奈良クラブを100倍楽しむ方法#0
奈良に住んで40年。生まれも育ちも奈良である。小学1年生からサッカーを始め、5年生のときにJリーグが開幕。それまで日陰者のサッカー部が一躍スクールカーストの上位になるという革命的事件を経験した身である。しかし、奈良には致命的な弱点があった。そう、奈良にプロクラブがなかったのである。大阪には大きなチームが二つあり、どちらもスポンサーも太く優勝争いも経験するほどの実力がある。日本代表に選ばれるほどの有力な選手も多く在籍している。ゆえに、奈良にプロクラブがなかったとしてもそれほど疎外感は感じなかったのは事実だ。それでも。。。奈良にプロクラブがあれば、という思いはあった。
そもそも、奈良は「プロ」スポーツが根付きにくいように思う。奈良は「大仏商法」などと呼ばれるように、観光資源は豊富だ。黙っていても、それなりに観光客を呼び込むことができる。だから、逆にそれ以外で自分たちをPRすることが上手くない。観光資源以外で、新しい魅力を発信することに慣れていないのである。アマチュアレベルでのスポーツは割と盛んで、各地でそれなりのイベントが行われたり、活躍しているチームは存在する。プロレベルで、ある程度商業化もしながら、大きく活躍する規模になるところで、非常に大きな壁があるように感じる。
そんななかで奈良クラブは、奈良で初めてJリーグに参入したクラブになった。これまで奈良クラブの活動は遠巻きに眺めてきたが、紆余曲折があり、2023シーズンからJ3に昇格することができた。昨年の順位は5位である。昇格したチームとしては非常に立派な結果だと思う。選手も非常に個性豊かで、魅力があるチームになっている。PRするには十分すぎるぐらいのチームだ。もちろん、チームもさまざまにPRはしているが、もっと草の根的なPRをしても良いのではないか。そう思い、2024シーズンは奈良クラブを定点観測的に記録するnoteを始めることにした。題して「奈良クラブを100倍楽しむ方法」である。
フットボールには「見る専」といって、「プレーしないけど見るのが大好き」という層が他のスポーツよりも多く存在する。フットボールというスポーツの性質上、不確定要素が多いこと、弱者=敗者にはならないこと、工夫次第で戦えること、など、戦術という要素が大きいことがその理由と推測する。皆、何か語りたくなるスポーツなのだ。YouTubeでもフットボールを解説するチャンネルは無数にあるのはそのためだ。同じ試合でも、「良い」という評価と同時に「悪い」という評価が成り立つのがこのスポーツの面白いところである。また、負けたときの原因が「実はよくわからない」こともあり、それゆえ議論が白熱する。野球との一番の違いはおそらくここであろう。色々議論するが、実は「本当のところ」はよくわからないのである。だから、面白い。
奈良クラブは野心的なクラブである。「本当のところはよくわからない」が、「こうすれば負けない」というセオリーがあることはフットボールの常識である。いわゆる下部リーグから昇格したクラブは、基本的に「負けない」ことを優先する。その戦術は一部では「アンチ・フットボール」「つまらない」「結果重視」と言われることもあるが、背に腹は変えられない。にもかかわらず、奈良クラブは強者の戦術、ボールを支配して勝つことを志向している。それは監督のフリアンがバルセロナ近郊の出身で、FCバルセロナのようなフットボールを目指しているからだ。チームとしてのビジョンもロマンチックなら、その体現しようとしているフットボールもかなりロマンチックなものである。このロマンに共感できるかどうかが奈良クラブの最大の魅力なのだが、戦術の部分では伝わり切っているように思えない。ここは少々解説が必要な部分であると考えている。
2024シーズンは、実際に現地で観戦したり、テレビで観戦しながら、奈良クラブのロマンチックな戦術について語ろうと思う。先に言っておくと、ロマンチックであることは、イコールで常に魅力的であることではない。ダメな時は徹底的にダメなこともある。魅力的とは言わず、ロマンチックだと表現するのはそのためだ。本当にどうしようもない試合をしてしまうこともある。それは、フリアンの故郷のFCバルセロナも同様の性質を備えていることでもわかる。そういうところもひっくるめて、ダメなところも好きなるということが愛するということなのだと思う。
奈良クラブはJ3で優勝できる実力は十分にある。もしかしたら、ぶっちぎりで優勝してしまうかもしれない。しかし、まったく同じ要素で、中位以下に沈んでしまうことも十分に予測できる。そういうフットボールを志向しているのだから仕方がない。どんな目が出るかは、終わってみなければわからない。それでも、昨年以上に今年は自分たちのやりたいことを前に押し出してくるように思う。
まずは今週末、開幕戦である。昨シーズンの良さと悪さをどのように改善し、新しい選手がどんな活躍をするのか、現地で見てこようと思う。
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