貞弥さん1

「日本人の本当の美しい姿、思いを世界に伝える」 講談師 一龍齋 貞弥さん

「講談を通して日本人の本当の美しい姿、思いを世界に正しく伝えて行きたい」という熱い思いを持たれて活動されている、講談師の一龍齋 貞弥さんにお話を伺いました。

<一龍斎貞弥(いちりゅうさい ていや)さんプロフィール>
出身地: 大分県臼杵市
活動地域:全国各地~海外(台湾)
経歴:大分県出身。日本女子大学文学部卒業後、外資系ホテル勤務を経て演劇を学び、ナレーター・声優として活躍。「皇室アルバム」などTV番組、CM、官公庁作品他、給湯器、カーナビ等多くの音声を担当。
現在の職業及び活動:講談師、ナレーター・声優。
2007年講談師一龍斎貞花に弟子入りし、現在二つ目。全国各地の寄席・公演などに出演する他、毎年台湾でも公演を重ねている。
NHKEテレ「旅するイタリア語」ナレーター。
ボイストレーニングを中心に、小中高・大学、又一般向けに声の面白さを伝える「声の授業」にも取り組んでいる。
座右の銘: 「日に新たに、日々に新たなり」「かたよらない こだわらない とらわれない」

「今を楽しんで幸せになりましょう」

Q.どのような夢やビジョンをお持ちですか?

一龍齋 貞弥さん(以下、一龍斎 敬称略):
私は講談に出会い、それがきっかけで少しずつ歴史を勉強し直していく中で、日本はやはり素晴らしい国だと強く思うようになりました。日本には世界に比類なき歴史と美しい文化がありますが、それがあまりにも正しく世界に伝わっていないことを悔しく思います。そんな訳で私には、講談を通して日本人の本当の美しい姿、思いを世界に伝えて行きたいという思いがあります。草の根レベルから徐々にでも国レベルにまで広げていけたならば、世の中は少しずつ変わっていくのではないでしょうか。

文化を通して日本ファンを世界にたくさん増やすような取り組みをしていきたいと考えています。ご縁があって、既に台湾では日本台湾交流協会さんや台湾協会さんの主催の寄席に毎年恒例で出演させていただいております。元々は東日本大震災の時に世界でいち早くそして一番多額の義捐金を送ってくれた台湾の方たちに何か恩返しがしたい、それを講談や落語といった日本の伝統文化を通じてできないか、という主催・実行委員会の方々の強い思いから始まったプロジェクトも、はや今年で八年目。台北一都市から今では四都市公演にまで広がりました。

台湾のお客様たちが日本や日本の文化をとても愛してくれていることを実感できるのが嬉しくて、毎年楽しみにしている公演ですが、残念なことには一方の我々日本人がそのことを、また台湾のことをどれだけ分かっているか、もっと積極的にお互いの理解を深める努力が必要だと感じています。

Q.「講談を通して日本人の本当の美しい姿、思いを世界に伝えて行く」を具現化するために、どんな目標や計画を立てていますか?

一龍齋:本当はかっちりと目標や計画を決めて行動するのがセオリーなのかもしれませんが苦手で。自分の中で無理なく、あまり計画などにとらわれないようにしています。自分のその時々の気持ちや条件にしたがって自由に行動していくというやり方です。
余談ですが「みんなが自由にそれぞれの力を発揮しあっていくことができたら、どんな世の中になるのだろうか」などと考えたりします。束縛されたり、強制されたりしない、規範にも縛られず、我慢もなく、それぞれが自由に力を発揮しつつ、みんなで協力しあう絶妙にバランスの取れた理想の世の中を見てみたいですね。全部がうまく組み合わさったときの、全てが人間の体の細胞のように機能しあった究極の美しい姿を見ることができたら、などと想像するとワクワクします。

思いの具現化ということでは、例えば、歴史の中に埋もれている素晴らしい人物や事業などにスポットを当てていきたいと思っています。
実は数年前、江戸時代から私の故郷に伝わる父と孝行姉妹の美しい実話を、講談にしてほしいという依頼で「二孝女物語」という新作講談を創り、これまで多くの公演を重ねています。


恥ずかしながら地元なのに私自身知らなかった、郷土の素晴らしい実話。「この話をたくさんの人に知ってほしい。臨場感にあふれた話芸である講談だからこそ熱く伝えられる。」と期待を寄せてくれた郷土史家の方々の、これまた強い思いが大きな流れとなりました。
江戸の昔、親子を巡って温かい交流のあった臼杵市と常陸太田市が、二百年の時を経て再び絆を結んで姉妹都市となったり、県の教科書に載ったり、今あらゆる分野で交流が進みお互いの地域の活性化に繋がっているんです。

地域と地域を繋ぐお手伝いができたことは本当に素晴らしくありがたいことだと思います。そんな「地域おこし」も講談の得意分野となるのではないかと思いますし、その活動が他の地域に広がって、そこから更に全国、世界にまで広がればどんなにか素敵でしょう。

Q.その目標や計画に対して、現在どのような活動指針を持って、どのような(基本)活動をしていますか?

一龍齋:日々意識していることは、「思ったらやる。やりたかったらやる。言い訳をしないで自由に選択し、自分の心の声に耳を傾け、その場その場でしなやかに変化していくこと」です。
私はいつの時代も強い思いが良くも悪くも世の中を動かしていると思っていますし、それが世の中の真実だと思います。ネガティブな強いとらわれはご免蒙りますが、良い方向に動かす人たちは努力と感じずに究極の努力をして結果的に世の中に大きな影響を与えている。何事も、思い、熱意、パッションが大事だと思います。そんな思いを持って活動したいですね。

Q.そもそも、講談を通して日本人の本当の美しい姿、思いを世界に伝えて行く」と思う様になったきっかけは何ですか?そこには、どのような発見や出会いがあったのですか?

一龍齋:入門前からずっと声の仕事をしています。仕事でたくさんの原稿を読んで、読んで、読みまくり、それだけでは物足りなくなって、「もっと別の表現の引き出しを持ちたい」と考えたときに目に入ったのが、日本芸能実演家団体協議会がプロ向けに開催していた様々な日本の伝統芸能のセミナーの募集でした。それに片っ端から参加して、その中で出会ったのが講談でした。そこで師匠と出会い、稽古に行くようになりました。
弟子入りするには子育てや声の仕事の整理の必要もあり、3年くらいである程度環境を整えて入門しました。

もともと新しいことに取り組むことには心が踊りますし、知らない世界に入ることや、新しいことを学ぶことが好きだったので、講談の世界に入ることはとても楽しみでした。ところが見るとやるとでは大違い!
約4年弱の前座修業は思いの外大変で、生易しいものではありませんでしたが、とにかくこれは「自分が今より成長するための人間修業だ」という思いで毎日を過ごしました。

やればやるほど芸の世界は厳しいと思い知らされます。でもそうやって芸を磨き、精進を重ねていくその先にあるものを見てみたい。三年後、五年後、十年後の自分はみな違うはずですし、今の自分じゃない、ずっと先にいる自分を楽しみにしたいと思いながら日々自分と闘っています。

Q.「声の仕事をしよう」と思った背景には、何があったのですか?

一龍齋:小学校5年生のころ、放送クラブに入り校内放送のアナウンスをしたことが原体験でしょうか。私の小学校の放送はスピーカーから近所中」に響いていたので、友達のお母さんから「いい声してるね!」と声を褒められたことをきっかけに「声はみんな同じではないんだ」と気づき、そこから声に興味を持つようになりました。

その後、大学で放送研究会に入って楽しくやっていたものの、卒業後は声の仕事を目指そうとは全く考えず、ホテルのコンシェルジュに就きました。
ところが働く中で段々と心の声が大きくなっていきました。「本当に自分がやりたいことは何なのか」。その時自分の特性と照らし合わせて「声の仕事がしたい」と改めて気付いたんです。その後俳優養成所に通い、事務所に所属し、それからも思ったままに行動していたら今の自分に至りました。

また、私の実家は禅宗のお寺で、小さい頃からお経を読んでいたので、読むということに慣れ親しんでいましたし、ひょっとしたらそんなことも声に興味を持つ原点だったかもしれません。
父の命令で中学から大学まで、お盆に盆行(ぼんぎょう)といって、檀家さんの家を回ってお経を読むお勤めをしていました。たくさんの家を回って様々な家庭環境の色々な方とお話をする中で自然と多くのことを学んでいたことを随分と後になって気付きました。それが知らず知らずのうちに多種多様な価値観を受け入れるようになった背景かもしれません。

また父は厳しくてうるさかったのですが、やりたいことは自由にさせてもらえました。やりたいと思ったことに反対された時は、なぜやりたいかをしっかり伝えれば最終的にはいつも私の考えを受け入れてもらえました。感謝しています。

Q.読者の方に向けて一言お願いします。

一龍齋:せっかく生まれてきたので、今を楽しんで生きたいものですね。自分を縛る多くの「決めつけ」から自由になってお互いに幸せになりましょう。
講談に興味を持って頂けたら是非一度講談にも触れてみて下さい。講談を通して何か感じるものがあればとても嬉しいですし、もし私の講談を聴いてひと時でも幸せな気分になっていただけたなら、私も幸せです。

記者:今の活動に対する熱い思いや、一龍齋貞弥さんが今のご活躍に至るまでの、出会いの背景や大事にしていることのお話がとても素敵でした。貴重なお話ありがとうございました。


----------------------
一龍齋貞弥さんの活動、連絡については、こちらから↓↓

■Facebook
http://www.facebook.com/teiya1ryusai/

■ホームーページ
http://kodankyokai.com/


【編集後記】
インタビューの記者を担当した陣内と福井です。
講談のお話がとても興味深く、話に惹きこまれました。日本の素晴らしい文化を伝えていきたいという強い情熱がひしひしと伝わってくるインタビューでした。思ったことはまずやってみる行動力も、人一倍強い方だと感じました。後日、実際に貞弥さんの講談を聴きにいったのですが、とても上手で内容も面白く、「素晴らしい」の一言に尽きます。本当に心から感動しました。ご興味ある方はぜひ一度、講談に触れて頂きたいと思います。一龍齋貞弥さんのますますのご活躍、楽しみにしております。
----------------------

この記事はリライズ・ニュースマガジン“美しい時代を創る人達”にも掲載されています。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?