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天の尾《アマノオ》 第9話 ――『位階』――
★★★
「何なんだ、そのカテンノセンセキって言うのは」
「火天の鮮赤。天の尾における、強さの指標みたいなものだよ」
昼間には言ってなかったけど、と前置きをしてからポポラが説明を始めてくれた。
無地の泥色《デイショク》
曇天の濁色《ダクショク》
樹海の鮮緑《センリョク》
水天の鮮青《センセイ》
火天の鮮赤《センセキ》
至天の彩《イロドリ》
天の尾《アマノオ》には強さを示す位階があり、その上から二番目。それが火天の鮮赤、らしい。なるほど。
「へえー、そうなのか……それどうやったらわかるんだ?」
「樹海の鮮緑《センリョク》から上の位階は、戦闘時に一部が対応した色に光るんだよ。ナワトお兄ちゃんが見たムカデさんは目が赤かったでしょう?」
確かに異様に光り輝いていたな。あれは元々そういうものだと思ってたが違うのか。
「じゃあポポラはその樹海の鮮緑《センリョク》ってやつなのか。飛ばした槍は緑に光っていたような。レプティだっけ」
「あはは、違う違う。ボクの位階は曇天の濁色《ダクショク》。まだまだ光るレベルじゃないよ。レプティは先端の緑淵玉《リョクエンギョク》が元々そういう色だったってこと、あとあれは光ってたんじゃなくて月明りの反射だね。まあ、」
ナワトお兄ちゃんを上手く殺せてたら、ボクも位階が上がってたかもしれないんだけどね。
物騒なことを口走るポポラの口調に、悪気がないように聞こえるのは良いことなのかなんなのか。あー聞こえない聞こえない。
「そういえば、ポポラが俺のことを火天の鮮赤って呼ぶってことは、俺もさっき身体のどっかが赤かったのか」
自分じゃ全然わからんかったぞ。
「ううん、別にどこも光ってなかったよ。でも天の尾が定める『決闘』では、基本的に実力差が小さい同ランク同士での戦闘しか起こらないんだ。極々稀に、実力が近ければ泥色と濁色同士、濁色と鮮緑同士とかの位階を跨ぐ決闘が行われることもあるらしいけど、ボクも伝聞でしか聞いたことがない。だから、ナワトお兄ちゃんはほぼ間違いなく、火天の鮮赤だよ。光に関しては、光るときと光らないときがあるらしいから」
どうも戦闘が激しくなればなるほど光るとか。
え、さっきの戦闘は激しくなかった判定だったのか。だいぶ危なかった気もするんだが。
「でもそれじゃ俺とあのムカデ野郎の実力が近いって話になっちゃうぞ」
冗談じゃない。
勝てる勝てないとかいう話じゃなく、まず攻撃が通るかも怪しい。素手じゃ無理だろう。一方向こうの攻撃は俺のスピードとパワーを悠々と上回っていて、それは俺が成すすべもなく野郎に両手をちょん切られていることからも歴然としている。一体どこが同ランクだ。
見るとポポラもかくりと首を横に傾げていた。
「うーん、それは……」
うんうんと唸っている。
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