登山(音楽瞑想)

みなさま、こんにちは

今朝の「音楽の絵本(56)」(音楽瞑想会)ありがとうございました。
今回は「登山」というエッセイを演奏とともにお送りいたしました。

アーカイブは以下でご覧いただけます。
https://youtu.be/4tnodL_AzSw

KABUTO 音楽の絵本
Story-56 登山

「目を閉じます。初めて山に登ったのはいつかと考えることがあります。学校の遠足か、家族で出掛けたときか、友人と行ったときか。
登山の目的って何なのかと思うと、体力作りができる、自然の中を歩くことでリフレッシュができ、頂上に立ったときには達成感があり、仲間と行けば親睦を深めることもできる。
たとえば近くにある低い山でも、散歩がてら登ってみると、下界の町がきれいで、そこがお気に入りの場所になることもあります。
今朝は最初に、ご自身がどこか登った山を思いながら、またそこにある美しい景色を思って、ひととき過ごしたいと思います。

いかがでしたしょうか。登山の体験、何を思い浮かべられたでしょうか。

ある日、この世に生まれた。青空の中、ゆっくりと動く雲の隙間に山の頂上が見えている。足下で小さな黄色の花が2つ、風に揺れている。

最初の一歩を踏み出して人生が始まる。歩きやすいところもあれば、でこぼこしたところもある。登山道は、先人が作った道標(みちしるべ)もあり、迷うことなく、緩やかな坂を時折吹く柔らかな風に押されて上っていくことができる。

小枝にとまっていた小鳥が、話しかけてくる。「元気かい!」のようなたわいもない会話をしていると、何羽かの小鳥が集まってくる。私の登山に付き合ってくれると言ってくれて、そこから一緒に過ごしながら進んでいく。いつしか楽しい会話も途切れて、登山に夢中になっていたら、小鳥たちはもうどこかにいってしまったようだ。

霧の中、吊り橋が見えてきた。頂上に行くためには渡らなければならない橋。一歩踏み出すたびに橋は揺れる。遙か下には細い川が見えている。少し怖い気もするけれど「ゆっくり、慎重に行けば大丈夫」と自分に言い聞かす。あと1メートルというところまで来ると安堵する。

青空とぽっかり浮かんだ雲を見ながら歩いていたけれど、いきなり木々に覆われた鬱蒼とした道に入る。光が差し込む余地のない暗く長い道がどこまでも続く。深い森のような場所。静寂があたりをつつみ、ザクッザクッという足音と背中で揺れるリュックの音があるだけ。ひとりぼっちで、いつしか不安も生まれる。いつまでこんな道が続くのだろう。そう思っていると、遠くに光が射している場所をみつける。少しずつ明るさは増していき、森の木々の間から大きな草原が垣間見えてくる。

急に明るいところに出たので、目が慣れずに光が眩しい。山小屋があり、一休みすることにする。中には何人かの登山客が寛いでいた。椅子に腰掛け、川で汲んだ水を一口飲む。隣に座っている人が話しかけてくる。昨日まで山頂の天候が悪くて、足止めされてここで過ごしていたと言う。話しているうちに楽しくなり、仲良くなり「この人と一緒に山頂を目指したい」と思う。「一緒に山頂まで行きませんか」と誘う。山小屋の玄関を一緒に出て、見晴らしが良くなった山頂を目指す。

なだらかな道もある。険しい道もある。晴れもある。雲行きが怪しくなることもある。励まし合うこともある。気まずくなることもある。一緒に息を切らして一歩一歩進んでいく。

山頂まであと少し、青空の中、ゆっくりと動く雲の隙間に頂上が見えている。自然と笑顔になる。これまでの長い道程がうそのように、心も身体も軽やかになる。生まれて最初の一歩を踏み出したときに足下に咲いていた黄色い2つの花は今も応援してくれているように思う。

頂上に立つ。遠くにある雲が、自分が立つ同じ高さに見えている。流れゆく雲が、まだ人生が続いていることを教えてくれている。「与えられた人生の時間」と「自らの意志」には接点がない、その曖昧さに心がほぐれていく。

今、生まれたばかりの人もいる。小鳥たちと楽しく話している人もいる。吊り橋を一生懸命渡っている人もいる。鬱蒼とした道を歩いている人もいる。山小屋で一休みしている人もいる。山頂が見えてきた人もいる。山頂にいる人もいる。
どの一瞬も人生を研ぎ澄ませてくれている貴重な時間。

心が今とても穏やかです。安心と幸せの中にいます。

ゆっくりと、もともとのあなた自身を感じていきます。
目を閉じたまま、だんだんとご自身に戻っていきます。
自分自身を感じていきます。全身を左右に少し動かしてみてください。
手の平を広げてください。

「心に秘めた山頂が、今を生きる喜びを作っている」その幸せを感じています。ご自身がかけがえのない存在であることを思い、安心と幸せに包まれていることを感じます。

ゆっくりと目を開けてください。
ありがとうございました。
今、素晴らしいエネルギーに包まれ、満たされています。
すべてがひとつということは、あなたはすべての命「ひとつひとつ」であるということです。
良い一日をお過ごしください。」

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