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持ち込まない

私はなるべく世間から遠ざかるようにして暮らしているのだが、の1文から始まる岡潔先生の春宵十話には随分と考えさせられました。
中でもなるほど、と思ったお話をひとつ。

先生は大学の中に自らの研究室を持っており、そこには唯一の規約があります。それが「世間を持ち込むな」ということだそうです。
そして、だからここは空気が澄んでいる、と続くのです。

では、ここで言う「世間」とは何でしょう?一般的な意味としては世の中とか、社会とかを指す言葉だと思います。もし仮にそのままの意味で使われたのなら、なんとなく得心がいきます。
忙しない人間社会のなかで、何事か気にかけることも無く、ただ研究をする場所。確かに空気が澄んでいると言えるでしょう。
現代社会においてこのような場所を見つけることは、なかなか難しいのではないでしょうか。学校や職場でも、人間関係のしがらみや、マナーだのルールだのと喧しい事この上ないです。それから逃れたいのならこれはもう、孤独でいるしかない。だけどそれもあんまり上手くない。

じゃあどうしよう。ここはもう腹をくくるしかありません。仮面をかぶって外面を整えて、川の流れに身を任せる。「世間」なんてそれで十分まわるんですよ。そうして家に帰ったら、玄関前で仮面を脱ぐのです。余計なものも仕事も持ち込まない、さながら世間デトックスでしょうか。

あとはキャプテンハーロックの言う通り、酒でも飲んでひっくり返って寝てれば良いのだ。

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