【ウェビナーノウハウ】視聴者の1/4がサービスを活用したくなる、ウェビナーモデレーション/ファシリテーションの方法とは
コロナ禍に突入した直後の2020年5月から、手弁当でウェビナーを立ち上げ、その後全社の企画として発展し、約3年で通算40回以上の担当をしてきました
会社としては大きく6つのテーマがあるなかで、私は新規事業×デジタルのテーマリーダーとして、コンテンツの設計から当日のモデレートまでをメインで務めていました
そこで今回は、ウェビナーのコンテンツ設計からモデレーションのノウハウにフォーカスを当てて書きたいと思います
ウェビナーの特徴
まずはじめに、現職におけるウェビナーの特徴に関して、シンプルにお伝えしたいと思います
現職のサーキュレーションは、プロシェアリングという事業を展開しており、高度スキルや豊富な知見・経験のある独立したプロフェッショナルを業務委託で活用いただけるサービスを展開しており、2023年7月現在で、20,000名以上もの"プロ人材"にご登録をいただいています
ウェビナーは、このプロ人材が持つノウハウを、事例とともにテーマに沿ってお話しいただく内容になっており、他社と比較しても特徴的なのが、
「ノウハウを全てスライドに落とし、スライドベースで話を進めていく」
というもので、
ここまで手の込んだウェビナーを実施している企業は他にはない、競合優位性のあるウェビナーだと思います
オフィスをスタジオ化し、お昼の時間を使って生配信なので、スライドベースで話をするとはいえ、ライブ感満載のウェビナーです
モデレーター/ファシリテーターが目指すべきゴール
「満足度を高める」だけだと落とし穴にハマりがち
ウェビナーの視聴後にアンケートを依頼しているケースが殆どだと思いますが、ついやってしまいがちな間違いが、"視聴者(アンケート回答者)を分母にした満足度を安直に追ってしまう"、つまり、目的と手段を履き違えてしまいやすいということです
視聴者の方々に満足いただくことは、ウェビナーを実施する側としては、大前提目指すべき目標ですし、ここの力を抜くのは、もってのほかです
ですが、ウェビナー実施の目的は、視聴者の方から、ただ「良かった」という声を集めることでしょうか?
ウェビナーの目的はリード獲得であり、マーケティングファネルにおける階層ステップの、リードナーチャリングとしての施策であることが殆どだと思います
言われてみれば、そんなことは当たり前な話ですが、抽象度を上げた構造的な問題として指摘するならば、組織のサイロ化による個別最適の問題と同様で、ウェビナーの企画から実施、リードの獲得までのフローにおいて、役割が分かれている場合、この個別最適の問題は往々にして起こります(企画から全てを一人で実施しているケースの方が、少人数のスタートアップを除いては、少ないと思います)
モデレート/ファシリテートの役割に特化している場合は、ウェビナーの本番部分を担うことや、"視聴者からのアンケート内容がダイレクトに分かりやすい"という状況もあり、
「視聴者の良かった」という声を聞くことだけに満足してしまいがちです
さらに、登壇者や周囲の関係者も含めて、辛辣なフィードバックをしてくれる方はなかなかおらず、つい本番が終了したことの達成感で高揚してしまうので、この落とし穴にハマりやすい状況が周到に用意されてしまいます
1開催でROIを判断してしまう、もう一つの落とし穴
ここで少し話がズレてしまいますがもう一つ、ウェビナーの落とし穴ですが、リード獲得という施策の効果を、1開催あたりでROIを測定してしまいがちです
もし、見積もり提示や契約決定など、さらにファネルの深いKPIをROIの指標として設定している場合は、さらに難易度が高まりますが、ウェビナーはリードナーチャリングとして活用すべき、と考えるのが妥当で、その場合、1開催に閉じた効果測定をしていると、大抵「投資対効果がないので辞めよう」となります
ご自身が視聴者の立場で冷静に考えてみれば分かるはずですが、一度ウェビナーを見たからその商品/サービスを買おう、とはならないハズです
(そもそもウェビナーはBtoB商材向けの施策で、toC向けならいわゆるテレビショッピングですよね)
当然、1開催でリード獲得につながるケースもありますが、そのリードがそのまま、見積もり提示→契約まで、一気に進むケースは、肌感ですが、1%もあれば十分ではないでしょうか?
仮に1%だとした場合は、広告運用費と人件費の単純計算で、ROIがマイナスになることは、想像に容易いかと思います
つまり、そもそもウェビナー自体は、半年・1年以上など、中期的なスパンでROIを測る施策であり、その思想をベースとした規格が必要です
だからこそ、前述した通り、モデレーターは、1開催あたりの顧客満足度だけをゴールにしてしまうと、尚更落とし穴にハマってしまいやすくなります
この辺りの話や、ナーチャリング施策としての効果発揮・測定方法などは、マーケティングのテクニカルな話になってしまいますので、その関連は、弊社のマーケティング部長が記載しているウェビナーノウハウの記事を参照していただければと思います
目指すべきゴールは視聴者の「なるほど!試してみよう!」→結果「やっぱり難しいから、話を聞こう」という心理変化
前段が長くなりましたが、モデレーター/ファシリテーターが目指すべきゴールは2ステップの心理変化が起こることであり、⑴視聴後には、「なるほど!試してみよう!」つまり、視聴者に情報やノウハウとしての気付きを得たと思ってもらうこと、⑵実際に試していただいて、改めてその難しさに気付いていただくこと、だと筆者は考えています
フリーミアムモデルを採用するSaaSなどのデジタルプロダクトの場合は、⑴の時点でアカウント登録に進みやすく、利用いただいてからマネタイズをしていく流れを狙うかと思いますが、この場合も、まずは試してみる→試した結果もっとちゃんと使いたい、という心理変化をファネルに埋め込んでいると思います
プロダクトやサービスが何にせよ、セールスの商談を通じて契約を進めるプロセスを踏む場合は、先の心理変化を狙うことがマッチするのではないでしょうか?
顧客の心理変化を生む方法
そもそも顧客は誰か?というペルソナの設定等の話が、この前提として必要ですが、ここではモデレート/ファシリテートにフォーカスをします
ノウハウは、包み隠さずさらけ出す
ビジネスというのは、当然ソリューション ≒ 課題の解決ノウハウによって価値提供をしているケースが殆どだと思いますが、そのノウハウとは一方で企業や個人にとっての重要な競合優位性を生むアセットだと思います
そのため、「盗まれたら売れなくなってしまう!」という不安に駆られてしまい、結果的にコンテンツの抽象度が高くなりすぎて、視聴者に伝わらない、というケースが往々にして起こりがちです
でも安心してください
ノウハウをコンテンツとして提供しただけで盗まれて価値が無くなってしまうレベルのものは、もう恐らくウェブ上に無料でいくらでも転がってますし、もし本当にそうなら、別の大きな問題があります
というか、もはや経営課題です
(※当たり前ですが、知財や特許・特殊技術やアルゴリズム、また一定以上の詳細なノウハウをサロン型のコミュニティで提供するというビジネスもありますので、知っているだけで価値を生んでしまうような機密情報は除きます)
分かりやすく表現するならば、書籍を参考に実践してみて、本当に成果に繋げられるケースがどの程度あるのか?という話です
本を読んだだけで実践できる方もいらっしゃると思いますが、それでも成果に繋げるためには、自身のケースに当てはめて試行錯誤しているのではないでしょうか?
課題解決ノウハウは、実際には多数の影響因子によって、ケースバイケースでの応用が必要なハズですし、この応用こそが本当の意味での価値でありアセットであるハズです
SaaSなどのデジタルプロダクトだとしても、使い方によってその効果を何倍にも引き出す方法があるのではないでしょうか?(だからこそ、CSのプライオリティが高くなりますよね)
ですので、ノウハウは包み隠さず、ふんだんにさらけ出してコンテンツ化しましょう
様々な角度から具体的なケースを持ち出して、スピーカーを唸らせる質問をする
スピーカーの方は、どうしたら視聴者に伝わるのか?を常に意識して、表現方法や言葉選びに頭をフル回転させながら話されると思います
一方で、スピーカーの方の実力云々の話ではなく、そもそも伝わりやすさと抽象度は、一定の相関関係にあると考えます
これは、1対Nの場であればなおさらですし、1対1でも、「それはXXです。何故ならXX、例えばXX」という話し方をしますよね?
結論から伝える、というのは、そもそも相手に伝わりやすくするための技法であると考えます
1対Nを前提としたウェビナーの場合、伝わりやすさを優先する必要があるため、どうしても話の抽象度が高まりやすく、そのために視聴者の方が自分ごとにならない状況が発生しやすい、という特徴があります
質問コーナーがあるから大丈夫、というケースもあるかもしれませんが、それでも時間は限られますし、後になって質問が湧いてきたけど時すでに遅し、ということも想定されます
私個人としては、特にここがモデレーター/ファシリテーターの腕の見せ所だと思っており、投影資料に記載がないが、スピーカーの方が「おっ!」「うっ!」となる、別の角度からの質問をすることが重要だと思っています
これは、スピーカーの方を困らせて楽しむ、ということではなく、視聴者の方に「そうそう!それが聞きたかったんだよ!」と感じていただくことを目的にした質問です
例えば、私がよく使うのは、「あえて批判的な一般論を投げかけて、質問を深ぼる」というものです
セリフとしては、(スピーカーの話を前提肯定しつつ)「確かに、仰っていることはとても重要だと思いますが、[ そんなことは分かっちゃいるけど出来ないケースの方が多い / 理論としてはそうだが、実際にはXXな状況があって難しい ]、という声をよく聞きます。これは何が原因なんでしょうか?」
さらに加えて、事前の打ち合わせでスピーカーの方がポロっと言っていた一言や話(かつ、投影資料に載らない・当日話をしていない内容)を添えてつっこんで聞いてみる
というのも、よく実践していました
その時に、スピーカーの方が、「これ言っていいのか微妙なんだけど、でもそれはこういうことだよ!(ポジティブに)」という反応をしてくれた時、良い意味でギクッと汗を流した時、または「まさにそうなんだよ!」とグッと前のめりになって言葉のテンションが高まった時、私はめちゃくちゃ良い質問ができた!と心の中で思っていました
(際どい質問をされて、辛いと思ったスピーカーの方がいらっしゃったら、大変申し訳ありません:でも懲りずにまた話させてください)
結局重要なのは、問題/課題共感と解決策の提示
これはマーケティングにおいてもセールスにおいても、引いてはビジネスそのものにおいてもそうですが、
問題/課題に共感していただき、その解決策を提示することを、どれだけ研ぎ澄ませるのか?がキーポイントだと考えています
実際に弊社で実施しているウェビナーのコンテンツは、ある程度フォーマット化されており、大きく3つのステップで構成されています(自社紹介やQ&A等除く)
ToBeを提示し、AsIsを認識させ、Gapへの意識を高める:今世の中はこうなっているよ、だから早くこういうToBeに向かう必要がありますよ(あなたはのAsIsと比較した場合のGapはどうですか?課題だと認識しているから今日来ていただいてますよね?というメッセージング)
事例によって課題に共感していただく:実際にこんな課題があり、それを乗り越えるためにこんな障壁に阻まれていました/問題を抱えていましたが、こう解決していきました(「まさにそんな問題を今抱えている」と共感してもらいたい、かつ、その問題は解決できるものという希望をいただいていただきたい)
具体的な解決策(ノウハウ)の提示:ステップ論やポイントで伝える、または共通の落とし穴をポイントとして紹介し、それを解決する術を伝える(「なるほど、そうやってやれば良いのか、そこに気をつければ良いのか、試してみよう」と感じていただきたい)
毎回スライドがかなり作り込まれているので、良ければ実際のウェビナーを参考にしていただければと思います
全ては事前準備
テレビ番組での有名人のインタビューや報道を除けば、当日に手元に来た原稿や資料を読んでモデレート/ファシリテートするのは私はNGだと思います
モデレート/ファシリテートを効果的に実施するための一番のポイントは、事前打ち合わせにあります
著名な方であれば、Web上にも様々な記事や著書があるため、事前情報として取得できますが、それは、他の方も調べればわかる情報でしかないので、その情報を話すだけでは、モデレーター/ファシリテーターとして、スピーカーの方の価値を十分に引き出すことは難しいでしょう
(私も全ての回で出来ている訳でないので反省ですが)
私は、事前打ち合わせにおいても、前述した、スピーカーの方の「おっ!」「うっ!」を引き出す質問をすることを心がけています
そうすると、ポロッとまだ聞いたことのない話や、より深い示唆がキーワードとして出てくることがあるので、それをしっかりとメモしておいて、当日即席で活用できるようにしています
また、事前準備に参加することによって、当日投影するスライドのポイントにおいても、「ここはもっと深掘りできそうだな」とか「ここはあまり突っ込んでもそれ以上は展開が難しそうだな」という予測ができます
時間が限られた中でのライブ実施としての醍醐味は、やはりその場の雰囲気で流れを変えられる、ということかと思います
単純に段取り通りに話を進めるだけではなく、視聴者の方の共感と解決策への納得感を深く感じてもらうために、盛り上がる話はしっかり盛り上げる、資料を見ればわかる部分は時間次第で捨てる、という采配をしながらタイムマネジメントをするのがモデレーター/ファシリテーターの仕事
だからこそ事前に、流れだけでなく、どこが盛り上げポイントになりそうかをしっかりとキャッチして、当日を迎えることが重要です
記載した以外にも、例えばコンテンツの作り方など、様々なノウハウはありますが、長くなったので、今回は以上とさせて頂きます
それ以外のノウハウは、また別の機会に
ご覧いただきありがとうございました
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