これからのブロックチェーンビジネス[抜書き]

ブロックチェーンの問題として、スケーラビリティがある。スケーラビリティとは拡張性を意味し、課題は処理能力を高めようとすると、回線を圧迫したりセキュリティレベルが下がるといったことが起こること。解決策として、シャーディングによる並列処理がある。これは本来ブロックチェーンは全てのノードがネットワークの検証を行うものの、これこそ処理が滞る原因となる。そこで、ネットワークの内部を並列のグループへ切り分け、各グループ内で取引を確認する。それぞれの結果だけをまとめてメインのチェーンに記録することで、並列処理を可能にするというアイデア。もう一つのアイデアは、サイドチェーンによる結果整合処理。メインチェーンと繋がった別チェーンを作り取引を行い、その結果を自由なタイミングでメインチェーンに記録することで、メインチェーン上でやり取りされる取引数を減らす方法。高速道路に対するサービスエリアを作るイメージ。高速道路の本線上に店舗を作ると、店舗に寄る自動車で道路が渋滞する。

他の問題点としてファイナリティがある。すなわち、「ある取引が履行されたという確定」が曖昧であるという指摘されている。それはブロックチェーンの承認数が6以上にならなければ、チェーンの分岐が誤っていた可能性を否定できないから。解決策として考えられたのが、ビザンチン・フォールト・トレランス(BFT)型と呼ばれるコンセンサスアルゴリズム。これは、取引の承認権限をもつ「コアノード」と、ブロックチェーンを利用するだけの「アプリノード」を分ける。分岐が発生しないようにコアノードはトランザクションを即時確定する。以上のように、重要な権限を持つコアノードの選出方法は慎重を期す必要がある。EOSは、ネットワークの参加者に保有するトークン量に応じた「投票権」を与え、検証ノードを委任することで選出する。ZILLIQAは、選出について、PoW的な計算競争を設けることで、検証ノードが固定化して権力が集中することを防いでいる。

ブロックチェーンが生かされる業界として、興味があるのはゲームや医療。あるゲームで購入した資産をゲーム開発会社のサーバで管理するのではなく、共同で使える形のブロックチェーンで管理することで、参画している別のゲームの資産と交換することが可能になる。プライベートブロックチェーンを使用するのだと思う。

ゲームからゲームではなく、さらにゲームから他の業界のトークンへ転換可能になると面白い。例えば、教育系のゲームならゲームの進行度でトークンを発行して、そのトークンは何かの権利を得られるトークン(起業家と会う権利など)と互換性があるというのはどうか。アメリカで、勉強を頑張ったらお金をあげるという方式が批判を浴びていたことがあったが、子供の学ぶ意欲を形骸化させる事なくインセンティブを与える一つの解になると思う。

医療業界での活用例としては、現状では、ある患者のカルテや診察記録は病院ごとに管理されているので、別の病院を受診する場合、患者自身が説明しなければならない。そこで、患者の医療情報をブロックチェーン上に記録する「MedicalChain」がリリースされた。これにより、ある患者の診察や治療の記録が、どの病院でも参照することが可能になる。研究者や企業は、患者へ直接医療記録の開示をリクエストし、データを購入する仕組みがあり、従来より低コストで質の高い情報が得られるようになるという。保険会社は、患者から偽りのない医療情報をもらうことができるので、保険料の決定に役立つ。

これは、患者が医療の専門用語で会話できないという問題だけでなく、意識不明で話すことが困難な場合にも、既往症を説明できないという問題も解決することができると思う。病院ではなく、患者個人がデータを主権者になるという点でも良い。現在は、受診した際にレントゲンを撮ってもらっても、そのデータは患者には口頭でしか共有されない。それは、レントゲン写真を解釈する必要があるからで、患者が保有してもしょうがない情報なのかもしれないが、本来ならレントゲンを撮った病院、レントゲンの被験者の患者、両方がシェアするデータだと思う。これは英国のサービスで素晴らしいと思うが、日本で伸びないのはどんな障害があるのか?

未来の技術との掛け合わせ。AIはデータを取得して学習するので、データセンターが肥大化する傾向にある。そのデータセンターを中央管理ではなく、分散型のデータベースで管理することでリスクを軽減する。また、多くのメーカーが様々な人工知能ロボットを開発し、それが社会で動く際には、ロボット同士が互いを認識し、事故がないようにしなければならない。その地域で使用されるロボットを登録させるプラットフォームをブロックチェーンで作り、必要な情報を共有するという解決策が考えられる。

生体認証。売買を始めとするお金のやり取りだけではなく、日常生活のあらゆる行動において秘密鍵が必要な社会になるという。ブロックチェーンは個人認証と相性が良い。したがって、「財布や通帳、住民票、パスポート、卒業証明書、カルテ、会員カード、家や車のキーなどを持たずに、全ての個人情報を集約した秘密鍵だけあれば生活できるようになる」という。秘密鍵は虹彩、指先の一部などに埋め込まれることが考えられる。

現在のVRは「仮想現実」ではなく、「仮想体験」だという。それは、VRの世界で何かを行っても現実の世界に影響を与えることはできないから。VRはデジタルの世界なので、例えば金を無限に増やすということも可能。だが、ブロックチェーンを使えば資産をリアルな世界でも信頼できる形にできるという。

イメージできないが、PoWでのトランザクションやブロックの検証のようなマイナーの役割を何らかの形でユーザーにもたせて、データの信頼性を確保するのだと思う。

IoT端末は、センサーやカメラなどの情報収集端末をオンライン状態にする必要があるため、ハッキングによって誤作動を起こされる危険性がある。ブロつくチェーンで分散管理することで単一障害点を無くし、セキュリティを上げるという活用が考えられる。また、マシンとマシンでの決済が行われるためには、非常に少額の支払いが予想されるため、ブロックチェーンの仮想通貨手数料の低さ、トークンでの支払いが適している。

参考文献

森川夢佑斗 「これからのブロックチェーンの未来」 エムディーエム.2018


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?