虐待の世代間連鎖を乗り越えるコツ~地縁を大切にしながら感謝して生きる[未来のためにできること]
令和六年の出生数が75万人を下回る情勢ですが、令和四年に全国の児童相談所が児童虐待相談として対応した件数は、実に20万件以上に及びます。
実は、私も妻も、生家から逃げ出して実の親と絶縁するまで、命懸けの凄絶な虐待を受けながら生き延びた虐待サバイバーです。
わが家には未就学の娘が二人おります。どちらも専門医によって自閉症スペクトラムと診断されており、その育児には工夫を要します。
児童虐待は世代間連鎖すると言われますね。だからこそ、「家」という名の陰惨な強制収容所を愛娘に味わわせる真似だけは絶対にするまいと心に誓って、私たち夫婦は今まで娘たちを育ててきました。
親と絶縁した私どもには頼りになる親戚は一人もいません。ですから、私は地域社会や行政や支援者の方々とは親しき仲にも礼儀ありでお付き合いをして、何かとご助力を仰いでまいりました。
私が相手の方をひととして尊重していると、地縁の方もお役人も支援者の方も、私に対する支援の手を惜しまない方が基本的に多いようです。
コロナ禍直前のある冬の日、私たちはこの町で子ども食堂を運営するガーナ出身の男性と知り合いました。彼が主催したハロウィンのお祭りに家族揃って参加して地元商店街を練り歩いたこともあります。わが家と彼とは互いに励まし合いつつ、今もこの街に根差して暮らしています。
虐待は子どもの愛着の形成を妨げるのみならず、世の中に対する信頼感も破壊します。おびただしい件数の児童虐待は日本の未来に深刻な影を落としています。虐待の問題を解決する営みは、SDGsを考える上で避けては通れない道だと私は思います。
では、未来のために私ができることは何でしょうか。それは…
勇気を奮って行動を起こし、地縁の皆様に敬意を持って歩み寄り、必要なご指導を仰ぐこと。
虐待の本質を理解できる人ばかりではないから、気持ちの通じない人とは喧嘩せずに住み分けること。
そのためにも、人が変えられるのは自分だけだということをしっかりと弁えて、日々を大切に生きること。
子育てが親育てであることを肝に銘じ、地域社会に根差して親子で成長していくこと。
最後に、今ここの暮らしと命に対する感謝を忘れず、自分と家族を労わること。
私が未来のためにできる「虐待の世代間連鎖を乗り越える」ことのコツは、そのように地縁を大切にしながら感謝して生きる日々の営みの中にあるように私は思うのです。