自転車散歩
歳を取ると、あまたの場面に出くわしていろいろな思い出が残るものだが、都合の悪いことは消去され、あるいは書き換えられることになっている。以前にも書いたかもしれないが、思い出が美しいのはこのためだ。
小学校一年生になるころには、すでに補助輪を外して自転車を乗り回していた。この自転車がいつのころからあったのか全く憶えがないが、私の誕生祝か何かで少し裕福な親戚からいただいたものだったようなことを親から聞いた覚えがある。
この自転車のおかげで小学校低学年の子供にしては行動範囲が広かったのではないかと思う。まだ校区外に子供だけで出てはいけないなどという校則などなかった時代。梅田川辺りまでは普通に自転車を漕いで遊びに行っていた。家に帰るころにはすっかり日が暮れていた。なんてこともあった。
歳を取ったせいも手伝ってか、当時のことをよく思い出す。
今現在でも自転車散歩が好きなのは子供の頃からの体験が影響しているのは間違いない。
6年生の時に同級生の一人が変速機の付いた自転車に乗っていて、この時初めて変速機というものの存在を知った。以来、変速機付きの自転車が欲しくて欲しくて夢にまで見るようになっていたが、近所の遊び友達が次々と変速機付きの自転車に乗り換えていく中、高校に入るまでついにその希望がかなうことはなかった。高校生になると発情期に突入し、自転車どころではなくなり、その後、社会人となり、いろいろあって「こりゃどうも結婚できそうにないな」と悟った四十代半ばマウンテンバイクというものがあると知った時、杉山町の田舎道でも楽しく漕ぐことのできる自転車はこれしかないと乗り始めたのが現在まで続いている。
去年新しい自転車に買い替えて少々カラーリングが派手目だが、ますます楽しく漕いでいる。左半身の痛みも自転車を漕いでいるときは、歩いているときより和らいでいるのが有難い。
あと何年乗れるか判らないが、子供の頃に欲しくて欲しくて夢かなわなかった変速機の付いた自転車に乗る喜びを今かみしめているといったところか。
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