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最後のピースが埋まらない場合には、フィリップ・K・ディックを
【その8】
「わたしを納得させてくれ、ベアフット。そしたら、わたしが世界を納得させる」
フィリップ・K・ディック
『人間以前 ディック短篇傑作選』
大森望 編
早川書房 2014年 259頁『宇宙の死者』
カート・ヴォネガットは文学界(そんなものがあるとすれば)では異端のようにも取れるけれど、SFの分野においては最も重要な人物のひとりだ。
私は、SF好きでヴォネガットのことが嫌いな人を知らない。
ところがフィリップ・K・ディックはそうではない。
ある種の美しさを小説に求める人には合わず、ある種の醜さを小説に求める人には合う、それがディックだと思う。
それは他人と共有するような小説ではなく、個人のための小説だ。
『欠陥ビーバー』という短篇がある。
虐げられた、どうしようもないビーバーが主人公で、話はよく分からない方へ向かう。
客観的にみて秀作とは言えないこの作品を私は気に入っていて、何度も読み返している。
たぶん、この小説でしか、ディックでしか、味わえない世界だからだと思う。
そして、それは私に必要な世界だ。