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頭の中が解き放たれてゆくかのようにして。

ビートルズの曲の中でどれがいちばん好きか?
なんてのはさ、それは、もう
そのときによってもさまざまなのだし、いわば
答えられないと言えば答えられないけれども。
でも、どの曲なのかって、ぼくのなかではじつは
決まっていると言えば決まっている。
その曲はね、アルバム「リボルバー」収録の
『Here, There and Everywhere』です。

『Here, There and Everywhere』という曲を
ぼくが好きな理由はね、WEBサイト
「ほぼ日刊イトイ新聞」で連載されておりました
読者からの質問に谷川俊太郎さんが答えるという
「谷川俊太郎質問箱」がもとになり、
2007年刊行されました書籍『谷川俊太郎質問箱』より、
谷川さんが答えておられたあることばがきっかけでした。

そのことばとは、重松清さんの質問の答えとして
谷川さんのおっしゃっていた、、

一昨日は武満徹が好きだった
ビートルズの「Here There And Everywhere」の
ピアノソロを、CDで聴いていて涙ぐみましたが、
それも泣き真似とは思えませんでした。

『谷川俊太郎質問箱』ほぼ日ブックス、138頁

‥‥という一節を見て、だったと存じます。

そのころのぼくは、たとえば、ビートルズの音楽を
アルバム作品で聴いていたとしても、
どのアルバムにどの曲が入っている、
みたいなことははあんまり認識していなくて、おそらく
『Here, There and Everywhere』の歌も、
谷川さんのこのことばを見て、
きちんと知ったとも思うのですが。
この曲の思い出で申しあげますと、あるときの夜、
悩み事をちょっと頭の中で考えすぎちゃって、
どうしようもなくなってしまったとき、もう
頭で考えるのはよそうと思いながら、ふと
『Here, There and Everywhere』を聴こうと思いついて、
その夜中じゅう、ずっと、ひたすら
イヤホンでこの曲だけをリピートして聴いていた。
すると、少しずつ、頭の中が
解き放たれてゆくかのようにして、
落ち着いてきたのを憶えている。
このとき以来、ぼくは、この曲を
好きだと思っているのよね。

 To lead a better life
 I need my love to be here♪

書籍『谷川俊太郎質問箱』の中で、ほかにも
ぼくが好きだった谷川さんの質問の答えはね、
「夏場は汗くさいような、
 異臭のようなものがあちこちで感じられます。(中略)
 人間は臭いという事実を谷川さんはどうお考えでしょうか。」
という読者からの質問に対して、谷川さんが、、

人間は臭いのではなく、匂うんです。
からだが健康ならその匂いは不快ではないはずです。
でも匂いには好みがあるからね、
ぼくは汗くさいのは平気だけど、口臭はだめ、
女の人の腋臭はちょっとエロティックだけど、
強い香水は興ざめ。(中略)
人間は臭い、汚らしいと感ずるのは、
人間として少々うさんくさいと思います。

同著73頁

‥‥と答えられていて。

この
【人間は臭いのではなく、匂うんです。】
ということばは、ぼくの中では
けっこう衝撃と申しあげますか。
このところを読みながら、なるほど、
人間は、くさいんではなくて、におうのかあ!
って思ったなあ。つまり、
「くさい」と「におう」とでは、
その意味合いがぜんぜんちがう。
どうちがうのかはうまく言えないけど、たとえば、
「におう」というのは、いわば、
人間の感性による感覚的なものなのか?!
みたいなことを学んだようにも存じました。

はたまた、べつの質問ではね、
「宇宙人って
 本当にいるんですか?」
という読者の質問に対して谷川さんは、、

いますよ。あなたもそのひとりです。

同著169頁

‥‥と答えておられたのも、
好きだったなあ〜。
そうか、おれも、宇宙人なのか!
って思ったもん!!!

日本人であり、
地球人であり、
宇宙人でもあるぼくは、
これから、どちらへ行こう?

 I will be there, and everywhere
 Here, there and everywhere♪

令和6年11月20日