犬育てと子育て ❷
呼び間違いのその奥に。
前回、ムスメを愛犬の名前で呼んでしまった話を書いた。実はそのときのムスメの反応が、私にはちょっと意外だった。ムッとした顔でひと言、「ひどい」と言ったのだ。
普段は何に対しても割と寛容なほうなので、軽く流してくれるだろうと思ったのだけど。
白状すると、その後も何回か、ムスメに向かって「ちょぼ」と呼びかけてしまっている。繰り返すうちに慣れてくれたかというと、彼女は毎回、きっちりムッとする。
(私だったら笑って済ますけどな〜)と思ってオットにこぼしたら、「それはムッとするだろ。僕だって嫌だよ」と言われてしまった。
どうやら、また私のクセが出てしまったようだ。
私はエニアグラムでいうところのタイプ7で、とにかく楽しいこと、新しいことが好きな性分だ。逆に、楽しくないことがあると、なんとかそれを楽しく感じられるようにしようとする。それも無意識のうちに。
この呼び間違いについても、ムスメと笑い合うことで楽しく切り抜けたかったのだと思う。
ところがそうはいかなかった。このままでは、間違えたときにまた厳しい視線を向けられてしまう。それはあまりに楽しくない。
そこで、考えてみた。
いったい、ナゼ私はムスメを「ちょぼ」と呼んでしまうのだろう?
ちなみに、彼女の名前は「ちょぼ」とは似ても似つかない。何か心理的なものが作用していると見るのがよさそうだ。
そういえば、オットのことは一度も呼び間違えたことがない。
ということは・・・ちょぼとムスメに対しては有って、オットに対しては無いものが作用している? それって何だろう。
愛情? ・・・これはたぶん、オットにも有る。とすると・・・保護者意識?
あぁ、そうかも!
私の心の奥底には、ムスメが成人した今もって、「私が護らなきゃ」という思いがあることに気づいた。それが呼び間違いとなって表れたのだ。ムスメは勘が鋭い。ムッとするのも当然だ。
もちろん、子どもが何歳になろうと親は親。頼られたときには全力で応えたい。だからといって、普段から「護らなきゃ」なんて意識する必要は、もうないのだ。常に意識しておくことがあるとしたら、ただただ、「あなたは素晴らしい存在だ」ということに尽きると思う。
そう気づいて以来、呼び間違えはない。と言いたいところだが、つい「ちょ・・・」と言いかけるときはまだある。でも、ムスメの反応が変わった。軽やかになった。嬉しい!
そして、先日。
キッチンでちょぼのごはんを用意したムスメが、振り向きざまに「かーちゃん、ごはんだよ!」。
ふふふ。ついに同じ立場に♪
イヤ待て。私はムスメをちょぼと間違えた。彼女はちょぼをかーちゃんと呼んだ。
何かが大きく違う気がする。
現場からは以上です。
米澤佐知子
NPO法人ハートフルコミュニケーション認定コーチ