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天の尾《アマノオ》 第11話 ――『ポポラが仮にポーション作ったらポポポーションと呼ぶべきなのかとふと思った』――
★★★
「……うん、ありがとうナワトお兄ちゃん」
ポポラは一瞬目を伏せ、焚火を回ってそそくさと俺の横にやってくると、極々自然な動作にておもむろに黒く艶消しをされたナイフを取り出した。
オイ待てや。
「よいしょ」
一つ大きく鼓動を跳ねさせる俺をよそに彼女はナイフを逆手に持ち――自分の掌を切り裂いた。途端にボタボタと落ちる血液。
ビシャン
事態の連続に何ていえばいいのかわからずに無言を貫く俺の右足を取ると、ポポラはその傷口に勢いよく自らの傷口を合わせた。いてぇ!
「《体力の半分を捧げる》」
――Cure-Magic《ポポール》――
彼女の手と俺の右足の膝の傷口が合わさった場所、その間から眩い光が漏れ……それが収まった時には激痛は嘘のように引いていた。手が離されると、血で汚れて見にくいが確かに傷口も消えている。
「おお凄い。本当に一瞬で痛みが消えた」
「ハァ……ハァ……、これで、ふぅ、これでよし。わかっていたけど、少し、きついね」
足を目の前に持ち上げてみたり傷があった箇所を右肘でつついてみたりする俺の横で、ポポラが地面に手を突き肩で息をしていた。今の魔法で体力の半分を使ったらしいから、無理もないだろう。一瞬の内に超労働をこなした、みたいな感じなのだろうか? 知る由もないが。
少し間を置くと、彼女はまだ微妙に息を切らしたまま、手に持つ布で俺の足の血を拭ってくれた。
「ポポラ、大丈夫か?」
「平気平気、レプティ……毒槍レプティリアの……はぁ、毒を抜くにしては、……うぅ、楽な対価だよ……。何度も言うけど、ふぅ、ボクが悪いんだし」
「もう気にすんな」
毒槍レプティリア……あの槍の正式名称だろう。レプティは愛称か。
更に数分して完全に持ち直したのか、ポポラはテント横の水瓶から木の器(俺がガードに使ったのとは別物)に取ってきた水を飲みながら、改めて焚火を挟んだ対角線に座った。
焚火越しに互いの姿を夜の空間を視界に収め、無言の時間が暫し過ぎる。
その間ちびちびと水を飲んではチラチラと空を見上げソワソワしていたポポラだったが、何回目かに器を傾けた後、おずおずといった様子で口を開いた。
「……ナワトお兄ちゃん、ボクの話を聞いてくれる?」
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