1-4勉強ができる子供の家庭は、お母さん(お父さん)が戦略的
「肝は、お母さんなんですよ!」
ご自身も中学3年生と高3年生の息子さんを育てている、ある大手塾講師の東本塾長に「成績と生活リズム」というテーマで取材した際、まず、言われたのがこの言葉です。
長年、多くの生徒の勉強を見てくるなかで、痛感していることがあるといいます。
塾でどれだけ勉強を指導しても、どうにもならない分野。それが、家庭内の生活リズム。
塾で生徒と面談をし、やる気を引き出したとしても、家庭での生活リズムが乱れていたら子供たちはモチベーションも集中力も継続できない。
親が、遅い時間まで起きてドラマを見ている。スマホをいじっている。ポテトチップスなどを食べて太っている/痩せている。朝ごはんを用意しない。顔が疲れている。この家庭環境の中で親から、「スマホばかり見てないで、勉強しなさい」と言われても、説得力がなく、子供も素直に聞けない。その場では、しぶしぶ言うことを聞いたとしても、心のなかでは、「自分はどうなんだよ」という小さな不満がくすぶる。
結果、子供は、親にこっそりスマホを遅い時間まで触っている、寝不足になる、朝ごはんを食べない、体力がないから集中も続かない、勉強についていけない、取り返そうと塾に行く。しかし、家に帰ると、家族が夜遅くまで起きていて、それにつられて自分も遅く寝、朝ギリギリまで寝ている。
それを見て、朝から親が口うるさくなる。子供はイライラしたまま学校に行く。学校では眠気が入り混じったまま授業を受ける・・・。まさに、負のスパイラルです。
この状態で、「本番力を高めるために、健康習慣を始めよう」といっても、まず、聞いてくれません。
東本先生が、長年、生徒と保護者と面談し、当初は生活リズムが崩れていたけど、上手に立て直したご家庭を見ていると、ある共通点があるといいます。
それは、お母さんが「戦略的」に家族の生活リズムを整えている、という点です。
「早く寝なさい」と、言葉で人を動かそうとしても、それはまず、無理。
そこで、3つの戦略を実行しているといいます。
Step1)夕ご飯を30分早める。
食は、生活リズムに与える影響が大きい。そこで、いつもよりも30分「意図的に」夕食の時間を前倒しする。食事が早くなると、入浴の時間も必然的に早くなる。入浴の時間が早くなると、リラックスして、眠気が早く訪れるようになるので、寝る時間が早くなる。早い時間に夕食を食べるので、胃の中に食事が溜まっていないため、深い睡眠が取れるようになる。好循環のサイクルを作るきっかけになるのです。
Step2)親がまず、早く寝る。早く起きる。
お母さんはドラマを見ているし、お父さんは、パソコンを持ちこんでリビングで仕事をしている。家族が起きていると、子どもも、「まだ起きていていいのかな。なら、私も、、、」となってしまいます。人間には、ミラーニューロンというものがあり、周りの状況を自己投影していく性質があります。家族の周囲が寝静まっていると、自然と子どもも早く寝るようになるのです。
Step3)親が、朝ごはんを食べる
夫婦が毎日、朝ごはんを食べる。それまで、朝ごはんを食べる習慣がない子供も、はじめは、食べないかもしれませんが、そこは焦らなくても大丈夫。朝、ご飯をたべる環境があれば、夕食の時間が前倒しになったことで、朝はお腹が空いているので、次第に食べるようになります。
「早寝・早起き・朝ごはん」
この3つのリズムを整えることが、ポジティブな連鎖を生み出す第一歩なのです。
朝、太陽と一緒に自然に起きるので、朝のイライラがなくなる。
昼、スッキリ覚醒していて、勉強にも、集中できるようになる。
夜、自然と眠くなるというリズムが出来上がる。
家族のコミュニケーションが円滑になる。
家族全体が明るくなる。
信頼関係が醸造されていく。
このプラスの循環が回り始めると、成績もぐんぐん上がっていく。
逆に言うと、家庭の生活リズムが整っていない状態で、親が学校や塾の指導者に勉強の成績をあげるよう要請するのは、そもそも無理な話なのです。
早く寝なさい!早く起きなさい!さっさと朝ごはん食べなさい!というのではなく、
そっと、晩ごはんの時間を30分前倒しにすること。
そして、夫婦で話し合って、親も就寝時間を1時間早くすること。
見たいドラマは、録画して朝、楽しむこと。
これらを東本先生は、子供の成績をあげる上で「肝は、お母さん」「戦略的な取り組み」と、表現されたのです。
口うるさく言う方も、言われる方もイライラせずに、夕食の時間を少し前に倒すことで、ストレスなく、家族全体を好循環に導いているあたり、学ぶことが多いですね。
本書の執筆に当たり、中学、高校の先生、元校長先生。大手の塾の先生方にお話を伺いました。先生方が、口を揃えて言うのが、「家庭内の生活リズム」「家族の仲が良いこと」が、「勉強へのインパクトが一番大きい」でした。
この分野は、学校の教師、塾の指導者も手出しが出せない分野です。
ぜひ、「自分の子供の成績に一番影響を与えるのは、お母さん(お父さん)なんだ」という視点で家庭の様子を見直してみてください。
健康マネジメントスクール
代表 水野雅浩
「健康を企業文化に」
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