自分らしい選択
タイの瀧澤です。今回は、「いやいややっていることはありますか?」という問いから気付いたことを書きたいと思います。
今から13年前、夫が海外で働くことになり、私たちは一緒に異国での生活を始めました。
海外生活は新しい発見や貴重な経験ができる一方、日本での生活に比べると制約も多く感じられました。
習慣やシステムの違い、言語の壁もあり、日本にいたら自分で簡単にできることが、思うように進まないことも多々あります。
最初の数年間は、友人と離れ、仕事を辞め、夫以外には知り合いもいない土地で、生活に慣れること、家族が安全に幸せに暮らせることに集中する日々でした。
妊娠、出産を経験し、育児に追われつつも、友人ができ、フランスでの生活に慣れたころ、夫のタイへの転勤が決まり、再びゼロからのスタートを切ることになりました。
ここでも私は変わらず、家族が安全に幸せに暮らせる環境を整えることに専念しました。海外生活に伴う制約も、「仕方がない」と受け入れるようになっていました。
タイ生活も長くなり、幸せな生活を送ってはいるものの、心の奥には「いつまでこの海外生活が続くのだろう?」というモヤモヤした思いが生まれるようになっていました。成長する娘の進路や、自分自身の今後について考える中で、そのモヤモヤは次第に大きくなりました。
そんなある日、ハートフルコーチの養成講座のなかで「いやいややっていることはありますか?」と問われたことがありました。その時は「食後の食器洗いがいやだな」と答えたことを覚えています。
その講座が終了した後、改めて考えてみました。「いやいややっているということは、自らやるという選択をしておらず、やめることも、楽しんでやることも選んでいない。選択しない限り変化や成長はない」という講師の言葉が心に引っかかっていたのです。
そして、自分の海外生活に対して「いやいややっている」と感じている部分があることに気付きました。私は海外生活に不満を抱きながら、その生活をやめることも、楽しむことも、選んでいない状態なのだと認識しました。夫の仕事についてきているから仕方がない、海外生活に制約はつきものだから仕方がない。私はいつの間にか、「仕方がない」と諦めて、被害者のような気分になっていたのかもしれません。
「仕方がないと諦めている」と自覚したことは、私にとって大きな転機となりました。もやもやとした不満の中にも、諦めるのではなく自ら選択することで解消できる部分があるのではないかと思うようになったのです。
例えば、働くことについて。娘の成長に伴い、私の自由な時間が増えてきて、母でも妻でもない自分として活動できる場所が欲しい、タイの社会と繋がりたい、自分で収入を得たい、など色々な理由から働きたいと思っていましたが、帯同ビザでは働くことができないため、「仕方がない」と諦めていました。いやいや諦めている状態です。しかし実際には「働けない」のではなく、「帯同ビザでは働けない」だけで、就労ビザに切り替えて働くという選択肢もあるとわかりました。現地で働く条件を調べ、自分の気持ちと向き合った結果、働くこと以外でも活動する場や社会との繋がりを持てていることに気付きました。そして、「今は働かない」と自分の意思で選択をしました。働いていないという状況は何も変わっていないのにもかかわらず、不思議と心が前向きになりました。
食後の食器洗いも、好きな音楽やPodcastを聴きながら行うと楽しい自分時間に変わることを発見しました。
海外に住みながら子育てをしながらでも可能だと考え、通信制の大学に挑戦しました。また、以前ホームステイに来てくれた高校生たちに会うために、娘や友人親子とタイ南部の街を訪れることも実現しました。距離が遠い、危険地域という理由で母子2人で訪れるのは難しいと諦めていた場所でしたが、友人たちと誘い合って、その高校生たちと連絡を取り合って行動することで可能になりました。
今まで見えていなかった選択肢が見えるようになり、新たな事にチャレンジする機会が少しずつ増えているように感じています。
たとえ制約がある中でも、自分がどのように行動するかを選ぶことは可能だと気付きました。「仕方がない」とただ諦めるのではなく、「どんな選択肢があるのだろう」、そう思って行動し、自分自身で選択することで、日々の生活に充実感を得られることを学びました。私にとって選択することは、自分らしい人生を楽しむための鍵なのだと思います。それはまた、私が取り組んでいた家族が幸せに暮らす環境を整えることにもつながるのかもしれません。
2024年11月25日
タイ/瀧澤かおる
NPO法人ハートフルコミュニケーション認定ハートフルコーチ