拝啓、私に愛を教えてくれた君へ
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この日は鈴虫が耳に残るほどよく鳴き、額にべっとりとした汗をかくほどの熱帯夜だった。まだ緑の虫かごが大きく感じるほど小さい私と大きな背中の君と二人でカブトムシを採りに山へ出かけた。君は車を走らせ、私は目をキラキラと輝かせ、車の窓ごしに夜には見づらい木々を観察する。ゴツゴツとして鱗のような木を見つけては車を止めて、木々を嘗め回すように見た。君は率先して木を蹴ったり、叩いたり。目には見えないくらい上に止まってい