なぜ、ブロックチェーンなのか?[抜書き]
スマートフォンの新製品が出てもディスプレイ、カメラが少し改良する変化しかなく、ユーザー体験に画期的な変化はなくなっている。以前と比べてどれも同じような商品になってきた。コモディティ化。今、IT業界では、スマホの後に何が来るのかを探っている。
昔は、健康な人から情報を取るということはあまりなかった。サプリはあっても本当に飲んで痩せるのか、調子が良くなるのか、それが要因なのかデータが取れないから分からない。Apple Watchを着けていて、定期的に心拍などのデータを取っていたら、それが分かる。スマートフォンやデバイスを通して、人間はオフラインのない時代に。今まで取れなかった統計データは価値がある。新しい事実を発見することに繋がる。
坪井は、ITを認識する四種の神器があると言う。すなわち、IoTでデータを取得し、そのデータをクラウドに保管し、データはブロックチェーンで記録することでセキュアにし、このデータをAIで分析して役立てる。
ブロックチェーンは国の法律を超えて機能することはないので、ブロックチェーンで土地の権利が移動できても、法律的に移動されたことにはならない。したがって、現状の煩雑な手続きをしなければならない。
ブロックチェーンに向かないこととして、大きなデータの保存がある。ブロックサイズに限りがあるので、大きく遅延する。ビットコインはスクリプトだが、画像データを何万件も保存すると言った用途には向いていない。解決策としては、取引する商品自体ではなく、取引データを記録することに特化する方法がある。情報は複数のデータを組み合わせることで価値が上がるものなので、要となるデータのみをブロックチェーンで管理し、それ以外は従来のDBで管理することがベター。次に向かないこととして、特定のデータのみ検索。なぜなら、ブロックチェーンはデータを暗号化して保管しているから。最後に、個体管理しにくいものは向いていない。例えば、農産物。ピーマン一つ一つにタグをつけて行くことは合理的ではないし、袋詰めのピーマンが5つあったとして、その袋にタグがあっても、袋詰めした段階までしか追跡できない。結果、それぞれのピーマンをどの農家が育てたのかは分からない。ブロックチェーンでトレーサビリティーの透明性が上がると言う話はよくあるが、ダイヤモンドのような個体管理出来るもの、農産品や薬の錠剤のように個体管理しづらいものがある。
ビットコインはDistributed(分散型)だが、EUはDecenterized(非中央集権)。ビットコインはプロトコルが自律的に作動し、人間も従う。EUは、国家があり、国家より上位の概念としてEU理事会がある。それぞれが主体でありながら、一部であるという感じ。DAOは人によって、Distributed Autonomous Organizationだったり、Decenterized Autonomous Organizationだったりするので正確な意味が分からない。DAOの議論はより厳格な条件である「分散型」を指すのか、より緩やかな条件である「非中央集権型」を指すのか、説明の文脈でよく考えた方が良い。
世の中の価値で定量化(質を数量で表す)できていないことがある。例えば、親切。このような従来の貨幣では表現できない価値を定量化する手段としてトークンがある。貨幣とは全く別の理念がある。ブロックチェーンは社会を組織する力がある。意思決定は、コンセンサスアルゴリズムが担う。現実社会のように中央管理者が意思決定することなく、多数決で決めるプロトコルを指す(ビットコインならトランザクションやブロックの検証の部分が多数決と考えられる)。プログラムという法律に基づいて執行するのは、スマートコントラクトである。ブロックチェーンの社会での価値の交換手段(貨幣)がトークンとなる。以上を、トークンエコノミーという。ブロックチェーンには、セキュリティの高いシステムを構築することに強みがあるのとともに、分散型のエコノミーを築くことにも強みがある。
バラバラに存在するがゆえに苦戦している個人薬局がたくさんあって、そこをある点でネットワーク化すると課題が解消できる、という典型。個々の薬局の独立性を脅かさず、バラバラのままでまとめる、バンドルする。こうした場合にブロックチェーンのシステムは有効に働く。
社会主義についての話など共感できない部分もあったが、ブロックチェーンの実証実験をした経験からの学びは参考になることが多かった。
参考文献
坪井大輔 「なぜ、ブロックチェーンなのか?」 翔泳社.2019
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