアイスコーヒー。
そしてアイスコーヒーの横には店主さんからいただいた一枚のメモ。陽気なベトナム人を感じさせる人物の、その奥から垣間見える「おいしいコーヒー」に向けられた執念。
田中の視線は移ろい始め、ベトナムの高地にあるコーヒー農園に飛んでいくのがわかった。約900Mの高地の朝はいくぶんひんやりとしていて気持ちが爽やかになる。ラムドン省パオロク。ホーチミンから車で6時間程度の距離だ。周りは完熟したコーヒーチェリーが一杯に実っている。今日もこれからパートさん大勢での収穫作業と、農園主トイさんの厳しい指示の下、丁寧な選別作業が行われる・・・
田中の意識は、東京国立のCAFE「THE MIDFLOW」に戻り、再び手元のメモに目を通す。「品種=ロブスタ」「精製方法=ワイニーナチュラル」。そうか、このワインの芳醇な香りは、TOIさんが試行錯誤の上で作り出した手法、完熟豆へのこだわりと、時間をかけた乾燥までの発酵から生み出されるんだ!コーヒーチェリーだって立派なフルーツ。特に浅煎りのコーヒーからは様々なフルーツの香りが漂うが、ここまでの濃厚なワインの香りは初めてだ。しかも品種はロブスタ。従来は「缶コーヒー、インスタントコーヒーに専ら使われる安価なコーヒー」といった世間の評価を覆す画期的な「ファインロブスタ」。TOIさんの熱い気持ちはエアコンの効いたMIDFLOWの部屋の中でも、外気の暑さ以上の迫力で田中に迫ってくる。
そうか、これはMIDFLOWさんが特別に仕入れたベトナム産の焙煎機の熱い響きか!?肉厚のロブスタ種の旨味を最大限抽出できるようなしっかりとした焙煎機。
実は田中は9月末頃にホーチミンを訪問する予定でいる。これからラムドン省パオロクの日程を組み入れることはできないか?片道6時間以上。短い日程の中では無理だ。せめて、間接的でもいいから、今回はホーチミンで、TOIさんの農園「FUTURE COFFEE FARM」のコーヒーを飲めるCAFEを探し、バリスタさん他、できればお客さんとも会話してみて、TOIさんの気持ちを共有してみたい。フィンロブスタはまだまだ日本では認知がかなり限られているが、FUTURE COFFEE FARMのような農園さん、例えばMIDFLOW のようなCAFE,その他大勢のヒトが関わり、徐々に大きな流れになっている空気を感じる。そんな過程のヒトこまフタこまを少しでも残してみたい。田中は田中で夢は広がる。店を出る田中の元には、その日いただいたアイスコーヒーの豆「ワイニーナチュラル」と、少し精製を変えた「ワイニーハニー」の、2種類の豆。「ハニー精法」による微妙な味の違いを、家で様々な淹れ方で自分の好みを試してみると、更にTOIさんの気持ちに近づけるかもしれない。
田中はベトナムの後でマレーシアにも訪問する。こちらは計画が先行している。マレーシアで、地場で国際的な評価が低い「リベリカ種」を、単身Specialty Coffee のレベルに引き上げた農園「MY RIBERICA」の Jason Liew 氏に会うことができる!
片やベトナムで地場のロブスタ種を、片やマレーシアで地場のリベリカ種を、それぞれ国際レベルのトップブランドに引き上げようとするその熱意。
ほぼ類似ではないかと推測される。Toi Nguyen さんvs Jason Liew さん。
二人の物語は、それぞれの国と第三国である例えば日本を繋ぎ、確かな未来に繋ぐ架け橋になるのは間違いない。田中の夢は更に膨らんでいく。
THE MIDFLOW
FUTURE COFFEE FARM
MY LIBERICA COFFEE
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