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奈良クラブを100倍楽しむ方法#039 ”僕らが旅に出る理由”

 2024年も終わろうとしている。このnoteを初めてちょうど一年になったわけだ。奈良クラブについては、全試合とは言わないまでもリーグ戦のほとんどの試合をレビューを書くことができた。2024年の奈良クラブは、J3昇格2年目というなかで、結果的には降格争いをしつつ、辛くも残留を果たしたと総括できるシーズンであった。一文にしてしまえばそれだけのことではあるが、この一年は実に様々なことがあったことは、これを読んでくださる人には言うまでもないことではあろう。


僕がnoteを書く理由

このnoteを始めるにあたっては、実に様々な要因があったのだけど、2023年は僕の周りで「奈良クラブ」に関わることがたくさんあったと言うのが一つである。性格上、色々なところに顔を出してしまうのだが、公私ともども、至る所で「奈良クラブ」に出会うことが多かった。「奈良クラブからこっちに寄ってきている!」と思わざるを得ないくらいに。試合もちょくちょく見に行ってはいたが、これはちゃんと応援せねばなるまいと思った。
さて、「応援する」とは決めたものの、自分はどういうふうに応援すれば良いだろうか。ゴール裏で声を出すのも悪くはないのだが、試合を俯瞰して見ることが好きなのでそういうノリではない。何か自分にできることはないだろうかと考えていたのが、ちょうど昨年のこの時期だった。昨年は奈良クラブのレギュラー選手の出入りが割と激しい一年だったように記憶している。昇格したときの選手たちが入れ替わり、新しい選手が加入する。プロチームなら当たり前の光景であるが、特に浅川選手がそうなのだが、チームと顔と言える選手であってもJリーグの選手の流動性には抗えない。しかし、彼らがこのチームにちゃんといて、それをなんらかの形で記憶していくこと、あるいは、記録していくことが大事なのではないかという思いにいたった。
加えて、これは前監督のフリアンのときが顕著であったのだが、奈良クラブの戦術の特異性をもっと知らせた方が良い、という思いがあった。当時のやろうとしているフットボールの質は、J3というカテゴリーにおいてはかなり高飛車で異質なものだった。相当にチャレンジングなことをしているなあと思ったが、それを読み解いていくことに面白さを感じていた。これは1人で楽しむよりも、誰かにお知らせした方がもっと面白いに違いない。こちらの面白みは監督の交代で趣向がやや変わるのだが、それでも「チームとしてどうしようとしているのか」を考えるのがフットボール観戦の醍醐味だと思うので、監督が変わったからといってそれがなくなったかと言うと、全くそんなことはない。
結果的に、この年にnoteを始めて良かったなあと思う。それだけ、奈良クラブにとっては激動の一年だったし、奈良クラブとしてどうあるべきかを問われたシーズンでもあった。記憶に残る一年だったのではないだろうか。

自己満足的な特選記事

かなり自己満足なのだが、今年書いていて印象的だった記事を二つ紹介する。一つ目は第25節、ギラヴァンツ北九州戦だ。理由はよく分からないのだけど、この記事は1000ビューを超えている。ありえない数字だ。北九州にはnoteで試合を振り返るカルチャーが根付いているのだろうか。基本的に、奈良クラブだけでなく相手チームであってもリスペクトを欠かさないという姿勢で記事は書いているので、相手サポーターさんでも「読んでよかった」と思ってもらえると、とても嬉しい。

この試合はX友達の加湿器さんもロートフィールドに来られ、「焼肉丼はじめ」さんや「喫茶バルドー」さんといった奈良クラブサポーターショップを回ったあとに試合を観戦し、「ゆららの湯」で汗を流して解散という「奈良クラブフルコースツアー」をした日でもあった。2024年の中でも、記念碑的な1日であった。ちなみに、X友達という言い方はなにやら秘密結社っぽい響きがあるので、地味に気に入っている。Twitterではなく、Xになったことで良かったことはほとんどないが(笑)、これは良かったことかもしれない。
試合についてはここに記した以上のことはないのだが、この試合のサブタイトルにしたおおはた雄一さんの「かすかな光」という曲は、聴いて貰えばわかる通り、失恋というか別れを歌った曲である。最近の言葉でまとめると、「もう脈がないのはわかってるけど、ワンチャ縁を戻すことができませんか」というものだ。「離れてしまうその前に、強く手を握っていて」というフレーズがとても印象的である。多分この日のスタジアムにいた人は「そうだったなあ」共感いただけると思うが、「これはフリアンの更迭も現実的にあるかもなあ」という雰囲気があった。「それだけはやめてくれ」という願いと、「でも、そうでもしないと残留できないかも」という危機感とで板挟みになり、やり場のない気持ちをどう落ち着かせようかと悶々としていたのを思い出す。また、この時は絶好調だった北九州の完成度の高いプレーを目の当たりにしたのもよく覚えている。奈良クラブを研究しつくした上で、彼らのストロングポイントをしっかりと出してきた、北九州にとってはベストゲームの一つだったと思う。

もう一つは、悪夢の今治戦を経ての第27節カターレ富山戦だ。そういえばこの試合も加湿器さんがロートフィールドに来ていた。もう奈良に住んだら良いのではないだろうか(笑)。

この試合は、なんというか、戦術云々ではなく、奈良クラブのパッションが感じられる一戦だった。結果的に、北九州戦で感じた印象は現実のものとなり、フリアンが更迭され、中田一三監督がやってきた。何がどう変わるのか、このシーズンがどう進んでいくか、胸いっぱいの不安と一握りの希望を携えてスタジアムに行ったのを覚えている。この試合における伊勢選手の身体を張ったプレーには本当に魅せられた。富山の攻撃を跳ね返し続け、チームを鼓舞し、90分間気持ちを切らさずにプレーしていた。
そんなパッションが溢れる内容の一方で、戦術の変更からもうあのサイドいっぱいに張り出したウィングがドリブルを仕掛ける奈良クラブ独特の展開は見られないのかという一抹の寂しさもあった。それでも、前に進もうとする選手たちを後押しする言葉はないのか、と考えた挙句「等身大」という表現をすることにした。
「等身大」という言葉が出ると、あとは自然に書くことができた。この試合のスタジアムの雰囲気を含めて、こんなにスラスラと書けたという試合はない。試合後の鈴木選手の熱のこもったスピーチまで「書ききった」という感じがした。文体が揺れているし精度もそこまで高くないのだけど、迷いなく書いているように思う。そういう雰囲気の試合だったということが伝われば幸いである。

岡田優希選手と話したこと

先日のシーズン報告会では、岡田優希選手と話をすることができた。まさかの岡田選手から話しかけてもらい、こちらはあわあわしていたのだが、琉球戦のインタビューで言ったことの真意がちゃんと伝わっていて嬉しかった、というようなことを伝えていただいた。

ウィングの岡田優希がここに来て完全フィットの様相だ。累積警告で出られなかった嫁阪も帰って来る。西田や田村も好調を維持している。翼を大きく広げた奈良クラブはかなりやりにくい相手だろう。岡田優希は試合後のインタビューで「まだ昇格を口にする段階ではない」と言った。しかし、それは「そこまで追いついてやるからな」という決意表明でもある。

奈良クラブを100倍楽しむ方法#021 第22節対FC琉球 ”Movin' On Up"

ほんの数行のことに言及いただき、非常に恐縮するとともに、実に光栄でもあった。また、岡田選手からは「チームの外側から、自分たちがどのように見えているのかについて、フィードバックしてくれるのはとても嬉しい」というようなことも伝えてもらった。来シーズンも、全ての選手とチームへのリスペクトを欠かさずに、前向きなフィードバックができればと思う。
そのために、もう一度基本的なフットボールの知識もブラッシュアップしなければならないし、もっと確固たる視座を獲得する必要があると考えている。個人的には「奈良クラブ 大人のサッカースクール」にて、ピッチ目線での試合の見え方や感じ方をもっと学ぼうと思う。スクールに通い始めて、フットボールの試合を見ると、選手の何気ないプレーやポジショニングにも「なぜここでターンできるんだ」「この立ち位置はいやらしいなあ」など、かなりシンクロ率を上げて観戦できる。ナラディーアでは月2回コースが実施されているが、1回の試合デーだけではなく、2回の練習デーがとてもおすすめだ。練習メニューはかなり難易度は高いのだが、これを経験して試合を見ると間違いなく世界観が変わる。時々トップチームとも交流ができるので、とてもおすすめです。

最後に、奈良クラブを離れる選手たちへ

岡田選手とのやりとりもあり、またオフシーズンの鈴木選手とのやりとりもあり、こうして奈良クラブに対して応答することは無意味ではないのだ、という実感を持って2024年を終えることができるのはとても嬉しい。うまく行ったシーズンとは言い難いが、だからこそ「ちゃんと後押ししているよ」「声は届いているよ」という姿勢を示すことは重要だったのかもしれない。おかげさまでいろんな人からも声をかけていただき、この一年は僕自身もいろんな人との繋がりが生まれた年だった。「いつも読んでます」と言われるとまだどうお返事して良いのか分からないのだけど(笑)、来年も「面白いなあ」と思ってもらえる文章を書けるようにがんばります。

ただ、やはり今シーズンで奈良クラブを離れる選手は寂しさでいっぱいだ。特に、伊勢選手と西田選手は昇格時のメンバーでもあり、思い出も思い入れも多い。彼らを奈良クラブの選手としてここに書くことができない寂しさというと、なかなかに辛いところがある。引退される小谷「選手」や寺島「選手」は、もう「選手」として書くことができない。サポーターの端くれですらここまで寂しいのだから、近しい人たちにはなおさら寂しいだろう。またきっと、どこかで出会うこともあるはずなので、そのときは笑顔で再会できればと思っている。どうか、奈良クラブだけでなく、奈良クラブを離れる選手にも素敵な未来がありますように。そんなことを願いつつ、2024年の締めとしたいと思う。

小谷選手、本当にお疲れ様でした。

1年間のご愛読、誠にありがとうございました。僕の自己満足で始めたnoteがこれほど多くの人に読まれることになるとは思ってもみなかったので、非常に嬉しく思っています。人生、生きているとまだまだ面白いことがあるものですね。一年前では想像もできなかった年末を迎えることができました。
また来年もスタジアムやイベントでお会いできることを楽しみにしています。それでは、良いお年をお迎えください。


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