奈良クラブを100倍楽しむ方法#037 第37節対 いわてグルージャ盛岡 ”Walking In The Rhythm”
フィッシュマンズのことを語るというのは、極めて個人的な感情を語ると言うことである。フィッシュマンズというバンドは「知らない」か「大好き」かに二分されるくらい好き嫌いが別れるみたいだし、「知っているけど好きではない」という人が少ない。「知っている人」は漏れなく好きというのがフィッシュマンズのファン層のように思う。それは多分、フィッシュマンズの楽曲が個人的な思い出のBGMのように絡みついているからではないか。もっというと、「好き」というよりも「好き嫌いを通り越して自分と不可分なもの」という感じだろうか。だから、フィッシュマンズというバンドや楽曲について語るということは、必然的に「自分語り」に近いものになる。
J3リーグ第37節、奈良クラブ対いわてグルージャ盛岡の一戦は、おそらく今シーズンの奈良クラブの戦いのなかでも「あの時は〜だったなあ」と振り返る試合になっただろう。ともあれ、奈良クラブはこの試合を1−0で勝利し、自力でのJ3リーグ残留を確定させた。きっと、これを観戦された人の頭の中では、お気に入りの楽曲が鳴り響き、勝利のファンファーレを挙げていたのではないだろうか。ちなみに、僕の試合中の頭の中をずっとループしていたのがフィッシュマンズの「Walking In The Rhythm」だった。
勝利のファンファーレというには、少し趣が違うかもしれない。延々と同じメロディをループしながら、確実に、まさに歩くように曲は進んでいく。パッと聞いた時、この楽曲の前進するマインドはどこにあるのかよくわからなかった。今日の試合で妙に納得した。これは(あるかないかは別として)未来への希望を歌った曲なのだ。
試合前の熱気
午前中に奈良クラブの主催する「大人のサッカースクール」に参加していたので、この日のロートフィールドへの到着は11時を少し過ぎた時刻だった。バンビシャスも同日開催されるから駐車場は満車。パーキングに車を置いてロートフィールドへと向かう。
到着。いつもと何かが違う。皆楽しそうではあるが、「ホーム最終戦で勝利し、自力で残留を決めるのだ」という「祈り」というよりはそれぞれの「決意」がみなぎったコンコース。最終的にこの日の入場者数は2400人を超えるサポーターが集まったということだが、その数字以上にこの日は後押しを感じた。月中旬なのに20度を超える気温も相まって、ロートフィールドの熱量は今シーズンのなかでもかなり高かった。FC大阪戦のときとも違う、大宮戦のときもとちがう。いろいろあった今シーズンだったが、ハッピーエンドで終わりたいというサポーターの気持ちが見えるようだった。もちろん、僕のテンションも高い。
先発メンバーと相手の分析
奈良クラブの先発メンバーである。基本的には前節の相模原戦と変わっていない。変更されたのは田村に代わってパトリックが起用されたことだ。
起用の意図を考えてみよう。相模原戦で見せた奈良クラブの変則3バックシステムは、相模原に混乱をもたらした。結果、内容ともに奈良クラブの完勝というべきものであったが、これが効果的に機能したのは、このシステムの初出しがこの試合であり、相手が対応するまでの間を与えなかったことも一因と考える。盛岡は当然相模原戦を見てくるわけで、このシステムへの対策を1週間練ってきていることだろう。後ろは連携の面でも選手は変えにくい。となると、パトリックを起用することで縦への推進力をもっと得たいという意図だったのだろうか。あるいは、クロスへ合わせる選手を増やしたいということかもしれない。後述するが、この意図は結果的にあまり当たらなかった。前半、奈良クラブは盛岡の守備ラインを崩すことにかなり手間取るのだが、パトリックの課題が浮き彫りになったようにも思う。
盛岡はJ3において最下位が決定しているというチーム状況だ。決定前の試合をいくつか見ていたが、「まさかこのチームが最下位とは」と思わせうくらい良いフットボールをしていた。だからこそ、内容に対して結果が伴わないと、プレーに無駄な力みが生まれたり、ありえないような凡ミスが出てしまったり、不運なボールのこぼれ方に見舞われたりする。正直、彼らの実力と最下位という順位は全く釣り合わない。ただ、どこかの歯車が噛み合わないまま、またそれが些細かつ決定的なことのおかげで、このようなシーズンになってしまったというべきだろう。全ての試合を見たわけではないのでここでそのことについての言及は控えるが、奈良クラブも一つボタンをかけ違えば同じような状況になっていたと思うと、他人事では済まされない。中田一三監督の手腕によって、どうにか軌道修正されつつる奈良クラブと、最後までそれができなかった盛岡という対比は今シーズンの総括をする上でも興味深い対戦であった。
盛岡は順位が決定しても強度の高いフットボールは維持している。決して自暴自棄になっているという様子はない。ただし、やはり状況がそうさせるのか、プレー全体において、特に守備面において顕著であるが、チームで守ると言うよりもそれぞれが正対する1対1に勝つという個人戦略の連続になっていまっているせいで、カバーリングであったりマークの受け渡しといった連携のところで綻びが見られた。奈良クラブとしてはこれを突いていくことが得策と考えられる。こういう時の作戦は2パターンだ。一つ目。個人戦略に対して集団戦法で対応し、局地的な数的優位を作って相手を崩壊させるパターン。二つ目。逆に1対1に応戦し、各個撃破することで崩壊させるパターンだ。奈良クラブは全体的には連携から打開を図っていたが、この日絶好調の吉村には各個撃破させるような仕向け方をしていた。非対称の両サイドの舵取りを担ったのは前半は都並選手、後半は岡田優希選手である。彼らの立ち位置の変化を中心にこの試合を追っていこう。
前半:待ちに待った酒井のゴール
前半開始。どちらかと言うと奈良クラブがボールを握るが、前節のようにスイスイと前進していくというような感じではない。それは盛岡のライン設定が割と低い目だったことが要因と考えられる。盛岡はプレス開始位置をハーフウェイラインあたりに置き、基本的に奈良クラブがボールを保持すると自陣へ撤退する。相模原はディフェンスラインまで追いかけようとする前線と、相手選手を捕まえきれない守備陣の間延びしたライン間にできたスペースを有効に使うことでパスが面白いように回ったが、盛岡はそこをきちんと意識の統一してきた。また、保持の時はリスキーなパスではなく、しっかりと丁寧に繋ぐことを徹底する。奈良クラブは前線から奪いにいこうとするが、どうにもパトリックのところでボールが捕まえきれず、ここからプレスを回避されているように見えた。特にこの辺り、新里がうまく奈良クラブのプレスの切れ目にポジションを取り、ボールを逃しているようだ。この予想は当たり、前半の20分あたりからパトリックと酒井の位置を入れ替える。相手はこれを嫌がってやや強引な攻めに転じたところを奈良クラブがボール奪取。急がない奈良クラブが今度は丁寧にボールを回し、相手の出方を探るという睨み合いの様相を見せる。
ここで少し立ち位置について話を掘り下げようと思う。この日の午前中に参加していた「奈良クラブ、大人のサッカースクール」のテーマは「運ぶドリブル」だった。「運ぶドリブル」とは、相手を抜きにかかる勝負のためのドリブルではなく、いつでもパスが出せる状態でドリブルで相手に迫っていくプレーである。練習のなかでコーチから興味深い解説があった。要約するとこういうことだ。
ボールを取られることを怖がって相手から遠い場所からパスを出すと、一見ようプレーに見えるがそうではない。できるだけ対面する相手の近くまで運び、そこでパスを出せばパスの受け手がよりフリーな状態で受けることができる。受け手のプレーの幅を確保するためにも、怖がらずにドリブルで相手に向かっていくプレーをしよう、というものだった。
聞いたときにはなるほどと思ったが、その記憶も新しいままに実際の試合を見ると、これはディフェンスする側にとっても重要な内容であることがわかる。つまり、ディフェンスは無闇に寄り過ぎてはいけないということだ。相手がプレーに余裕があるなかでボールホルダーに寄せすぎるということは、そのボールがパスされたときは受け手の自由度を上げてしまう。プレッシングとはむやみやたらとボールに寄せるのではなく、いかに寄らないか、いつ寄せてボールを奪いにいくかが重要だということだ。(ユルゲン・クロップの実践した”ゲーゲンプレス”や”ストーミング”という戦術はいかに規格外なものかというのも再確認できるだろう)
パトリックはおそらく非常にモチベーションは高かったと推測する。そのモチベーションの高さゆえに相手に寄せようとしすぎたのではないか。彼のところでプレスが剥がされていたのは、こんな理由だったように思う。酒井はそこまで近寄らないが、ここというときに奪いにいく。そういったタイミングや勘のようなものも、チーム戦術のなかでは重要になるのだろう。
さて、話を試合に戻そう。ラインが深めに設定されているおかげで、盛岡の左サイド加々美はほとんどディフェンスラインに釘付けといった印象であったが、その分河辺や道本といったところがチョロチョロとボールを受けにくるのでここも止めたい。これの対応に動いたのが都並だ。擬似サイドバックのような役割の彼は、試合の中盤から生駒のすぐ横あたりにボジションを取り、ここでのパス交換でボールを安全にキープする。加えて、この絞った位置から前へとプレスをかけ、相手のシャドーの動きを封じ込める。この対応は盛岡にとっては想定外だったようで、ボールの出口を失った盛岡はほとんどボールが前に進まなくなる。逆に奈良クラブは後ろで安定してボールがキープできるようになったことで、両サイドや神垣、中島といったところがゴール前の高い位置まで押し込み始める。
前半も半分を過ぎると連続するコーナーキックや、パトリックの惜しいシュートなどもあったが、得点には至らない。できれば前半に点を決めて楽になりたい。ゴール裏も同じ気持ちだったのだろう。終盤になって、ここでとっておきのチャント「アッコの舞」でチームを鼓舞する。このタイミングでこの応援は完璧だと思った。そして、その声に応えるように、前半も終わろうかというタイミングで待望の先制点が生まれる。決めたのはついに、ついに、ついに復活のゴール、酒井達磨選手だ。
相手の深いライン設定に対して、ハーフコートマッチで押し込む奈良クラブ。前半最後の攻撃になりそうなところで、ディフェンスラインで相手の様子を伺う。この時生駒は相手陣内の真ん中あたりでボールをキープ。フリアン時代以上の押し込む姿を見せる。右サイドに展開したパスを受ける小谷。ここに神垣や岡田、酒井も顔を出しているので、盛岡はどうしてもこちらをケアせざるをえない。小谷はここで強引にクロスではなく大外でドフリーの吉村にボールを預ける。対応するのは宮市。ただし、ここでセンターバックの宮市が対応に出てきている時点で中のマークはずれていると考えて良い。この試合を通じて攻守において圧倒的なパフォーマンスを見せる吉村はクロスを蹴るのか、ドリブルで抜きにかかるのか、あるいは走り込んできた神垣へパスを出すのか、何をするのかわからないような状況を全て利用したフェイントをかけ、一瞬できたコースから中へと猛然と切り込む。この時の突進する勢いはすごかった。良いディフェンダーほどこうした勢いに反応してしまう。咄嗟に立ち塞がる盛岡のディフェンス陣。しかし吉村はそんな対応を嘲笑うかのようにスッとパスを蹴る。出た先は岡田優希だ。ワンタッチで反転した岡田は振り向きざまにシュートを放つ。これは枠をそれてしまうが、しっかりと詰めていた酒井が抜群の反応を見せゴールへと流し込んだ。奈良クラブ、先制。残留に向けた大きな大きな一点。しかも、怪我で今シーズンは絶望かと思われたエースがホーム最終戦でゴールを決める。リハビリから復帰後、「やはり酒井だ」と思わせるプレーを見せていたが唯一なかったゴール。まさかこの試合でやってのけるとは。持っている男は違う。
また、この時の岡田優希選手の表情や立ち振る舞いはチームのリーダーとしての振る舞いだった。シーズン前半はどちらかというと「孤高の存在」という雰囲気であったが、残留という明確な課題ができてからの彼の立ち振る舞いは非常に頼もしさを感じていた。酒井のゴールを誰よりも嬉しそうに祝っている彼の表情に目頭が熱くなる。だめだ。直視できない。こんなシーンが用意されていたとは。。。そして前半終了。帰ってくる選手たちをゴール裏、メインスタンド双方から大きな拍手で出迎える。それに応える選手たち。この試合、絶対に勝たなければならない。引き分けでも良いなんてことではない。勝って残留を決める。是が非でも、今日は勝ちたい。
後半:歩くようにプレーする
ハーフタイムのチアのパフォーマンスも終わり、後半が開始する。そういえば、チアのパフォーマンスも今年は見納めだ。音響の問題や豪雨のなかでも、彼女らは懸命に踊り、選手をサポートし続けていた。彼女らのためにも、勝利で終わりたい。これは至上命題だ。
後半開始からボールを握るのは奈良クラブ。前半の立ち位置の変更だけでなく、明らかに狙って形を変えてきた。それが岡田優希選手の立ち位置の変化だ。なかなか自陣から出てこない盛岡を誘き出すため、マイボールのときは岡田が左サイドバックくらいの位置までが降りてきてくる。その分、西田を高い位置に押し出し(実際、岡田は西田に「もっと前に張り出せ」と身振りも踏まえて指示をしている)、自分にマークを寄せることで西田をフリーにしようとする。ただしこの立ち位置が絶妙のところなのだ。岡田優希は相手にとって危険な選手なので、フリーにしすぎるとドリブルでスピードに乗って勝負をかけてくる。しかしここでウィングバックが彼にアプローチしてしまうと西田がフリーになる。2シャドーがズレるのが一番移動の幅は短いが、こうなると次は後ろでサポートする都並がフリーになる。全体を前に押し出すと、今度はそれでできたスペースを神垣やパトリックが狙う。この立ち位置のズレが生じてしまい、盛岡は岡田を捕まえることができない。
加えて、前半からかなり奈良クラブに走らされていたこともあり、守備に遅れが見え始める。奈良クラブとしては無理に攻め立てるというよりも、相手が弱るのをじっくり待とうという感じで、ゆっくりではあるが確実に相手を消耗させていく。まさに「Walking In The Rhythm」という感じで、ループする音楽に乗せながら気持ちよくプレーができているように見えた。スペクタクルやカタルシスが足りない内容なのだが、このポゼッションは遅効性の毒のように相手にはかなり効いているようだ。事故的な失点の可能性もゼロではないが、よほどのことがない限りこの試合は奈良クラブが勝つだろう。相手の攻撃にもそこまで迫力を感じない。守護神岡田慎司を脅かしたのは後半の入りだけで、基本的には落ち着いて処理すれば大丈夫という雰囲気だ。試合巧者である。
ここからの時間の使い方においても、都並が抜群に上手かった。あえてワンテンポ遅らせることで全体に落ち着き、息をする時間を作ってくれる。ゆっくりと歩くようにプレーする都並。焦って蹴り出さないので、全体が落ち着いて見える。小谷や岡田らはさかんに声を掛け合い、集中力を切らさない。素晴らしい雰囲気のチームにサポーターも後押しをする。
選手の立ち位置の違いについてはデータサイトなどでご確認いただきたい。特に都並選手のヒートマップは必見だ。相模原戦と比較すると、中央でのボールタッチが非常に多いことがわかる。試合後の交流イベントで「立ち位置の変更が絶妙でした」と声を掛けさせてもらうと、かなりドヤ顔でニヤッとしていたので、本人も狙い通りのスライドだったのだろうと思う。微妙な違いなのだが、そこが明暗を分ける。
さて、試合は終盤に差し掛かる。ここからは奈良クラブにとってはボーナスタイムでもある。この試合の殊勲である酒井、右サイドを1人で制圧した吉村が交代。大きな拍手で迎えられる。また、この日も猛烈な運動量で奈良クラブのダイナモとして走り切った神垣、試合をオーガナイズした立役者の1人岡田優希も交代。松本、嫁阪、山本、國武が試合を締めに入る。交代の時もしっかり時間を使うことを忘れない。前節もそうだったが、こういう時の神垣はカードを貰わないぎりぎりのスピードで帰ってくる。盛岡の選手がそこまで「早く交代してくれよ」というアクションを見せなかったところなどをみると、決着はついていたのかもしれない。
そしてついにタイムアップ。湧き上がる歓声。ピッチに倒れ込み勝利を噛み締める選手たち。これまで同じ姿勢の選手たちを見てきたが、それは悔し涙であったり、無力感であったり、ネガティブな感情であることが多かった。今日は違う。その姿は喜びに震えていた。こちらも勝利の喜びが心の底から湧き上がってくる。こういうところが見たかったんだ。
点差こそ1点だったが、中田監督になってひとつひとつ積み上げてきたことがとうとう形となり、試合としては盤石という印象だった。ホーム最終戦での勝利、J3残留という目的の達成、連勝という結果もさることながら、やっとこのチームが勝ち方を体得できてきたという実感があった。ここまでになるにはかなり時間を要したが、来年へとつながる勝利でもあったように思う。
今シーズンを糧として
第6節のカマタマーレ讃岐戦の僕のレビューには、こんなことを書いていた。また、試合後のセレモニーでは小谷キャプテンも同様のことを口にしていた。
自分がこうだと思うこと、ということで、僕はとにかくこのnoteを更新し続けることを決めた。シーズン当初はもっと楽しくポップな戦術解説のつもりで始めたが、ところがどっこい、今シーズンは汗と涙と根性のシーズンだった。苦しい試合のときは、かなり正直に「苦しい」と書いたこともあった。そんな更新を続けていると、スタジアムやイベントで「いつも読んでます」と声をかけていただくことも増えた。ありがたいことです。結局のところ、どのスポーツでもたまに聞く「勝つ気があるのか」という内容の批判が一番嫌いなんです。「勝つ気」なんてあるに決まっている。でも、勝てるとは限らない。だからこそ勝敗だけでなく「どのように勝とうとしたのか」「何が達成できて何が未達なのか」をできるだけ言語化したいと思っていた。フットボールの言葉だけでは足りない部分は、音楽の価値観を援用することにした。好きなものを詰め込むだけ詰め込んで、前向きな応援ができるような、そういう後押しができればと思っている。これは奈良クラブの名物サポーター、遣唐使さんの姿を見たからでもある。彼の声援にどれだけの人が勇気を得ただろうか。尊敬すべき人物である。
まだ1試合残しているとはいえ、このシーズンがエピローグに入ろうとしていることは事実だ。「これからも何度となく」と自分で書いておきながら、心が痛い試合を今シーズンは何度も経験した。勝利目前で手のひらからこぼれ落ちた勝ち点を何度味わっただろう。ルヴァンでの大敗、ホームでの北九州戦、アウェーでの今治戦での大敗は、力の差以上に何かを突きつけられたような試合だった。ホームでの宮崎戦のラストは今でも長女がキレ散らかすほど悔しい結末だった。これほどまでに勝利とは遠いものかと思い知らされた。
しかし、悔しい試合だけではなかった。フリアンらしさを全開にして勝利した今治戦や琉球戦。ただひたすらに気持ちで勝負に挑んだ監督交代後の富山戦。生駒選手の奇跡のカバーリングを目の当たりにした大宮戦。そしてこの日の勝利。浮き沈みの多いシーズンではあったが、最後の最後でチームとして完成した姿が見れたことは素直に嬉しい。今シーズン、回り道と少なくない痛みがありながら、奈良クラブはチームとして一回り成長したように思う。この日のセレモニーで並ぶ選手の面々をみて、シーズン前とは随分と顔つきが変わったなと感じたのは僕だけではないと思う。シーズン開始当初は若々しさというか、経験値の低さをむしろ長所にしていくようなエネルギーを感じていた。今はどうだろう。勝つことへの執着を一番感じさせながらも、魅せるフットボールも求め続ける求道者のような雰囲気があった。
「Walking In The Rhythm」はフィッシュマンズのラストアルバム、「宇宙 日本 世田谷」の最後から2曲目に収録された一曲だ。このアルバムを最後に、フィッシュマンズは活動を休止、解散する。その後のボーカル佐藤伸治の急逝と続く。そしてフィッシュマンズは「伝説のバンド」となる。
音楽的な評価はその一つ前のアルバム「空中キャンプ」の方が高いのだけど、僕は「宇宙 日本 世田谷」の方が好きだ。単純に、好きなのだ。どうしてだろうと考えてみる。それは多分、音楽的に最高到達点を記録した前作を経過し、音楽業界の諸々をすべて経験したがゆえに達観のようなものを感じるからではないか。どこか肩の力が抜けたような、それでいて前作とはまた違う雰囲気があり、それでもやっぱり「これこそフィッシュマンズ」というサウンド。いくら聞いても飽きることがない。
今シーズンに何ができて、何ができなかったのかを振り返ることは非常に重要である。おそらく来年のJ3リーグは今年よりも拮抗した争いになる。大宮という巨大戦力が抜けることで、逆に戦国時代は加速するはずだ。すべての試合が6ポイントマッチという扱いになるだろう。ほんの少しのボタンの掛け違いが、シーズンの最後を全く違うものにしてしまう。来シーズンがどのようになるかは全くわからない。だけど、今はこのチームを見るチャンスがもう1試合あるということが幸せでならない。本当はもっと見てみたいチームだ。このチームが奈良クラブの歴史に大きな1ページを記録したことは、間違いない。ラスト1試合、今シーズンの奈良クラブを楽しみ尽くそうと思う。
フィッシュマンズというバンドについては、こちらの映画がおすすめです。彼らの人となりや音楽性などがわかります。僕は劇場で見てあり得ないくらい泣きました。フィッシュマンズを全く知らなくても、ものすごく心に刺さる映画です。ぜひご覧ください。
おまけ 「奈良クラブ 大人のサッカースクール」について
本文でも触れた通り、この秋から開講された奈良クラブ「大人のサッカースクール」に通っています。大人向けのサッカースクール自体はこれまでも開講されていましたが、ナラディーアでの開催はこの秋からでした。
コーチからはいわゆるエコノメソッドの初歩の初歩を噛み砕いて教えていただき、身体も頭もフル回転のメニューをこなします。そのあとは、練習を踏まえたゲームでキャッキャと楽しんでいます。めちゃくちゃ楽しいです。
先日の練習ではトップチームとの交流もあり、そんなことができてしまうのも奈良クラブならではという感じです。普通そんなことってないですよ。まさかJリーガーと一緒に練習できるなんて。。。こんな贅沢あって良いのでしょうか。鼻血が止まりません。
奈良クラブを好きになり、こんなnoteも書いているのでできるだけフットボールの試合を見ようと努力していますが、やっぱりプレーしてみることで感じる部分もあります。100倍楽しむためには、身体も張らないといけない!と感じている次第です。広告案件でもなんでもないのですが、1人でも多くの人と一緒に楽しめたらなあと思って勝手に宣伝しておきます!