What's come to be known as MMT その0

A:「MMTってきいたことあるかしら?」
B:「MMT?ああ、モジリアーニ・ミラー定理のことを、英語で言ったやつのこと?」
A:「何だその定理は?」
B:「おまえさん、たしか経済学部出身じゃなかったっけか。もしそうだとしたら聞いたことあると思うだけどなー」
A:「いや、わたしがきいたことあるMMTってのは、なんでもModern Monetary TheoryとかModern Money Theoryとかいう名前をもっていて、貨幣の「本質」とか財政金融「オペレーション」とかについて「記述」している理論のことらしいのだけれども」
C:「(MMTのことを貨幣の「本質」とか「オペレーション」とかの「記述」と言っている人たちがいるのか。ふむふむ)」
B:「何だその理論は!?しかも「ことらしい」とはどういうことか、いつもの自信満々なおまえさんらしくない」
C:「とりあえず現代貨幣理論と言う和訳で語られることが多いMMTについて、語り始めようか!」
A, B:「あのー、失礼でなければどちら様でしょうか〜?!」

……

"Like central banking, it's about price, and not quantity."(Warren Mosler[2012], Soft Currency Economics II, p. 80)
私なら「中央銀行業と同様に、大切なのは価格なのであって、量ではないのです。」と訳出してみるこの一文が、MMT(あるいはMMTとして知られるようになってきたもの、つまり"what's come to be known as MMT"のこと)を知っていく一つのきっかけになるかもしれない。
(Warren Moslerはウォーレン・モズラーとここでは訳出しておくが、Modern Monetary Theory(MMT)の創始者の一人である、とだけ現段階では述べておくことにする。)

……

"In recent years, MMT has been launched into the limelight, but it still faces huge barriers. Money is a difficult topic - even for those who want to understand it. While it would be nice if we could distil MMT down to a single nice catchphrase, I do not think that is possible. Money is hard stuff. It is contentious."(Randall Wray[2022], Making Money Work for Us, pp. 119-120)
「近年、MMTは脚光を浴びるようになったが、依然として大きな壁に直面している。お金というのは、理解したいと思っている人にとってさえ難しいテーマなのだ。MMTのキャッチフレーズをひとつに絞ることができればいいのだが、それは不可能だと思う。お金は難しい。論争もある。」(邦訳はdeepLによる)

(ちなみに、ゲーテの箴言の一つは次のように言う:

「えせ賢者たちは、何か新しい発見があるたびに、できるだけ速くそこから自分のためになにがしかの利益を引き出そうとする。つまり彼らは、それを広めたり、増補したり、改良したり、それをたちまちものにしたりし、場合によっては先取りの手まで高じて、空虚な名声を獲得することに努める。そして、このような未熟な行為によって真の学問をあやふやなものにし、混乱させるばかりか、学問のもっともすばらしい成果ともいうべき、その実際的効用の花を明らかにしぼませてしまう」(ゲーテ『ゲーテ全集13』潮出版社、邦訳275ページ)

説明が下手だの最初はこれでいいのだなどと宣って、自らの理解の至らなさを他者になすりつけるという、その空虚さと傲慢さを棚に上げることだけは一丁前以上に得意げに行っているものたちよ、De te fabula narratur! [ひとごとではないのだぞ!]
(だいたいにおいて、全ての理論は灰色なのだと言う趣旨のことを、ゲーテは「ファウスト」のメフィストテレスに言わせているようであるが、白黒つけられるような理論はおよそ理論の名に値しないと思われる。坂口安吾だってこう言っているのさ:「学問とは、限度の発見にあるのだよ。大ゲサなのは、子供の夢想で、学問じゃないのです。」とね。))

……

さて「中央銀行業と同様に、大切なのは価格なのであって、量ではないのです。」というモズラーの言及について、少し解釈を与えてみよう。中央銀行が行う政策をmonetary policy(金融政策)、政府(およびその下部機関)が行う政策をfiscal policy(財政政策)とこの記事の執筆者が、一旦のところ、分けてみた上で、「中央銀行業と同様に」と述べられたことの中身を検討する。モズラーに言わせれば金融政策がやっていることは次のことだと言う。

"Monetary Policy Sets the Price of Money, which only indirectly determines the quantity. It will be shown that the overnight interest rate is the primary tool of monetary policy. The Federal Reserve sets the overnight interest rate, the price of money, by adding and draining reserves. Government spending, taxation, and borrowing can also add and drain reserves from the banking system and, therefore, are part of that process."(Mosler[2012], Soft Currency Economics II, p. 14)
金融政策は貨幣の価格を設定する。しかし、金融政策は貨幣の量を間接的にしか決められないのである。これはのちに示されることだが、オーバーナイト利子率は金融政策の主要な道具である。連邦準備はオーバーナイト利子率を、言い換えれば貨幣の価格を設定するのだが、準備を増やしたり排出したりすることによって設定するのである。政府支出、租税、そして借入もまた、銀行システムから準備を増やしたり排出したりすることができる。そしてそれゆえに、政府支出、租税、そして借入はその過程の一部分なのである。」(邦訳はこの記事の執筆者による)

B:「オーバーナイト利子率とは何だねいったい。オーバーナイトだから夜を越すと言うことで、眠らぬ夜を過ごすと言うことかの。わしも若い頃は若気の至りとやらで、飲み散らかしたり語り散らかしたりしたものよ」
A:「(冗談か本気かよくわからないBさんのこの発言は置いておいて)えっと。ちょっと調べてみますかね。オーバーナイト利子率って何かしら」

The overnight rate is the interest rate at which a depository institution (generally banks) lends or borrows funds from another depository institution in the overnight market. In many countries, the overnight rate is the interest rate the central bank sets to target monetary policy. In most circumstances, the overnight rate is the lowest available interest rate, and as such, it is only available to the most creditworthy institutions.(https://www.investopedia.com/terms/o/overnightrate.asp 、2024年12月17日参照)
「オーバーナイト・レートとは、預金取扱機関(一般に銀行)がオーバーナイト市場で他の預金取扱機関から資金を貸し借りする際の金利のこと。多くの国では、オーバーナイト・レートは中央銀行が金融政策の目標として設定する金利である。多くの場合、オーバーナイト金利は利用可能な最低金利であるため、最も信用力の高い金融機関のみが利用できる。」(邦訳はdeepLによる)

……(今後に続く…はずです!)



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