音楽が寄り添いながら。(20220207からAquaへと。)
(以降、映画の内容のねたばれがあります。)
昨年公開の映画作品『怪物』を、ブルーレイで
あらためて観ました感想のようなことをね、
このごろのブログで申しあげました。
そして、このごろはさ、
映画の音楽を担われました坂本龍一さんの
『サウンドトラック「怪物」』も聴いております。
この『サウンドトラック「怪物」』では、
坂本さんの最新アルバム『12』より2曲、
既存の曲より3曲、また、
映画のための書き下ろし曲の2曲、という
合計7曲が収録されていて。
CDブックレット掲載の是枝裕和監督のことばとして、
ロケハンに向かう車の中で、映画の
テーマ曲はピアノかな、と思われ、
さらに、撮影場所が長野県諏訪に決まったとき、
坂本龍一さんだな、とのように思われたことが
記されているのですが、どの曲も
ピアノの音色が素敵なんだなあ。
そして、サウンドトラックを聴きながら
映画の各シーンが蘇ってくる。
ぼくのなかでとくに印象的な曲は、
映画の冒頭、火事の場面で流れる、
アルバム『12』の6曲目でも収録されている
『20220207』です。
アルバム『12』の音楽は、坂本さんが闘病生活の中で
日々のスケッチとして演奏なされているですが。
そのようなアルバムで収録されている
『20220207』という曲が、
この映画のこの場面で使われる、って、
すごいなあ、と思うと申しあげますか。
つまり、むしろ、
『20220207』とは、映画のこのシーンのための
音楽として作られたかのようにも思えるし。
もしくはさ、たとえば、ぼく自身が
この映画のこの場面に曲を合わせるとして、
アルバム『12』から選ぶとしても、この
『20220207』を選ぶことができるかどうか?!
でも、なんだか、この場面で
『20220207』を聴くと、
なんとも言えない不安感を想いながら、映画の
映像と音楽が親和しているように感じられます。
また、映画の後半にて、
湊と依里が秘密基地へと向かうときに流れる
『hibari』も素晴らしいんだなあー。
『hibari』は、ひばりのさえずりのようなメロディが
幾度も繰り返されるかのごとくの曲で、そして、
時折、ひばりが二羽いるかのように
そのメロディがずれてゆく。
この「ずれ」の感じがね、湊と依里のふたりが
戯れている雰囲気のようで、つまり、
ずれたり、かつ、合わさったり、みたいな。
いわば、湊と依里のふたりが
二羽のひばりのようだなあって存じます。
そして、また、『サウンドトラック「怪物」』の
最後の曲として収録される、
映画『怪物』でも最後のシーンで流れている
『Aqua』はやっぱり素敵だなあ。。。
坂本さんの生前最後のピアノソロコンサートで
『Aqua』を演奏なさった映像が、
YouTubeで公開されておりまして。
その演奏を観ると、なんだか
泣けてきてしまうんだけれども。
映画『怪物』の最後の場面にて、すべての物事が
解き放たれてゆくかのようにして、この
『Aqua』を聴くことができて、
その感じは、もう、なんとも言えないな。
さらにCDブックレットでは、撮影の中頃、
もし坂本龍一さんに依頼出来なければ、今回は
音楽は無しでいこうと思うようになっていた、
とのようにも是枝さんはおっしゃっているけれども。
映画『怪物』が素晴らしい、と思うのは、映画の
ストーリーや風景や登場人物のお姿などなど、だけでなく、
坂本さんの音楽が寄り添いながら、
聴こえてくるからこそ、なのやもしらないなあ。
なおかつ、ぼくとしては
映画『怪物』によって、さらに
坂本龍一さんの音楽が好きになってきたのよねー。
令和6年11月5日