タウリン含有量
薬局へ行くと、入口のドリンク剤が並べられているコーナーが目に入る。いろいろな種類のドリンク剤が山積みになっているのを見た途端、なぜか急に体がだるくなったような気分になる。
さっきまで何ともなかったのにドリンク剤を見たがために体がだるくなるのは私だけではないはずだ。だから薬局側もそれを解っていて薬局の入口にドリンク剤のコーナーを設け、客に自分の体が本当はだるいのだという自覚を促す優しい心配りができているのである。
有難いことである。
病は気から。なんて言葉があるが、気持ちの持ちようで病にもなり元気にもなるってことを考えると、ドリンク剤を見たとたんに「そういえば俺疲れてるかも」とついつい思ってしまう。
とにかくこのときはドリンク剤を見た途端に体がだるくなったので、ヨロヨロと近寄りナントカドリンクを手にし「これがいいかナ」、また別のドリンク剤を手にして「こっちがいいかナ」などと迷い、マゴマゴしていると店員が近寄ってきていろいろとドリンク剤ごとにこまごまと説明してくれる。
多少の有難迷惑さを感じながら、「フムフム」と聞いているふりをするが、何しろ体がだるいので店員の細かい説明など全く頭に入ってこない。ただ一つだけ「タウリン」とかいう成分の含有量が多いほど疲労回復効果が大きいということだけは頭に入ってきた。
それぞれのドリンク剤をよく見てみると「タウリン1000㎎」とか「タウリン3000㎎」とか表示されている。
「タウリン」含有量が多いものほど値段も高くなる。
なるほど「タウリン」が効能を左右するのに違いないのだ。
同じ銘柄のドリンク剤でも「タウリン」の含有量によって値段も違ってくるのだ。
今私は体がだるい。
当然「タウリン」含有量の多いものを購入したい。
しかし「タウリン」含有量が多いものほど値段は高くなる。
よくよく考えてみると店に入る前まで体がだるいという認識があったわけではない。
ドリンク剤コーナーを見たことで体がだるいとつい思ってしまったことに気付く。
しかし現在私はどういう理由であろうと体がだるいのは確かではある。
本当にだるいのかな?
だんだんと疑問が湧いてくる。だるいのかだるくないのか。まただるいとしてどの程度だるいのか。だるさの程度により「タウリン」含有量も考慮せねばなるまい。当然値段も考慮に入れねばならない。難しい選択を迫られている。
ドリンク剤をじっと見つめながらそんなことを考えているうちに視界は暗くなりめまいがし、額・背中からは汗がにじみ、足元はふらつき、意識は朦朧となり思考が止まる。結局迷っているうちに確実に体がだるくなってきている。原因はドリンク剤を見たことでだるいという認識とだるいことの現実性の有無について逡巡することによる。
結局タウリン2000mgのドリンク剤を購入した。
嗚呼、ドリンク剤…