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言葉の力を全身で味わう映画 「カーペディエム」という教えを身に受けよ

「先生を目指してるんだって?
 『いまを生きる』って映画がおもしろいよ」
そんなふうにセミナーで出会った人におすすめされた映画だった


当時の私は教育学部の大学生だった
別に先生になりたいわけじゃなかった

そもそも大学入試で第一志望に落ち
補欠合格という形で受かった教育学部だった
とりあえずで書いた第二志望の学部だったし
教師になるなんて眼中になかった

それなのに他の学校にしなかったのは
母子家庭という環境から選択肢がなかったからだ

受験する数を増やせばそれだけ受験料がかかる
選ぶ余地などなかった

そんな私は教育学を勉強しながら
塾のバイトをしていた
高校時代の友人が大学に入ってから始めており
時給がいいからという理由で選んでいた

まあつまり
このときの私には主体性というものが欠片もなかった

そんな私だが金を稼いでみたいという願望だけは
一丁前に持っていた

だからネットの動画広告につられる形で
あるセミナーに申し込んだ

起業のセミナーというよりも
思考を現実化するというマインド的な部分を鍛えるセミナーだった
内容にセールスの仕方などが入っていて興味があった

内容は満足いくものだったし
そこでの出会いは大学では得られないものがたくさんあった

その中で私は岡本さんという方から『いまを生きる』を教えてもらった

主人公のジョン・キーティングが熱血で素晴らしいとのことだった

言われるがままに
私はTSUTAYAでその映画を借りて
鑑賞してみた

こころが、燃えた


あの時の感覚はいまでも鮮明に覚えている

全身の毛穴が開くような熱くたぎる気持ち
今にも叫びたくなるような衝動的な想い
とにかく飛び立ちたいような
心の底から自由を渇望する飢えた感情

とにかく情熱を掻き立てられる映画だった
自分もジョン・キーティング先生の生徒になった気分だった

自由を刺激されたのだった

ジョン・キーティングは
初回の授業でいきなり教科書を破り捨てよと言い放つ
クレイジーな先生だ

だが一見クレイジーに見えたとしても
その心の奥底にあるのは熱き想いだ
生きることの素晴らしさを伝えるという情熱がある

最初はドン引きだった生徒たちは
そのうちジョンの情熱に当てられていく

親や規則に縛られていた生徒たちが
次第に自由を目指して
主体的になっていく

その過程を観る私たちも
気づけは自由を欲するようになっていく

あぁ、自分たちは今までなんてつまらない人生を送っていたのだろう
周囲の目を気にしたり
守る意義のないルールに縛られて
今までどれだけ自分を殺してきたのだろう
おれたちはいろんなことに悩み
いろんな壁にぶつかる

でも
でも
おれたちはもっと自由であるはずだ
おれたちは自由であるべきなんだ

そんな思いを心に突き付けてくる映画が
『いまを生きる』であった

そんな映画を象徴する言葉が
「カーペディエム」というラテン語だ

作中でジョンもその言葉を語る
”Carpe diem. Seize the day, boys. Make your lives extraordinary.”
今を生きろ。毎日を楽しみ、君たちの人生をかけがえのないものにするんだ。

邦題がこの言葉をとったこともうなずける
それぐらい説得のあるセリフだった
ジョン・キーティングのようなキャラクターが語るからこそ
私に突き刺さったのだと思う

私は映画を観てから
教師になることを決めた
その当時は、教師になって立派な授業をしたいという思いはなかった

純粋にジョン・キーティングにあこがれていたのだ
自分もああいう自由な人になりたかった

だから教師を目指した


自由を思い出したあの日以来
私は常に自由を求め、
今を生きようとしている

実際に教師になった今も
その思いは変わらない

学校教育という場は
誰でもわかる通りしがらみが強い世界だ

ブラック校則やらなんやらと揶揄されることの多い現場だ
しがらみが9割だ

そこで働く自分も
自由を求める気持ちはあっても
それでも子どもたちにルールを押し付けてしまう

しかし子どもたちに自由であってほしいのも事実だ

ではなぜ、子どもたちに「これはルールだから」なんて
つまらないことを言ってしまうのだろうか

一口に言えば私にジョン・キーティングのような情熱も勇気もないのだ

この世界は多様性といわれながらもしがらみが多く世知辛い
多くの人々が生きづらさを抱えながら生きている

そんな世界にいつか旅立つ子どもたちに
自由を謳うだけの教育をするのは無責任じゃないか

そんな思いもあって二の足を踏んでしまう

あぁ、おれはまだ自由じゃないな

哀愁にかられるたび
「カーペディエム」という言葉を思い出す

自分たちが本当に主体的に生きるためには
「いまを生きる」しかないのだろう
未来のこと過去のことに縛られず
「いまを生きる」ことでしか
自由は得られないのかもしれない

子どもたちをみていても思う
いつくるかわからない未来の不安や
どうにもならない過去の失敗に
悩み苦しむわけだ

そんな子どもたちを救う人間に私はなりたい
自由を教え
「いまを生きる」という価値を伝えていきたい

心に必ずとどめよう
「カーペディエムだ」

#映画にまつわる思い出

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