楽園の暇 ― もんたん亭日乗
<その3> 浄瑠璃が、離れ小島にやってきた
文楽の神様が微笑んで、瀬戸内の小島で奇跡が起きた、十二年間にわたって。この時の厳しい暑さを思い起こしながら、最も酷暑の夏に私はそう感じている。丸亀市沖の離島・広島に「もんたん亭浄瑠璃」が生まれた、その経緯はこうである。
私の人生において出会えて本当によかったと思えるものの一つに、「文楽」=人形浄瑠璃がある。無形文化遺産にも認定されているその伝統芸能にどっぷり浸かって、三十年以上になる。以前勤めていた東京の放送局で文楽公演を企